第1話:最強戦士は、ソーダ味の夢を見る。――ピコルス、飯野町に立つ
初めまして、作者のマツシタPです。
今日の変身時間は、一体何秒なのか……?
そして、いつになったら「元の姿」に戻れるのか?
この物語は、宇宙最強の戦士とアイドルの卵たちが、地球を救うために理不尽な運命をハックし、「世界的アイドル」へと成り上がっていく、愛と不条理の記録です。
子育てが終わった55歳のド素人新人作家が、第2の人生のすべてを賭けて描く、命懸けの「本気のエンターテインメント」。
予測不能なタイムリミットを抱え、彼女たちは滅亡の淵にある地球を、どうやって救い抜くのか?
残りの全てを賭けた、最高の悪あがき。この『五次元の奇跡(V-PEACE)』を、全身で浴びてください!
「……あーあ。今日も地球、滅びないね」
福島県飯野町、千貫森。
古来よりUFOの目撃例が絶えず、山そのものが磁場を狂わせる巨大なアンテナだとも噂される場所。ピラミッドのように整いすぎた山の頂上で、私は小さくこぼした。
松下 葵夢、15歳。
日陰のベンチに「茹ですぎたうどん」のような脱力感でひっくり返り、網膜を焼きそうな夏の青空を睨みつける。進路希望調査票を三回連続で白紙提出し、担任から「お前の未来は透明人間なのか?」と呆れられた。蝉の声は、世界の終わりを急かすような狂ったボリュームで鳴り響いている。
こんなに「予感」のする山の上でさえ、空から円盤が降ってくる気配はない。私の日常は、今日もバグることなく、退屈なほど正常に動いている。
視線の先では、幼馴染の灯澄が、石造りの中途半端な方位盤の上でステップを刻んでいた。
灯澄:「ちょっと葵夢ちゃん! 白目剥いてないでちゃんと見て! 真央様の神ステップ、いくよっ!」
灯澄が「真央様」と崇めるのは、国民的アイドルの頂点、天音真央。
重度のアイドル教信者である灯澄にとって、真央様は単なる推しではない。この閉塞感漂う町という名の『牢獄』から自分を救い出し、いつか同じ光の中に立つための、唯一絶対の「信仰」そのものだ。
160cmの小柄な体で、B100という規格外の重力を揺らし、砂埃を舞い上げる。彼女は本気だ。本気でこの町を飛び出し、アイドルになると信じている。
(……あーあ。そんなに熱くなって、疲れないのかな)
私は結露したメロンソーダの缶を首筋に当て、冷たさに思考を委ねる。私には、彼女のような情熱はない。何をやっても平均以上にこなせてしまうけれど、その「才能」を使い道のないゴミのように放り出していた。
葵夢:「……見てるよ。すごい。もう宇宙人と交信できそうだよ、灯澄」
灯澄:「もう、葵夢ちゃんは適当なんだから! でもね、葵夢ちゃんは本当は誰より『持ってる』んだよ。去年のお祭りのステージ……飛び入りでやったギターの弾き語り。あの一瞬で、何百人の大人が静まり返ったあの空気。私は絶対に忘れないよ」
葵夢:「……ないない。私はただ、このまま空っぽでいたいだけ」
私の心はスカスカだった。けれど、その隙間に「銀河万年分の熱量」が流れ込もうとしているとは、露ほども思っていなかった。
その時、世界が物理的に「バグった」。
太陽が一瞬で消滅し、空に巨大なドス黒い渦が巻く。
ドォォォォォン!!!
避雷針を真っ赤な雷撃が貫き、その真下にいた私へ、すべてのエネルギーが吸い込まれた。
葵夢:「…………っ!!!」
心臓を強引に止められたような衝撃。だが直後、圧倒的な情報の濁流が脳を焼いた。数万年を戦い抜いた「最強戦士ピコルス」の自我が、黄金の光となって私を解凍していく。
気づいた時、土まみれで尻もちをついた私の前に、パステルグリーンの宇宙人が浮いていた。
ネビィ:「やっと見つけたぞ。目覚めの時だ、最強戦士ピコルスよ!」
驚きはなかった。全身の細胞が、沸騰するような熱を帯びてネビィを「戦友」として受け入れていた。私の脳裏に、この星での十五年の記憶を遥かに超える、数万年の戦場のクロニクルがフラッシュバックする。
ネビィ:「いいか、よく聞けピコルス。我が故郷『ピコるん星』は、邪悪なアストラル・ロードの侵略により、銀河の塵と化した。生き残ったのは、王子である私と、地球人に転生したお前だけだ……!」
(……地球を、ピコるん星の二の舞にはさせない)
焼け落ちる母星の慟哭が、私を完全に解き放つ。私の意志を無視して右手が跳ね上がった。黄金のデータが神経を焼き、一度も聞いたことのないはずの呪文が、私の唇から戦士の咆哮となって溢れ出す。
葵夢:「……ピコるん・リンクル!」
掌の上に、空間が歪むほどの光が収束する。そこに現れたのは、透明なブルーに輝く不定形生命体、リンクルだった。
ネビィ:「ピコルス! その『リンクル』を飲み込め! それが変身のトリガー、五次元の生きた燃料だ!」
葵夢:「はぁ!? これを、飲み込む!? 冗談でしょ、こんな見るからに不衛生なスライムを……」
リンクル:「ヒ、ヒィッ!? 待って、俺を食うのは経済的損失だぞ! これを見ろ、五次元消費者金融から届いた『差し押さえ予告通知書』だ! 二億ピコルの借金を、利息分すら一回も返してないんだ! 俺を飲み込んだら、その負債ごと君の胃袋に転送される契約になってるんだぞぉぉ!!」
