↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/52

第七話 夜明け

なんとッ、昨夜の内に二つの感想と、更なる☆5評価を頂きました!!

感想と評価を付けて下さった方、誠にありがとうございます。


そしてお礼に本日から日曜日まで連続投稿致しますので 楽しんで頂けると嬉しいです!!

「ア″………………………………ァ″……………ッ″………」


 一度は受《う》け止《と》めたかに思えた斬撃《ざんげき》。しかしそれでも敵が折れず力《ちから》を注《そそ》ぎ込《こ》まれ続けた事により骨に入っていたヒビが連結《れんけつ》、額《ひたい》へ出現した巨大な亀裂《きれつ》は雷峰《らいほう》の意識を奪い去った。

 地《ち》に伏《ふ》すとより一層巨大(きょだい)になって見える身体が、ピクピクと痙攣《けいれん》している。口が発する生理的な呻《うめ》き声《ごえ》が地面に薄く広がる血溜《ちだ》まりに波紋《はもん》を立てていた。


 そして、 そんな変わり果てた強敵《きょうてき》の姿を、 雅《みやび》はまだ体液が滴っている刀《かたな》を握《にぎ》り 肩《かた》で息《いき》をしながら見下ろす。



「……はぁッ……はぁッ……はぁッ……………………

……………ウゥオ″オ″オ″オ″オ″オ″オ″″!!!! ワシのッ勝ちじゃあああああああ″あ″″あ″″″!!!!!!!!!!!」



 相手が最も自信《じしん》を持っている要素《ようそ》を真正面から叩《たた》き折《お》る。

 己の武が敵の武を突《つ》き穿《うが》った完膚無きまでの勝利《しょうり》に、 それまでの苦戦《くせん》も相まって、 雅は極限のカタルシスに背《せ》を反《そ》らし天仰いで雄叫《おたけ》びを轟《とどろ》かせた。


 彼はこの夜を最後《さいご》まで生き残り、遂に今月下《こんげっか》ただ一人立つ勝者《しょうしゃ》となったのだ。


ヨロッ

「う、ぉ……ッ」


 腹の底から声を発した反動《はんどう》により、細胞《さいぼう》一つ一つまで絞《しぼ》り尽《つ》くしてしまった身体が揺《ゆ》らぐ。雅は再び杖《つえ》のように刀を突いて 何とか転倒《てんとう》を免《まぬが》れた。

 そうして中々整《ととの》わぬ呼吸《こきゅう》に肩を上下させながら彼が見上げた空《そら》には、もう月が落ち、東《ひがし》の空《そら》より徐々に紫《むらさき》が広がってきていたのである。


 いつの間にか、夜明《よあ》けがもう直ぐそこにまで迫っていた。


 その明朝と深夜の境界線《きょうかいせん》で吸い込んだ空気《くうき》は彼以外の息遣《いきづか》いが消《き》え、とても冷たく澄んでいる。

 身体に纏っていた命を燃やす熱気《ねっき》は自然と肌から剥《は》がれてゆき、その体温低下と心情変化がより周囲《しゅうい》の光景を寒々(さむざむ)しく感じさせた。



 冷気《れいき》を吸い込み、とても疲労など取れる訳はないが一先《ひとまず》ず再び動《うご》ける様に成った雅は、地面に突《つ》き立《た》て杖代わりとしていた刀《かたな》を抜《ぬ》く。


「はッ…………はッ…………ッ………………………」


 紺色《こんいろ》の闇《やみ》を静かに裂いて、白銀《はくぎん》の煌めきは頭上へと振《ふ》り上《あ》げられる。


 匂《にお》いが、未だしていないのだ。

 人《ひと》を幾人か殺《ころ》すと自然のうちに鼻が覚える死《し》の匂《にお》い。それがまだ目前に転がる大男《おおおとこ》からしていない、雷峰《らいほう》はまだ死《し》んでいないのである。


 パッカリと割《わ》れて今も血溜まりを広げ続けている額《ひたい》の傷《きず》、それは普通であれば致命傷《ちめいしょう》に違いない。


 だがしかし此処は無間《むげん》地獄《じごく》、普通の通じぬ場所。獄門衆《ごくもんしゅう》は唯でさえ身体が頑強《がんきょう》に作《つく》られており、後《のち》の行《おこな》いによっては首《くび》を落とされるか心臓《しんぞう》を抉られぬ限り死《し》なない肉体《にくたい》を作り上げている者もいる。

