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第六話 地獄大横綱 雷峰⑥

☆5評価を頂けたので、本日も連続投稿です!!

評価をして下さった方、誠に有難う御座いました。


そして!!

更にブックマークも本日付きましたので、明日も連続投稿です!!!!

ブックマークを付けて下さった方、誠に有難う御座いました。


タッ……タッ……………タタッ…タン…………………


 転倒しないようにまえへとすすむだけで精一杯せいいっぱい、 それが雷峰らいほうからた敵の動きに対する印象いんしょうであった。


 みやびはやはりかなりのダメージが身体にのこっているらしい。その足並あしなみみは乱れて覚束おぼつかなく、宛らぱらいの千鳥足ちどりあしが如くだ。

 依然のうごきのキレ、それはもう何処にも見当みあたらない。


…………・・・・  ・   ・    ・    



 これならばけるでもないな。

 そう、雷峰が見切りを付けた、その瞬間しゅんかんであった



     ・    ・   ・  ・・・・………………………………………ッズ″ ウォ″ン″″!!!!!!!!!!

 雅が急加速きゅうかそくしたのは。



「…ッ″!?」

    ガ″ギ″ィ″ン″″ッ!!!!!!


 突如 剣士けんしの輪郭が残像ざんぞうける。それに雷峰は紙一重で防御ぼうぎょ追い付き、くびまえへと構えられた右腕うわんの尺骨 振るわれた白刃はくじん その間で閃光せんこうはじった。


 もうけのしかばね同然、そう思っていた男が見せてきた想定外そうていがい加速かそく。それに対し雷峰らいほうかおへ又しても驚愕きょうがくが浮ぶ。

 そしてそんな敵の表情ひょうじょうを眺めたみやびは、血塗れな顔に浮かぶ狂笑きょうえ その口元くちもとをより一層()げたのであった。


ミシッ…ッパキ、ゴッ

(ハハハッ、痛いのう。身の裂ける音がしよるわい!!)


 みやびは自分の体内でほね臓器ぞうきか分からぬ何かがこわれるおとを聞いた。

 当然、彼も無傷むきずである筈がい。寧ろ今この瞬間何故(なぜ)てているのかすらからない程の重傷じゅうしょうを負っているのだ。


…………・・・・  ・   ・    ・ 


 しかしそれでもみやびが動けているのは、この男が偶々そのうごかぬ身体からだを強引にうごかすすべを持っていたが為である。


 この戦いで用いるあらゆる動作どうさ、それを彼は業『天地てんち孤独こどく』によってつくっていたのだ。

 そしてその作られた未来みらいに従って 自動的じどうてきに肉体はこわれた部位ぶいを別のまだ使つかえる部位ぶいに負担強いることでおぎない、パッチワーク状に命令めいれいを現実へとえがしてしてゆく。


    ・    ・   ・  ・・・・…………………ッガ″ギン!! ギィ″ン″ッ!!!!


 そうして作られたみやびうごきは、宛ら糸吊いとつ人形にんぎょうのごとくいびつ奇妙きみょう


…………・・・・  ・   ・    ・ 


 算えていたらキリがない程数無数(かずむすう)の箇所筋肉(きんにく)断裂だんれつほねれている為、重心じゅうしん安定あんていしない。

 故に身体はまるでたおれる寸前すんぜんこまの様にフラフラ ユラユラと、しかし激流げきりゅううねりがごとく凄まじい勢いで剣舞けんぶう。


    ・    ・   ・  ・・・・…………………ザンッ! ズウォンッ、ズワァ″!! キン! ガッ、ズバァン!! ガギン″!! ガアァン″″ッ!!!!!!



 あしめれば一気にガタがると分かった。だから雅はもういっそ敵をころすまでうごきはめぬと、強引ごういんにでも攻撃へ攻撃をつなつづける。

 ながれにさかららわず、 得物をぎょする事を辞めからだ全体ぜんたい大円たいえんえがき、 宛らかたな自体が意思いしを持ってぬしあやつっているかの如くてきへとかってゆく。