葵夢:「うわっ、喋った……! 待ってネビィ、この子、吐く嘘のバリエーションが『救いようのない多重債務者』そのものだよ! 変身の燃料どころか、こんな不潔な自己破産予備軍、生理的に絶対無理! 胃もたれどころか人生がもたれるわよ!!」
私は、必死に指の間をヌルリとすり抜けようとするリンクルを、震える手で抑え込んだ。
ネビィ:「葵夢、何をもたついている! リンクルは三次元の空気に触れてから1分経つと、物理法則を逆ハックして『アボミネーション・リンクル(忌まわしき変異体)』へ強制進化してしまうんだぞ!」
パステルグリーンのピコるんが、裏返った声で絶叫した。
ネビィ:「進化すれば奴は巨大化し、光速で蠢く『生きた癌細胞』となり、逆に君を『ただの培養液』に変えて飲み込み、その血肉を『エサの塊』にしにくるぞ! 奴が最凶の忌まわしき姿になるまで、あと10秒だ! 飲み込め、早く!」
葵夢:「えっ、私の体がただのスープになっちゃうの!? 嫌だ、そんなの絶対お断り! なんで私の15年が、こんな『着色料をブチ撒けた鼻水』の成長記録の1ページに上書きされなきゃいけないのよ!!」
リンクル:「待て、暴力反対! 俺はただの無害な『五次元の絶滅危惧種』だよぉぉ! 俺を食ったら、お前の前歯が一生『しゃっくり』に連動してカタカタ鳴り続ける呪いだけじゃ済まないぞ! 俺の体内には『銀河連邦の隠し口座』のパスワードが埋め込まれてるんだ! 俺が消化された瞬間、全宇宙の資産データがバグってお前の前歯に『一生消えないQRコード』として浮き出てくるからな!! 後悔するぞぉぉ!!」
葵夢:「……うるっさい! 誰が信じるか、そんな大嘘!!」
リンクルは必死に嘘を吐き散らしながら、私の腕をヌルリとすり抜け、千貫森のベンチの裏へ、光る粘液を撒き散らしながら爆走し始めた。
葵夢:「待てコラ! 逃がすかぁぁ! 私の日常を返せぇぇ!!」
逃げ回る「青白く輝く絶望」の背中に、私は迷わず五次元の力を込めた右手を伸ばした。
葵夢:「死なば諸共! いただきますっ!!」
私はなりふり構わず、その光る粘液を浴びながら、涙目になってダイブした――。
リンクル:「やめろぉぉ! 覚えてろよピコルス、お前の胃袋で暴れまわって逆流してやるからなーっ!!」
断末魔を上げるリンクルを一気に口へ放り込む。
――グニリ。
喉を通る、激しく抵抗するような生命の拍動。そして直後、脳を突き刺す強烈な炭酸の刺激。
(葵夢:……んがぁぐぐぅっ! ……ん、んんっ。……ごちそうさまでした。……うぅ、意外と爽やかなソーダ味なのが、余計に殺意を削いで切ない……)
(ピコルス:……黙れ葵夢、これが『銀河を統べる戦士の食卓』だ。アボミネーションに逆捕食される前に食えた己の生存本能を褒めてやれ)
直後、私の身体を銀色のオーラが突き抜け、唇から自分のものではない「戦士の口上」が漏れ出す。
葵夢:「覚醒ピコルス!」
そのピースサインを合図に戦闘衣が編み上げられ、最強戦士が顕現する。ひんやりとした銀色の鎧が肌にフィットすると同時に、着ていた私服は五次元の彼方へ消滅した。私の日常が、物理的に切り離された瞬間だった。
だが、視界に浮かぶタイマーを見て、私は絶叫した。
葵夢:「……えっ!? たったの、30秒しかないよ!?」
ネビィ:「すまん! 変身時間は毎日ランダムなのだ! 通信限界だ、健闘を祈るッ! 消えるぞッ!」
葵夢:「あ、待ってネビィ! 消えたぁぁ!!」
横では灯澄ちゃんが、銀色に光り輝く私をポカンと見ていた。彼女には何も見えていない。
灯澄:「あ、葵夢ちゃん……? その格好、何……?」
葵夢:「灯澄、説明してる暇ない! 掴まって!!」
私は灯澄を抱き寄せ、地面を蹴った。一歩で十メートル以上を跳ぶ。私は誓いを胸に、ランダムに決まった30秒のリミットに追われながら、山道を弾丸のように駆け降りていった。
だが、私はまだ知らなかった。
30秒という短い「神の時」が過ぎ去った後に訪れる、あまりにもシュールで、あまりにも残酷な「因果の隙間」を。
(第2話へ続く)
第1話を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
改めまして、作者のマツシタPです。
実は私、55歳の「オヤジ」でございます。
子育ても一段落し、家族の許可を得て、これまで封印してきた「アニメオタク」の魂をすべてこの一作に解放しました。
「自分の趣味趣向をすべて詰め込んだ、最高に自画自賛できる神キャラを、この世に刻みつけたい」
その熱い衝動だけで、この『V-PEACE』を企画しました。
さらに、この物語は小説の中だけでは終わりません。ストーリーの進行に合わせて、実際にVTuberとしてのデビューや、MVの公開もリアルタイムで行っていく予定です!
もし少しでも「面白い」「応援したい」と感じていただけましたら、下の**【ブックマーク追加】や【ポイント評価(☆☆☆☆☆)】をいただけると、老体に鞭を打つ大きな励みになります。
次回、第2話は**【4月8日(水)19:00】に投稿予定です!
(以降は、毎週水曜日・日曜日の19:00に更新していきます)
皆様と一緒に、この『人生最高の自画自賛』を創り上げられることを願っております。
どうか、よろしくお願いいたします!




