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転生ゲーマーは無限レベルアップで成り上がる!  作者: おさない
第四章 目指せ無限レベルアップ
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第84話 心!


「お主……名はなんという?」


 突如として道場から姿を現した老人は、ルッタの姿を見つめながら問いかける。


「ルッタです!」


「良い返事じゃ」


 元気よく答えて褒められるルッタ。


「この道場への入門希望者かな? わしに拳法を教わるためにこんな辺境の地までやって来るとは……幼いながら素晴らしい心がけじゃ」


「いいえ、違います! 入門希望ではありません!」


「…………」


 きっぱりと否定したことで、辺りは何とも言えない沈黙に包まれる。


「師匠が押されてるなんて……手強い相手ネ……!」


 二人の問答を横でじっと眺めていたシャオメイは、思わずそう呟いた。


「……では何をしにここへ?」


 老人――改め真元流しんがんりゅう師範は、気を取り直して質問を続ける。


「ムゲン水を入手しに来ました! すぐに取って帰るつもりだったので、こんなイベントが発生するなんて想定していません!」


 やや落ち着きなく答えるルッタ。どうやら会話に飽き始めているらしい。


(思ったよりお話が長い上に……今回は僕まで話すことを強いられています……!)


 かつて王国の式典で長話をした学長に次ぐ難敵であった。


「ほう、霧玄水が目的か。……どこでそれの存在を知ったのじゃ?」


「前世の記憶です!」


「なかなか面白いことを言う子供じゃな。前世とは――」


「前世とは前世です!」


 ルッタは師範の言葉を遮って答える。


「とにかく、僕はもっともっとレベルアップしなければいけないのです!」


「はて。レベルアップとはなんじゃ?」


「ぐっ……!」


 我慢の限界は近い。


「……強くなることです!」


「では、なぜお主は強さを求める?」


「死んでしまうからです!」


「ほう、死ぬというのは――」


「色々と事情があるのですっ!」


 質問されすぎて普段よりも投げやり気味なルッタ。今の彼は、適当にボタンを連打して選択肢を答えている状態に近かった。


「……なるほど。込み入った事情があるわけじゃな」


 そのことを感じ取ったのか、師範は質問をやめて話を切り上げる。


「アニキみたいなやつネ……。男の子ってみんなそうなのカ?」


 シャオメイはぼそりと呟いた。


「とにかくムゲン水をゲットさせてください!」


「……分かった、お主の望みを叶えてやろう」


「本当ですか?!」


「――ただし」


 師範は、射抜くような目でルッタを見つめながら言った。


「その資格があるのかを試させてもらうぞ。わしについてくるのじゃ」


 そうして、いよいよ道場の扉が開かれるのであった。


 *


 原作とは違い、手入れの行き届いた朽ち果てていない道場へと足を踏み入れたルッタは、師範と一対一で向かい合っていた。


「さて、まずはワシと手合わせしてみよ」


 師範は流れるような動作で構えをとり、ルッタに向かって言う。


「何となく予想はしていましたが……やはりこうなってしまうのですね……!」


 それに対抗して、ルッタも戦闘態勢に入るのだった。


(ルッタのあの構え……見たことない流派ネ……! 何してくるカ……?)


 生つばを飲み込むシャオメイ。ちなみに、ルッタの構えは彼が今考えた適当なものである。


「先手は譲ろう。好きに打ってきて良いぞ」


 師範にそう言われたルッタは、びくりと硬直した。


「……あの、本当によいのですか?」


 彼の脳裏に、今は亡き(?)お父さまやザムル教官の姿がよぎったからである。


「構わん」


「その……でも僕、前に二回も同じようなことがあって……二人とも経験値に……」


「遠慮せず、全力でかかって来るのじゃ」


 刹那、老人は力を高め始める。


「ふんッ!」


 道場全体が揺れ、周囲に魔力とは違うエネルギーが満ち始めた。


(こ、これは……!)


 ユウレンやヒサギリのキャラクターの中には、魔力ではなく気と呼ばれる力を操る者が多く存在するのだ。


(確かに物凄い気迫です……! 僕も全力を出さなければ……いけないかもしれません……!)


 師範の実力を感じ取ったルッタは、覚悟を決めて一歩踏み出す。


(物怖じしないルッタもすごいけど……やっぱり、師匠には敵わないネ……!)


 あまりの緊張感に、見ているだけのシャオメイの頬を汗が伝った。


「うおーーーーーーーーーーーーっ!」


 次の瞬間、ルッタは叫びながら拳を振り上げて師範へと向かっていく。


「来いッ!」


 そして次の瞬間。


 ――バゴーンッ!

 

 けたたましい轟音が鳴り響き、一撃を受け止めた師範の体が美しく弧を描く。


「ごふッ!」


「ええええええええええええっ!?」


 あまりにも予想外の結果に、目をまん丸と見開いて驚くシャオメイ。


 師範はそのまま、道場の壁を突き破ってどこかへと吹き飛んでいった。


「し、ししょーーーーっ!」


 シャオメイの悲痛な叫び声が響き渡る。


「わーーーーーーーっ!?」


 またまたやってしまったルッタも叫ぶ。


 ――それから少しして、再び道場の扉が開け放たれた。


 残された二人が一斉にそちらへ目を向けると、吹き飛ばされたはずの師範がボロボロの姿で立っている。


「ししょーっ!」


 慌てるシャオメイを片手で制し、何事もなかったかのように元の位置へと戻ってくる師範。


「お主、名は何と言ったかのう」


「ルッタです!」


「ルッタよ。強さとは何だと思う?」


「敵を倒す力のことです!」


「もちろんそれもある。……じゃが、考えなしに力を振るう者は真に強い人間ではない。何故だか分かるか?」


「分かりません!」


「――心」


「はい?」


「……心が弱いからじゃ。己の内にある臆病さや恐怖心から目を逸らすために力を求める……これは邪の道に通じておる。……弱い心を覆い隠すために振るわれる力は、やがて罪なき人々を傷つけることになろう」


「なるほど?」


 師範はゆっくりとルッタに近づいていき、彼の肩をぽんと叩く。


「ルッタ。確かにお主には力がある。……じゃが、まだ心が伴っておらん。わしの元で修行し、心身共に鍛えた立派な武闘家を目指すのじゃ」


「僕はムゲン水が欲しいだけなのですが?!」


「それはまだいかん!」


「そんな……っ!」


 不合格を言い渡されたルッタは膝から崩れ落ち、両手をついて落胆する。


「師匠……それ、負け惜しみじゃないカ?」


「静かにしていなさい。シャオメイ」


「いや、でも……今のは師匠の負け――」


「シャオメイ」


 ――かくして、ルッタはムゲン水を手に入れるため、真元流しんがんりゅうの門下生となったのだった。

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