 そしてそのえかけの灯火ともしびが放つ最後の赫焉かくえんが如き連撃れんげき、それが徐々に雷峰をけへとまわらせはじめたのだ。



…………・・・・  ・   ・    ・ 


 この瞬間、戦いの主導権しゅどうけんにぎっていたのは間違いなくみやびの方。だがしかし同時どうじに、刻一刻()められていっているのも、間違いなくみやびの方であった。


  ごう連続れんぞく使用しようはリスクを伴う。精神せいしんに流れるときめるその度 のう沸騰ふっとうする様に成り、破裂はれつする様に成り、つぶれる様に成る。

 更にけを負担ふたんおぎなっている為 身体のこわれていなかった部分ぶぶんも次々こわれ、こわれている部分ぶぶんは益々こわれてゆく。



 そしてまた、雅が無茶むちゃをしているという事は 相対あいたいする雷峰らいほうの側にもつたわってきていた。

 自分がくださずとも敵は今に自重じじゅうつぶれる。彼はそう達観たっかんして、心に一瞬生まれた動揺どうようぬぐろうとした。


    ・    ・   ・  ・・・・……………………………………ガギィン″ッ!!!!  ズドォッ!  ガッ、ガン!  ズウォンッ!! ダッ! キン″ッ!!ギイン!! ガッギィ″ン″! キン″ッ ギイン! ガン″ッ ズワァン!! ギイィ″ィ″ン″″ッ!!!!!!!!


「 ッ″!?!?」





 だが、そのつぶれる寸前すんぜんである筈のてきは、此処で減速げんそくするどころか何とギアを一段いちだんげてきたのである。


 口からきつつ刀を振るう。あたまかららし前に出る。まぶたしたへと転がってゆくひとみろし笑みを浮かべる。

 ゴリリッゴリリッといのちけずれるおとを聞きつつ、それでも雅はたたかいをめない。


( こいつッ…まさかこの状況をたのしんでやがるのか!!)


 奇人きじん狂人きょうじんには事欠ことかかぬ無間地獄。しかしその中で一つけた狂気きょうきと今自分はかいっている、そう漸く気が付いた雷峰らいほう最早もはや驚愕など飛び越えつよ恐怖きょうふおぼえた。

 依然肉体(にくたい)はほぼ無傷むきず体力たいりょく消耗しょうもう軽微けいび敗北はいぼくなどないという状況のおとこ。それが一瞬先で事切こときれたとしてもおかしく無い半死人はんしにん背筋せすじこおったのである。



 そして、 敵が刀を大上段だいじょうだんかまえたのを見て、 雷峰は思わずあたまを両腕でまもった。

 その刹那せつな、雅の瞳に殺気さっきが爆ぜる。



…………………………………………・・・・・・・・・・・・・ ・   ・    ・       ・


・       ・     ・   ・ ・・・・・・・・・・・・・・・…………………………………………………………ッスパン!!!!




 敵が防御ぼうぎょしたのをみとめ、雅は後出しでときめた。

そして其処から雷峰の両腕りょうわんくぐるが如くやいばを横にたおし、とても万全とは呼べぬりときで たおむように腹部へと一太刀ひとたち叩き込んだ。

 

 その攻撃は、序盤じょばんで彼が見せた上段斬じょうだんぎりや首へのはらい比べればお粗末そまつと言う他ない。

 しかもそれら万全ばんぜん一撃いちげきでさえ 雷峰が誇るはがね肉体にくたいには致命傷ちめいしょうあたえられなかったのだ。


 当然、そんなの斬撃ではこの戦いの中でなんら意味など



…………………………………ブ″″ ッ シュウ″ウ″ウ″″ウ″″ウ″″ウ″″″ウ″″″″″!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!





 みやびの碌にちからこもっていない斬撃ざんげき。それがとおぎていった後ろに突如として戦場せんじょうあらわれた沈黙ちんもく

 そしてその沈黙を破り、刃がでていった雷峰の右脇腹みぎわぎばらから左脇腹ひだりわきばらまでの一直線が、 真っ赤なを宙にしたのである。


 しかもそのりょう尋常じんじょうではない。

 まるで水風船みずふうせんあないたかの如き有様ありさまで、瞬く間に雷峰の足元あしもと一帯いったいへと血溜まりがひろがってゆく。


「ガア″…ッ!! ハッ、アァ…ッ!?」

               ドサッ


 その余りないきおいと腹中に感じたゾクリッという気配けはいに、雷峰は溜まらず傷口きずぐちを手でおおひざいた。

 と同時 うごきをめたみやびもまた膝が折れ、刀が行う円運動えんうんどうられる様にして転倒てんとうする。



 そうして殆どおなじタイミングでうごきをめた両者。だがしかしその顔がたたえる表情ひょうじょうには、二人の間に存在する 隔絶かくぜつした が露見していたのであった。


「ハハッ、精々必死に傷口を押さえておれ。内臓ないぞうにッ…達した手応てごたえがあった、気を抜けば死ぬぞ」


「……お前ッ、一体何をした″!! あんなッ、軽い斬撃で………オレの身体が斬れる訳がッ」


「さっきも言ったじゃろ、寝てる間に見たゆめで…お前のたおかたを思い付いたんじゃ。ワシとした事がッ…自分が寸前すんぜんどんな姿すがただったのかすら 忘れておったわ」