 更に、因果《いんが》の法《ほう》さえ捻じ曲げる業《ごう》の力まで考えると、念《ねん》は入《い》れて入《い》れ過《す》ぎるという事はない。


 ここで敵の首《くび》を切断《せつだん》し胴体から離れた所へ転がす、そうして初めて勝利《しょうり》が確定《かくてい》するのだ。


「…………………すぅぅぅぅ」


 まるで体重《たいじゅう》が十倍《じゅうばい》に成ったかの如く感じる重《おも》い身体《からだ》をなんとか動かし、雅《みやび》は深く息を吸い込んで柄《え》を握《にぎ》り込む。

 そうして強敵《きょうてき》の首《くび》へと照準合わせ、一息に刀《かたな》を振《ふ》り下《お》ろした。






「待ってェ!!」 

      ドンッ


 しかし、刃《やいば》が雷峰の首へと落《お》ちる寸前《すんぜん》、突如甲高い声《こえ》が響《ひび》きなにか小さな物体が横方向から突《つ》っ込《こ》んできたのだ。


「グ″ゥ″…ッ!?!?」


 当然 雅はその声《こえ》を一切気(き)に留《と》めず敵の首を斬り落とさんとする。だが突進《とっしん》の衝撃は否応なくアドレナリン切れた身体中の傷《きず》に響《ひび》き、体内を掻きむしられるが如き激痛《げきつう》が発生《はっせい》。

 それによって蹌踉《よろ》めいた雅は慌てて再び刀《かたな》を地面に突《つ》き、攻撃が中断《ちゅうだん》させられたのであった。



「……ッ 誰じゃあ″あ″!!!! ワシの邪魔をするとは良い度胸《どきょう》じゃのう、殺されたいかッ!!」


「千賀丸だよッ!!!! 旦那もうそのぐらいで勘弁《かんべん》してくれ。なにも命まで取る事はねえだろ、直ぐに手当《てあて》しねえとッ!!」



 雅《みやび》は激痛とトドメを邪魔された事に対して顔《かお》を顰《しか》めながら怒声《どせい》を上《あ》げる。それに対し 下半身に抱《だ》き付《つ》いてきた小《ちい》さな影《かげ》が名乗《なの》った事で、彼は自分達の近くに千賀丸《せんがまる》という少年が居たことを思《おも》い出《だ》した。


 しかし、 それが如何《どう》したと言わんばかりに、 雅は鬼《おに》の形相《ぎょうそう》で少年を足から引《ひ》き剥《は》がそうとする。


「退《ど》け小僧″ッ これはガキの戦いごっことは訳が違うんじゃ。互いに命を賭けて正々堂々(せいせいどうどう)と戦《たたか》った、その結果敵を殺して何が悪い!」


「そうかも知れねえけど…オイラにとっては悪いんだよッ!! そこで白目剥いてる力士にオイラ助《たす》けられたんだッ、見殺《みごろ》しになんか出来ねえ!!」


「お前が誰に助けられていようとワシの知《し》った事《こと》ではないわッ! 良いから退け、こいつはワシの首じゃ。この地獄に情《なさ》けも哀《あわ》れも有りはせん!!」


「 で、でもッ!! 旦那が気絶《きぜつ》した時に雷峰はちょっと待《ま》ってくれたぞ。あの時 雷峰が直《す》ぐに首を踏《ふ》み潰《つぶ》してたら、旦那だって今頃死(し)んでるんだからな!」


「……知るかァ″ァ″ッ!! それは殺せる時にワシを殺さなかったこの男の落《お》ち度《ど》じゃ。獄門衆《ごくもんしゅう》風情が善人《ぜんにん》ぶるからこう成る、良い気味じゃなッ。 精々蘇ってから後悔するが良い、ワシが死をもって教訓《きょうくん》を与えてやるわ!」


「駄目だ!! コイツは此処じゃ珍しい良《い》い奴《やつ》だ、絶対に殺させねえ!!」


「黙″ れ″ !! 退けと言っているだろうがガキィ!!!!!!」


 千賀丸の説得《せっとく》も虚《むな》しく、雅は断じて見逃《みのが》す気《き》はないと態度で示す。少年の頭《あたま》を鷲掴みに引《ひ》っ張《ぱ》り、足から強引に剥がして前方《ぜんぽう》へと突《つ》き飛《と》ばしたのだ。

 

 がしかし、 すると今度は雷峰《らいほう》の身体の前《まえ》へと千賀丸は両手を横にして立《た》ち塞《ふさ》がり、真っ直ぐに雅を睨《にら》み付《つ》けてきたのである。


「 絶対に、雷峰は殺させねえ!!」


「……そこまでその男の命が惜しいか。ならばもう良い、先ずはお前《まえ》からッ その甘さごと斬《き》り捨《す》ててやるわ 」

 

