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第五話 月夜のバトルロワイヤル④

ブックマークを頂けたので一日二話更新!!

付けて下さった方、ありがとうございます。

「雅《みやび》の旦那ァァァァッ!! 助けてくれえ″え″え″え″え″え″ッ!!!!」


 獄門衆《ごくもんしゅう》と遭遇《そうぐう》し必死な思いで踵《きびす》返《かえ》してきた少年が、漸く見えたその背中《せなか》へと喉《のど》が張《は》り裂《さ》けんばかりに叫《さけ》んだ。



 雅と分かれ反対《はんたい》方向《ほうこう》へと歩き出して以降《いこう》、千賀丸《せんがまる》はつい先程まで夜闇《よやみ》に紛《まぎ》れ血の匂い立ち込める町《まち》をコソコソと歩《ある》いていた。

 獄門衆《ごくもんしゅう》を釣《つ》ってくるのが彼の役目。がしかし基本的に敵《てき》との遭遇《そうぐう》を避《さ》けたい千賀丸は、如何しようも無く見付《みつ》かった時だけ雅《みやび》の元《もと》へと走《はし》り あわよくば朝《あさ》まで何事もなくやり過《す》ごせればと思っていたのである。


小《ちい》さな身体《からだ》と大胆《だいたん》にも臆病《おくびょう》な行動《こうどう》で血に飢えた狂人《きょうじん》の視線を掻《か》い潜《くぐ》る。

逃げる中で足《あし》へ当《あ》たり蹴飛《けっと》ばしてしまった生首《なまくび》に悲鳴上げそうに成るのを必死《ひっし》で堪《こら》える。

行手《ゆくて》を塞《ふさ》ぐ分厚い闇《やみ》に止まってしまいそうな両足《りょうのあし》 それを懸命《けんめい》に動《うご》かし前へと進む。


 そうしてこの月《つき》の下《した》、少年はかなりの時間をたった一人で生《い》き残《のこ》ったのだ。


だがそんな中 殺人鬼《さつじんき》達を避《さ》けてゆくうち偶々入(はい)り込《こ》んでいたとある路地《ろじ》で、訳の分からぬ事に垂直《すいちょく》の壁《かべ》へ虫の如く張《は》り付《つ》いていたこの獄門衆《ごくもんしゅう》と遭遇してしまったのである。



「ホウホウホウッ!! ホホッ、ホアハハハハハア″″ッ!!」



 千賀丸を背後から追《お》い掛《か》けてくる獄門衆《ごくもんしゅう》は、獣《けもの》の頭骨《とうこつ》で出来た面《めん》と歌舞伎の連獅子《れんじし》のような真っ白い毛皮《けがわ》を被った珍妙《ちんみょう》な見《み》た目《め》をしていた。


 更に奴の両手には持《も》ち手《て》の端が鎖《くさり》で繋《つな》がった二つの石鎚《いしづち》。

 その鎖《くさり》をグルングルンと振《ふ》り回《まわし》して遠心力纏わせた鎚《つち》を少年の直横へと飛《と》ばし、悲鳴《ひめい》が上《あ》がる様《さま》を観察しては嬉しそうに雄叫《おたけ》び上げるのだった。



 殺人《さつじん》の意図があるのか、それとも無邪気なお遊《あそ》びか。その真意《しんい》は一度もまともに言葉《ことば》らしい言葉《ことば》を発《はっ》していない為分(わ)からない。

 たが一撃で土壁《つちかべ》に穴《あな》を空《あ》ける質量《しつりょう》を幾度も投《な》げ付《つ》けられる千賀丸にしてみれば、どちらだろうと命《いのち》の危機《きき》には変わり無かった。


「ちくしょうッ、怒ってんだか笑ってんだか分からねえ変な声しやがって。けど此処まで来たらこっちのもんだ、お前なんか雅の旦那が一発で倒してくれるぜ! なあ、そうだろ旦那!!」


「…おお、小僧お前本当に釣ってきたか。 そこ置いといてくれ」


「そこ置いといてくれって、んな蜜柑《みかん》じゃねえんだから……ッて、ええ″!? 旦那もう戦ってんじゃねえか!!」


 命《いのち》懸《が》けで獄門衆《ごくもんしゅう》を連《つ》れてきた自分に対し余りに軽《かる》すぎやしないかという発言に恨《うら》みの視線《しせん》を向けた千賀丸。しかし其処で漸く、少年は雅《みやび》がもう既《すで》に別の獄門衆と戦闘《せんとう》を行《おこな》っている事に気付いた。

 真《ま》っ黒《くろ》い影《かげ》がそのまま立ち上がった様な外見の男《おとこ》が操る巨大《きょだい》な手裏剣《しゅりけん》。それを弾《はじ》き捌《さば》きながら、彼は片手間に返事《へんじ》を寄越《よこ》していたのだ。


「 おう。もう一人やったから此奴で二つ目、そいつで三つ目じゃ」


「んな獄門衆を蕎麦《そば》のお代《か》わりみたく数えねえでくれよ!  流石の旦那でも一度に二人相手は…ッう″お″!?!?」


 足《あし》を斬《き》り飛《と》ばしにきた巨大手裏剣を跳《と》んで躱《かわ》しつつ 自慢げに顎《あご》で地面に転がる生首《なまくび》を指《さ》した雅に、千賀丸は最早引(ひ)き気味《ぎみ》の反応《はんのう》を見せる。

 そしてその会話により意識《いしき》が進路と別方向《べつほうこう》へ向《む》いた少年は地面《じめん》に現《あら》われた凹《へこ》みに気付かず、足《あし》を取《と》られ転倒《てんとう》した。

…………ッ ズウォ″オ″ン″″″!!!!!!!!!!



