第五話 月夜のバトルロワイヤル⑤
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「ホアッ、ホホホホッ!! ホアハーーーッ!!」
フォン フォン フォフォッ″ッ″ッ″ッ″ッ″ッ″ッ″ッ″ッ″ッ″ッ″ッ″…………ズ″″ウ″ォ″ン″″″!!!!!!!!!!!!!!
骨面の獄門衆が野生的な叫び声と共に石鎚へ繋がった鎖を振り回す。そして瞬く間に円盤状の残像浮かぶほど加速させられた岩の塊を 雅目掛けて解き放った。
どうやら 剥き出しの本能はその剣士を一番の脅威として認識したらしい。
「 おっと」
…………フウォ″オ″″″ ッ!!!!!!!!
そして雅自身も何となしに自らが一番に狙われると予期していたらしく、彼は放たれた石鎚を業を用いず己の反射神経のみで上体反らし回避。
またその動きと同時、彼は右手を懐へと突っ込んだ。
すると、 何故かその骨面の行動に対して顔を屈辱で赤くした男が居たのである。
「なんだとッ、拙者は後回しか!! 忍を嘗めおって、後悔させてやるぞ貴″様″ら″ァ″ァ″!!!!」
獄門衆の精神不安定さを象徴するが如く不動尊が叫ぶ。どうやら骨面が自らよりも雅への攻撃を優先した事を受け、己を下に見られたと激昂しているらしい。
キィッ″ッ″ッ″″ッ″″ッ″″ッ″″…………ブ″オ″ォ″ン″!!!!!!
その怒りに任せ、忍は両腕を天へと押し上げる動作と共に得物の回転を急激に加速。そして骨面と雅へ向けて 巨大な手裏剣は風切り音と共に解き放たれた。
(間髪入れず今度はこっちかッ。体勢立て直す暇すら無い、これぞ乱戦の醍醐味じゃな!!)
背骨を直角近くまで反らせ石鎚を躱した直後 容赦なく飛んでくるその手裏剣に、雅は寧ろ嬉しそうに内心で叫んだ。
現状彼は体勢を立て直せておらず、攻撃の到達までにはとても重心を中立へ戻せない。回避不可能な絶体絶命の状況。
だがしかし、これまで積み重ねてきた戦闘経験により雅は既にこの瞬間の最善手を打ち終えていた。
それは崩れゆく身体を立て直す事でも、迫り来る手裏剣を受け止める事でも無い。
雅は不動尊が攻撃を放ってきたのとほぼ同時、懐より抜き去った短刀一本を此方からも相手へ向けて投擲していたのだ。
スウォンッ
ブ″ウ″ォ″オ″オ″!!!!
放たれた手裏剣と短刀の影が上下に重なり 擦れ違って 両者の肉体へと迫る。
そして先に到達したのは雅が投擲した短刀。敵との間に引かれた最短ルートを狂いなく辿り、綺麗な直線の残像引いて宙を貫いた。
がしかしその余りに単調な軌道は避けるにも容易く、獄門衆の反射神経で不動尊が身を翻し標的を外す事となる。
そしてそれから瞬き一つほどの間も置かずして、手裏剣が姿勢崩れ切った雅の身体へと到達。
「 ッホギャア″ア″ア″ア″ア″″!!!!」
手裏剣が命中したらしい甲高い悲鳴。それが血生臭い空気立ち込める夜闇の向こう側より不動尊の耳へと聞こえて来たのだった。
何とも呆気ない、勝負の幕切れである。
「……ッ″!?」
しかしその直後、何故か千剱岳の忍仙の背筋を鋭い悪寒が這い上がっ
ッギ″″″イ″ン″!!!!!!!!!!!!
本能の警告で、不動尊は咄嗟に業の力を使い掌の内へとクナイを出現させ背後へと振り返る。すると其処には何故か、自らの横を飛び去っていった短刀を掴み今正に刃振り下ろしてくる雅の姿が。
忍はそれを紙一重にクナイで受け止め,死神の指先を間一髪すり抜ける。
「……ググッ″!!」
「おお、コレも受け止めるか! 良いのぉ、お前良いのおッ!! では、これは如何じゃァ″ァ″!!」
ガガガガッ………ギ″″ン″″ッ!!!! ガ″ギィン″″″ッ!!!!!!
