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転生ゲーマーは無限レベルアップで成り上がる!  作者: おさない
第三章 王都の破壊者ルッタ
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第61話 暗躍する邪教徒たち!


「戻って来ました!」


 ルッタはセレーヌを連れて、王都リーズフェリアの中央広場へと転移していた。


 正面には式典で訪れた立派な王宮がそびえ立ち、王家の威光を示している。


「ぐすっ……帰りを待っている子供たちのためにも……もっともっとぉ……教えを広めなければいけませんねぇ……っ!」


 約一年ぶりに襲撃を行った犯行現場へと戻って来たセレーヌは、感極まった様子で目元を押さえていた。


 彼女はヒサギリで迷える子供たちを洗脳――もとい教え導き、これまで家族として暮らしてきたが、しばらくこちらに滞在するため一時的に涙のお別れをしてきたのだ。


 幸か不幸か、彼女はかつて王宮を襲撃したノクト教団の実行部隊の中で唯一顔が割れていない。衛兵に捕まる心配をすることなく、堂々と活動できてしまうのである。正義は敗北したのだ。


「では、僕は一度騎士団の訓練場に戻りますね! 置いてきた分身がまた脱走しているかもしれないので!」


 ルッタは平然とそんなことを口にする。王宮の前ににこんな危険人物を放置したまま、家族の元へ帰るつもりらしい。


「分かりましたぁ……。ノクト教団を経験値にする準備ができたらぁ……ルッタ様にお伝えすればよろしいのですよねぇ……?」


「はい!」


 ルッタは元気よく返事をしたが、その後少し考えてから続けた。


「……でも、もし騎士団の人たちの――せんめつさくせんっ! ……が始まってしまいそうになったら、僕は一人で教団本部に忍び込みます。ノクト教団と王国騎士団を同時に相手にするルートは、僕たちの方が経験値になってしまいますからね! レベル上げの基本は各個撃破、そして先手必勝なのです!」


「ルッタ様のお言葉……しっかりと心に刻みましたぁ……! その時は私、どこまでも共に参りますぅ……!」


 セレーヌは胸に両手を当てながら、恍惚とした表情で頷く。


 ルッタは「よろしくお願いします!」と笑顔で返すと、彼女に別れを告げて雑踏の中に消えてしまうのだった。


「いーえっくすぴー……!」


 セレーヌはその後ろ姿に祈りを捧げ、反対方向へと歩き始める。


「いーえっくすぴー」「経験値」「いーえっくすぴー」「どろっぷあいてむ」「経験値」


 すると、王国内に潜む信徒たちが彼女の言葉に呼応して歩み寄って来た。全員、年齢も性別もまるで違うが、瞳には狂気的な光が宿っている。


「――きましょう。神は戦いの時であるとおっしゃいました……」


「おお……!」


 王都に暮らす民を教え導くための戦いが始まったのだ。


 *


 まずセレーヌが目を付けたのは、大通りから少し外れたそれなりに人通りのある路地裏であった。


 中央広場で布教をするには、まだ王都内に信者の数が足りていない。目立ちすぎれば近衛騎士団特務隊の者たちに目を付けられ、弾圧される恐れがある。


 まずは水面下で信者を増やしていき、少しずつゲーム・ピコピコの輪を広げていくことが肝要であった。


 セレーヌは信徒に用意してもらった小さな台の上に立ち、深く息を吸い込む。


「みなさんっ!」


 そして、まばらな通行人たちに向かって響き渡る綺麗な声で呼びかけるのだった。


「この世界は……ゲームですっ!」


 あまりにも唐突な宣言に一瞬だけ沈黙が訪れ、その後ざわめきが広がっていく。


 通行人の大半は、関わってはいけない人間を見るような目でセレーヌのことを一瞥し、足早に前を通り過ぎていった。


「あなたは今、思いましたね……? ゲームとは何なのか、一体どういう意味なのかと……!」


 セレーヌはわずかに残った野次馬の観衆たちに視線を巡らせ、大きく両手を広げる。


「ゲームとは、神々の英知……! この世界は、全て神の筋書き通りに動いているのですっ!」


 彼女はそう断言した後、さらに続ける。


「皆様は……不思議に思ったことがありませんか……? なぜ……冒険者や騎士はあんなにも強いのか……なぜ、人は生まれながらにして平等ではないのかとっ!」


 セレーヌの言葉に、さらに数人が足を止める。


 中には頷いている者もいたが、これは彼女が予め通行人の中に仕込んでおいたゲーム・ピコピコ教の信者――場の雰囲気を操作するための、偽の聴衆であった。


「それはこの世界に……レベルとステータス――そして経験値が存在しているからなのですぅっ!」


 彼女の声が、次第に熱を帯びていく。


「経験値とは……いわば大気を循環する魔力のようなもの! 人は魔物を倒すことで経験値を取り込み……レベルアップすることで強くなるっ! 成長する者は、この仕組みを自然と感じ取っているのですっ!」


 ――いつの間にか、彼女の話に興味を持つ通行人が増えていた。


「経験値の存在を認識し、正しい知識の元にレベル上げを行えば……あなた方も同じ領域へと至ることができるっ! それこそが、神の定めた摂理――この世界の真実なのですぅっ!」


 セレーヌが両手を大きく広げて合図をすると、聴衆の中に紛れ込んでいたゲーム・ピコピコ教の信者たちが一斉に声を上げる。


「経験値! 経験値! 経験値!」


 辺りは謎の熱気に包まれていた。


 そんな中、フードを被った聴衆の一人が恨めしそうに呟く。


「……セレーヌめ……ノクト教団を裏切り、このような意味の分からない妄言を広めるとは……ッ!」


 ――ノクト教団とゲーム・ピコピコ教の本格的な信者獲得合戦が、ついに王都の地で幕を開けてしまったのである。

 

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