 しかし、直後その転倒《てんとう》が思いも寄らず少年《しょうねん》の命《いのち》を救《すく》う。

 とうとう遊《あそ》び飽《あ》きたのか 骨面《こつめん》の獄門衆が千賀丸の後頭部《こうとうぶ》目掛けて躊躇なくその石鎚《せきつい》を放《はな》ってきたのだ。だが転倒《てんとう》したお陰《かげ》でその鎚は襟足《えりあし》すぐ後《うし》ろを素通《すどお》りし、少年は致命傷《ちめいしょう》を免《まぬが》れる。


「ホワッ? ホアッ、ホアッ、ホアハハ″ハ″ハ″ハ″!!」


 攻撃が外れて怒《おこ》っているのか、若しくは逆に面白《おもしろ》がっているのか、骨面の獄門衆はとにかく興奮《こうふん》したように叫《さけ》び声《ごえ》を上《あ》げた。

 そして敢えなく地面《じめん》に落《お》ちた石鎚《せきつい》を凄まじい怪力で鎖引き手繰《たぐ》り寄《よ》せ、今度はそれで直接《ちょくせつ》殴《なぐ》り殺《ころ》そうと千賀丸へ迫る。



「……うッ、うわあああああッ!!!!」


「ホハハハハッ! オホホッ! ッホ″ホ″ホ″ホ″ホ″ホ″ホ″ホ″ホ″ホ″ホ″!!!!!!」



 転倒した身体《からだ》を起《お》こし 頭上を通り過ぎていった風圧《ふうあつ》に背後《はいご》を見《み》た千賀丸は、石鎚《いしづち》を振《ふ》り上《あ》げヒタヒタと迫る敵《てき》の姿《すがた》に悲鳴を上げる。

 対してそれを見た骨面《こつめん》の獄門衆は、更に興奮の雄叫《おたけ》びを激《はげ》しくし肩《かた》を上下《じょうげ》させた。


 そして、 無骨な鈍器《どんき》が少年の頭蓋《ずがい》を粉砕《ふんさい》せんと振り上げられたのであ


ゾクン″ッ

「………………ホハハッ!?!?」

              ダッ!!


しかし、その千賀丸の脳天《のうてん》割《わ》らんとしていた筈の石鎚《せきつい》が、 突如ピタリと停止《ていし》した。

 また次の瞬間 、骨面《こつめん》の獄門衆は現在進行していたあらゆる動《うご》きを切《き》り上《あ》げ背後《はいご》へと跳《と》び 重心を落とした警戒《けいかい》の姿勢《しせい》を作ったのである。


 そして、そんな宛ら天敵《てんてき》にでも出会《でくわ》したかの如き視線《しせん》の見詰《みつ》める先《さき》には、彼へ向け奈落のような一瞥をくれてやる雅《みやび》の姿《すがた》が。



「…小僧、お前はさっさと此処を離れて次の獄門衆でも釣ってこい。ちょこまか走り回られるのは目障りじゃ」


「で、でも旦那 幾らなんでも二人の相手は 」


「要らぬ事を考えるな。ワシは直《じき》にこいつらを平らげる。それまでに獲物が用意できていなかったら……ワシが次に喰らい付くのはお前かも知れんぞッ」


 雅はそう、己が負けるとは微塵も思っていない獅子《しし》が喉《のど》鳴《な》らす様な声《こえ》を発した。その声には恐怖心《きょうふしん》などという物はとっくに腐《くさ》り落《お》ちていそうな二人の獄門衆も 一瞬動(うご)けなく成《な》る。


 そして当然、千賀丸がこの命令《めいれい》に背《そむ》ける筈《はず》がなかった。

 






「 おう、もう良いぞお前ら。いつまで固まっとるんじゃ。二対一で相手してやるから掛かってこい」


「フッ、子連れで戦場に来るとは愚かな。貴様らこそ二人掛かりで来い、格の違いを見せてやろう」


「ホウッ! ホウッ! ホハハハ″ハ″″ア″″″ッ!!」


 雅が走り去ってゆく少年《しょうねん》の背中《せなか》を横目に見送《みおく》る。そうしてその通りには血《ち》に飢《う》えた獣《けもの》だけが三匹残り、空間のカオスは更に一段と加速《かそく》していった。

 しかし、やる事だけは依然シンプルである。ただこの場に立《た》っている者《もの》が一人《ひとり》に成るまで腕が千切れようと足が千切れようと戦《たたか》い続《つづ》けるまで。


 一瞬《いっしゅん》の沈黙《ちんもく》を挟んだあと、 三人はまるで示し合わせたが如く同時《どうじ》に、 殺《ころ》し合《あ》いを再開《さいかい》したのであった。

 

お読み頂き有難うございます。


もし楽しんで頂けましたら、『ブックマーク』と『評価』等々を宜しくお願いします。そしてそれらを一つでも頂けましたら、明日も新しいエピソードを追加させて頂こうと思います。

そして少しでも小説の技量を上げたいと思っておりますので、感想やアドバイスなどを頂けると嬉しいです。


何卒応援のほど、宜しくお願い申し上げます


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