「夢ッ……だ、と?」


 夢、 雅が雷峰らいほう一撃いちげきを受けて生死せいしさかい彷徨う中でたそれは、彼が現世げんせぬ数週間前の記憶きおくであった。



 生前 唯の人間にんげんであったころから呼吸するが如くころしをかえしてきた彼は、その度重なる戦いのきず蓄積ちくせきし身体の部品ぶひんりなく成っていた。

 は片方(つぶ)れ、内臓ないぞうけ、右手は小指こゆび薬指くすりゆびとされていたという有様ありさま。しかしそんな状態でも、やはりみやびは心臓が止まるまでたたかつづけたのだった。


 とは言っても ゆびが二本も欠けていれば満足にかたな固定こていできず、力業ちからわざで存外固い人体じんたいることは不可能ふかのうと成る。

 そこで雅がけたのが、力では無くわざで人をけんであった。


 

 指が欠けている以上、先ずほねけて斬らねばならない。

 だが人体とは出来できている物で、そういった急所きゅうしょには骨の代わりに分厚ぶあつ筋肉きんにくよろいが着させられている。それ故闇雲(やみくも)に斬撃を叩き込んでもその筋繊維きんせんいに刃がめられ致命傷には至らない、という事をみやび実体験じったいけんとしてった。


 しかしそれでも、えた馬鹿ばかは時に天才てんさいをも凌駕りょうがするという奴で、彼はそうと知った後も闇雲やみくもに刀をまわつづけたのだ。

 そしてその果て、彼は間際まぎわになり、殆どちからようせず人体じんたいを豆腐の如く切断せつだんできる様に成っていたのだ。


 雅自身は一体何故(なぜ)その様な事がるのかを理解りかいしていないし、理解りかいしたいともおもってはいない。

 だがそれでも敢えて わけ論理的ろんりてきに述べるのなら、彼は狙って筋肉きんにく隙間すきまとおし切断していたのだ。


 人間の筋肉きんにく一枚岩いちまいいわではい、無数むすうおびが如く全身をおお圧迫あっぱくして身体を形成している。そしてそのおびかんに刃をれる事が出来れば、案外容易(たやす)斬撃ざんげきは人体の奥深くへと侵入し急所きゅうしょまで到達とうたつする。

 更に加えて、筋繊維きんせんいにはながれという物があり、それにさからわなけば宛らせんが引かれているかの如く人体じんたいけてゆくのだ。


 そして、それは地獄の大横綱 雷峰らいほうであっても例外れいがいではかったらしい。




「ハァ……ハァ……ハァ……………………」


ググググ……ドサンッ

       「痛で″ッ!」



 こうしてみやびは遂に雷峰へも予感よかんおぼえさせる事に成功せいこうした訳であるが、それでもだ二人の決着けっちゃくいていない。


 雷峰はわずかな振動しんどうでも傷が開き失血死しっけつししかねない為、腹を手で押さえうずくまっている。当然 雅はそのすきかんとするも、刀を杖になんとかこしげた所でバランスくずし再び無様に転倒てんとうしてしまった。

 そうして互いにモタ付いていた結果、雷峰のまったのと 雅ががったのはほとん同時どうじと成ったのである。




「 どうした、先程までデカい図体ずうたい丸めてうずくまっておったが。腹でも冷やしたか? 」


「 ああ、そうなんだよ。大分夜も更けてきたんでウトウトしてたら腹へ微風そよかぜが吹いてきやがってな。…だが、もうめたさ 」


「 そうか。しかし生憎あいにくだが…また直ぐ眠って貰う事になりそうじゃ、 今度は永遠えいえんになッ″!!!! 」


上等じょうとうだァ″ッ!!!! いい加減どっちが朝日あさひおがむのか決めようじゃねえか″!!!! 」




 二人は次動けば勝敗しょうはいけっすると悟ってそのまえに互いをののしう。

 そうして交わされる言葉ことばには、何処かこの心地よい緊迫感きんぱくかんへの名残なごりしさの様な物がにじむのであった。


 がしかしそれでも、灰河町の一夜にまぼろしが如く出現した血舞台ちぶたいへとまくかねば成らない。それはのこった者としての責務せきむである。

 両雄は共にる、そしてこのよるたたかいへ 最終幕さいしゅうまくげたのであった。




    ダ″ン″′ッ!!!!      ダ″ン″″ッ!!!!



お読み頂き有難うございます。


もし楽しんで頂けましたら、『ブックマーク』と『評価』等々を宜しくお願いします。そしてそれらを一つでも頂けましたら、明日も新しいエピソードを追加させて頂こうと思います。


何卒応援のほど、宜しくお願い申し上げます


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