第3話 町へ
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「……あれ、勝ってる?」
銃声が鳴り止み、恐る恐る目を覆っていた指の隙間から外を見た少年。そんな彼の舌と唇が独りでに動き、そう一言零れた。
立っている場所が一瞬き毎に変わる三好に四方八方から銃撃される雅の姿が余りに痛ましく、思わず目を背けてしまっていた千賀丸。
しかし瞼を開けてみれば、何と立っているのは幾発もの弾丸を受けていた雅の方。三好は首と胴を分かたれ虚な目を天へと向けていたのであった。
「 ッハハ、ハハハハ…ッ。アハハハハハハハッ!! ワシの勝ちじゃ! ワシのッ…ワシのか………わし のか、ち………………」
バタンッ
「うわあッ! だッ、旦那大丈夫か!?」
そしてその地面に転がる生首を見て、坊主が見れば腰を抜かす程満面の笑みを浮かべ馬鹿笑いしていた雅。しかしそんな彼が突如、立った体勢のまま真後ろへと倒れたのだ。
受け身が全く無い、棒が倒れる様な転倒。
それを見た千賀丸は 慌てて藪の中から飛び出し彼の元へと駆け寄った。
「 ウゲェ″ッ!? 何だコレ、 全身血塗れの穴だらけじゃねえか!?!?」
倒れる寸前の大声で爆笑する様子に、千賀丸は自分の見た弾丸が彼の身体を貫いてゆく光景は目の錯覚か何かだったと思い掛けていた。
しかし駆け寄って間近で見て、それは錯覚などでは無かったのだと悟る。
雅の身体には夥しい量の銃創が刻まれ、今この瞬間にも血を噴いていたのだ。
手当しようと近寄ったものの 何からすれば良いのかすら分からない。重症どころか、もうとっくに死んでいなければおかしい有様である。
「でも…生きてるよな?」
パッと見ただけで片手に余る量の致命傷が目に付く 見るも無惨な上半身。
しかしそんな傷に囲まれ、血に覆われ、平然と上下運動を繰り返している胸央を 千賀丸は目を擦りながら見たのである。
更に、 その背中まで貫通していた致命傷達にも、 少年が見下ろしている中で奇妙な変化が起り始める。
夥しい量溢れ出ていた血液が急に止まったかと思えば、その風穴に栓をするかの如く巨大な瘡蓋が現われた。
そしてその瘡蓋が出来た瞬間より急激に 死人が如く青ざめていた雅の顔色が好転しだし、身体は湯気が昇るほどの熱を纏い始める。
幼い千賀丸の持っている知識程度では、彼の身体に何が起っているのかを理解する事は出来ない。
だがしかし一つ確かなのは、例え日の本一のお医者様であろうと自分と同じく反応をするであろうという事。そしてこの傷に関して 自分に出来る事は何も無さそうだという事であった。
「…………取り敢えず、飯温め直して 着物も洗い直すか」
呆気に取られる事しか出来なかった千賀丸であったが、何となく恩人は大丈夫そうだと思い 一つ息を吐く。
そして殺し合いが繰り広げられる中 ちゃっかりと回収していた鍋を取りに薮の中へと入っていった。
先ずは鍋を火に掛け、 次に着物を脱がせて川で洗い、 濡らした手拭いで血を拭ってやらねば成らない。
「全く、手の掛かる旦那だぜ。 先が思い遣られるなッ」
自分が地獄で生きてゆく術は、この化物染みた強さを持つ男の側に居させて貰う以外に無い。
そう先程の戦いを見て確信した千賀丸は、少しでも自分が役に立つという所を見せる為 己に出来る最大限のもてなしを用意し雅の意識が戻るのを待ったのであった。
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