ここ直近戦ってきた者達であれば皆使えば終わりであった業『死不別互』による瞬間移動攻撃。それを完全な初見にも関わらず 目前の忍は受け止めてみせた。
その芳しい事実に雅は溜まらなく殺したくなり、その弾かれた短刀を繰り返し繰り返し不動尊目掛け叩き付けた。
ギィン″ッ!!!! ズシュッ ガァン!! カッ! ガギン″!!!!!! ッ ズバ″″ァ″″″………ドン!!!!
短刀対クナイという間合い短い得物用いた接近戦。
だがやはり、近距離での戦いでは雅に優位があるらしい。
斬り結んだ刃が火花散らす内、短刀が徐々に敵を掠め始め 遂には肉を深々裂き血飛沫が舞った。更にその深手で一瞬怯んだ不動尊へと雅は蹴りを叩き込み、その口から苦悶を吐かせる。
「 ガハァ…ッ″!!」
「如何したッ、千剱岳の忍仙とはこの程度か? もっと力を捻り出せ、この程度ではワシに殺されてしまうぞ!!!!」
自らの入れた蹴りにより、身をくの字へと折った忍。それへと雅は挑発とも 声援とも 罵倒とも取れる様な不思議な言葉を浴びせ掛けた。
するとそれを受け、不動尊はその顔を皺で埋めたまま、闘志戻った いやそれまで以上に闘志燃え上がった声でこう叫び返したのである。
「グ″ゥ″ゥ″ゥ″ッ……千剱岳を 嘗めるなア″ア″ア″ッ!!!!」
ギィン″!! ガギィ″ン″″″!!!!!!
そして忍はその剣ヶ峰から底力を発揮。もう致命傷まで指折り数えるばかりという所から、己の内にある技術全てを搾り出して巻き返し始めたのだ。
業の力により左手にもクナイを出現。得物二本を全体重傾けた決死の前進と共に目にも留まらぬ速度で振るい 戦いの主導権を敵から奪い返した。
キィン″!! ッギ″ン″!! ガキィ″″ッ!! カッガ″ッギイン″″ガ″ン″ッガ″ン″ フォン ギイィン″″ッガ″ッガァ″ン″″ッギィン″ギィ″ン″″ ガギ″イ″ン″″″ッ!!!!!!!!!!
「 ッな″!?」
すると その鬼気迫る猛撃に気圧されたか、雅の重心が僅かに後ろへと引いた。
「ッ 隙ありィ″ィ″″!!!!」
ダン″″!!!!!!
敵が背後へ跳んで一旦距離を作ろうとしている。
そう勘付いた不動尊は空かさず此方から間合いを詰め、血匂嗅ぎつけた鮫の如くに脊髄反射で喰らい付く。
雅に先んじた跳躍、それにより電光石火で敵の懐へと潜り込んだ。そしてこの一瞬に勝敗全てを賭けんと、 不動尊は全身全霊を乗せて右手のクナイを敵の喉元へと突き出したのである。
スカッ…………………………………………………
しかし、そんな己の命運全て賭ける思いで放った一撃が伝えてきたのは、空気のみを貫いてゆく実に空虚な手応え。
唐突に夢から覚めてしまったかの如く脳が現実に置いていかれる。まるで天地がひっくり返ってしまったかの様に、情報を何一つとして頭で処理出来なくなる。
だがそんな中唯一つ揺るぎない事実としては、 彼の瞬き一つしていない視界の内から、 忽然と雅の身体が影も残さず消失したという事。
そして、 その消えた身体の後ろより、 それが今この瞬間まで隠していたとある物が姿を現した。
戦いの輪から弾き出され今の今まで息を潜めていた骨面の獄門衆。それが放った石鎚、質量の塊が突如不動尊の目と鼻の先へと出現したのである。
…………………………………………………………………………ッド″″″ゴ″″ グシャァ
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