 以前《いぜん》の助けてくれと自分に縋《すが》ってきていた小僧《こぞう》からは想像《そうぞう》できない千賀丸の姿に、雅はなにか動《うご》かし難《がた》い物《もの》を感じた。

 そこで彼は刀を振り上げて、最終宣告《さいしゅうせんこく》を送ったのである。


「……………うぅッ 」


 だが、少年は動《うご》かない。

 その目《め》はきつく結《むす》ばれていて、足《あし》はビクビクと震《ふる》えているので間違いなく恐怖《きょうふ》は感じている筈。にも関わらず、動《うご》かない。


 どうやらこのガキは余程死(し)にたいらしい。

 もう幾度となく警告《けいこく》してやって、退《ど》けと言《い》ってやって、それでも尚動(うご)かぬのだ。此処までした上で斬《き》り捨《す》てたのならば、流石に自らの名誉《めいよ》に傷《きず》が付《つ》く事はないであろう。


(ワシの道《みち》を遮《さえぎ》る者は、皆悉く殺《ころ》して前へと進むッ)


 雅《みやび》は 再びその面を人殺《ひとごろ》しの顔《かお》へと変える。

 そして、少年《しょうねん》の身体を一刀両断《いっとうりょうだん》にせんと、 刀を振《ふ》り下《お》ろしたのであった。



      ッズ′′ ウォオ″オ″ン″″!!!!!!!!!!!



彼は、それが出来《でき》るから強いのだ。


 必要《ひつよう》の前には凡ゆる感情《かんじょう》を閉《と》ざして行動できる。相手にどんな事情《じじょう》が有るのかなど考えない、その後《うし》ろにどんな人間《にんげん》が居るのかも気にしない、倫理《りんり》道徳《どうとく》の鎖《くさり》が一切手足に付いていない。

 純粋な戦闘《せんとう》のための機械《きかい》。だから雅の踏《ふ》み込《こ》みは、人間達の一歩《いっぽ》先《さき》を行けるのである。


 そしてそんな人《ひと》の形《かたち》をした剣《つるぎ》が、今更子供(こども)一人を斬り殺すことに対して躊躇《ちゅうちょ》などする筈が無《な》かったのだ。




「…………………………………ッ″″」


 無かった 筈だった。

 がしかし何故か、振り下ろした刀《かたな》が千賀丸《せんがまる》の身体を捉える寸前《すんぜん》で、 ピタリと動《うご》かなく成《な》ってしまったのである。


「 チッ!!」

    ドガァ″!!


                「うわあッ!!」


 信《しん》じられない自《みずか》らの行動《こうどう》を前にした雅は、まるで刃物で胸《むね》を突《つ》かれたかの如く顔を皺《しわ》で埋め 舌《した》を打《う》った。

 そして刀の代わりに足《あし》を振り上げ、千賀丸《せんがまる》の横腹《よのばら》を蹴って自らの前《まえ》から退《ど》かせる。


 そして再《ふたた》び間に少年が割り込んでくる前に素早《すばやく》く今度こそ刀《かたな》を上段に構《かま》え、雷峰の首《くび》目掛けて刃《やいば》を落《お》としたのであった。











ッ キ″″イ″ィィン!!!!!!



 だが、 其処で更《さら》なる邪魔《じゃま》が入る。

 振り下ろされた刃《やいば》が雅に伝《つた》えてきた物。それは人体《じんたい》を斬り裂く手応《てごたえ》えではなく、固い金属《きんぞく》同士《どうし》がぶつかり合った衝撃《しょうげき》。


「………………誰だ、 てめえッ″」

                「…………」


 そして、其処から雅《みやび》が目《め》にしたのは、正しく化《ば》かされているかの如き光景《こうけい》だったのである。


 いつの間にか、狙《ねら》いを定《さだ》めていた筈の大男《おおおとこ》が影も残さず視界《しかい》から消《き》えていた。

その代《か》わりに、 何処から現れたのかも知れぬ狐面《きつねめん》を付けた細身《ほそみ》の人影《ひとかげ》が、 横に構えた薙刀《なぎなた》で彼の斬撃を受《う》け止《と》めていたのである。




 灰河町バトルロワイヤルは、まだ終わらない。




お読み頂き有難うございます。


もし楽しんで頂けましたら、『ブックマーク』と『評価』等々を宜しくお願いします。そしてそれらを一つでも頂けましたら、明日も新しいエピソードを追加させて頂こうと思います。


何卒応援のほど、宜しくお願い申し上げます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。