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スライムの秘密

「ティンクルに小さいとか言ったらダメだろ」


「いやぁ、気にしてると思わなくてさぁ」


今はサカキ達も出てきてバビデ達と宴会中だ。まずひとつ目のヘスティアの赤いマントが完成したのだ。


「セイ、どうだっ!似合うだろ」


そう、ヘスティアには赤いマントがよく似合ってる。本当によく似合いすぎててよりヤンキー感が増してしまった。マントの裏地にはエンシェントドラゴンのウロコをあしらい、赤いマントの裏地が赤いタマムシ色みたいに見えるのだ。マント自体はエナメル調の赤。時間がかかったのはこの発色にヘスティアがこだわったからだった。


「うん、ヘスティアの為の服って感じだね」


「よっ、よせよぅ」

 

別に綺麗とかは言って無いのに照れるヘスティア。


ウェンディの火吹きウサギのポンチョは出来ているが、これからの季節は見るからに暑苦しいから着れない。そこでウロコを防具に加工しているらしい。ウロコを変形させられるのはウェンディだけなのでウェンディ自身が作っているそうだ。バビデが手直しすることも出来ず、何度やってもぶきっちょなウェンディでは上手くいかないらしい。そこでバビデが型を作り、その型に合わせてウェンディが作るようにしたようだ。型が出来次第、俺のブラックドラゴン装備を作ってくれるとのこと。ブラックドラゴンの皮は遮熱効果があるので、夏場でも日差しの熱をカットしてくれるそうだ。


ビビデが加工しているドラゴンの剣とかも明後日には出来るだろうとのこと。



「ウェンディ、ちょっとこれ飲んでみてくれ」 


「なにこれ?」


「体力回復ポーションだ。試しに貰ってきたんだよ。これが効くならねぼすけが治るかもよ」


と、飲ませると一口飲んで不味いと飲まなかった。ポーションは封を開けると飲みきらないとダメだそうで、その残りをセイも飲んでみる。確かに不味いわこれ。


その夜、案の定バビデの所で雑魚寝しているとウェンディがくっつきに来た。いつもなら足を乗せたり上に乗るのだが今日は抱きついて来やがった。


もしかしてウロコを変形させるのってエネルギーをものすごく使うのでは? 


回復ポーションを飲んで目が覚めて寝れないセイはウロコを出して妖力を流してみた。


徐々に流す妖力を強めていく。


ぐにゃっ


当たりだ。これ変形させるのにエネルギーを使うんだな。ウェンディは何度も何度もやっていたらしいからエネルギーをかなり消耗したのだろう。


この前はヘスティアもくっつくのではなく抱き付いてきた。もしかしたらエネルギー吸収はそうした方が効率が良いのかもしれないと思い、抱きついて来たウェンディにそのまま妖力を流してみる。


なるほど。お互いの正面が触れている面積が多いと流れる量も増えるんだな。注射器の針で流しているような感覚から点滴ぐらいの感覚に変わっている。ヘスティアなら頭に触れているだけで太いホースで流しているような感じなんだけどな。


そしてセイはウェンディに抱き付かれたまま妖力を流し続けて寝てしまったのである。



翌朝、セイよりも早くに目覚めたウェンディはセイに抱き締められている状況にパニックになる。


「何してくれてんのよーーっ」


ゴスッ


セイの目覚めは最悪だった。


「何するんだよ」


「なっ、なっ、なんでエッチな事をしようとしてんのよーーっ」


「するか馬鹿。お前に妖力をなが」


そこまで言いかけたら真っ赤になって去っていってしまった。ウェンディにも変態扱いされたんだろうな。


しかし、エネルギーを回復させてやろうにも手で触れているだけではその量は知れている。正面で抱きしめたまま流すのはさすがにお互いよくないだろうな。周りからも誤解されてしまう。ウェンディがぬーちゃんやタマモみたい獣系の姿になれれば問題ないのに。


セイは当初はウェンディを女の子のように見ていたが、今では子供としてしか認識していない。単なる保護対象になっているのだ。


ま、早くに起きたし、少しは回復したのだろう。またなかなか起きなくなったらやってみるか。

 


今日も暇なのでぬーちゃんと何かを狩りに行くことに。


タッパの村を超えてさらに奥へと進む。ここまで来ると手付かずの森のようで木々が生い茂り暗くてじめっとしている。


じめじめしているからかスライムも結構いた。アイアン達にスライムは森や山の掃除屋で特に悪さもしないから襲われない限り手出し無用と教えて貰っていた。スライムは水のあるところに多いって本当だな。じめじめしているから大小様々な奴がいるわ。


鹿かなんかが魔物に襲われたのか死骸があり、そこにスライムが群がっていた。


スライムを見かける度に水信玄餅みたいで旨そうだなとか思うけど、こうして死骸を食ってるところを見るとそれも薄れるな。


しばらく死骸を食ってる様子を見ているとあぶれた小さなスライムが寄ってきた。餌をねだりに来たのか?小さいから餌の取り合いに負けるのだろう。小さいスライムは大きなスライムに飲み込まれて食われたりしているからな。


えーっと、確かノーマルオークの肉あったな。


ノーマルオークの肉を出してやるとその上に乗っかって食べだした。というより溶かしているのか何なのかわからないけど吸収していくような感じだな。段々とオーク肉の中に沈んでいく水信玄餅サイズのスライム。


「ま、他の仲間に食われないように大きくなれよ」


と言ってサヨナラしようと思ったら本当に大きくなった。


今までの経験上、魔物が魔物に殺されて食われなくてもアイテムに姿を変えず、いつの間にか死体は消えてなくなる。不思議だけど人が攻撃をして死んだ時だけアイテムに変わるのだ。なので、魔物の肉が落ちていることはないからスライムが魔物肉を食う機会はないはずだ。もしかして魔物肉は動物よりエネルギーというか栄養価が高いのだろうか?


「ちょっとこっちに来い」


セイは興味本位でスライムに触れた。ぷるぷると冷たくて気持ちがいい。アイアン達に食われるかもしれないから触るなとは言われてたけど、呼んだら近付いて来たのでなんとなく大丈夫な気がしたのだ。


そしておっきくなるかな?と妖力を流してみた。


ズズズズズ


「わっ、でっかくなった」


人サイズまで大きくなったスライム。重いからかまん丸だったのが横に伸びている。オークモードのグリンディルの腹のようだ。


「お前、面白いな。まだでっかくなるか?」


と、さらに妖力を流してみる。最悪人を襲うようになってしまったら倒さないとダメだけど。


どんどん大きくなったスライムはシュウシュウと地面を溶かし出した。ここまで大きくなると無機物も食えるのか。なんとなくもうやばそうなので妖力を流すのをやめても地面を溶かして下に消えて行った。


その直後、ゴゴゴッと少し地面が揺れて盛り上がり口が開いた。


これってもしかしてダンジョン?


「お前もしかしてダンジョンになったのか?」


入り口が少しはパクパクしたように見えた。


あー、ダンジョンってスライムの超進化したやつなのか。通りで獲物の食い方が似ていると思ったわ。


そして、出来立てのダンジョンはペッと何かを出した。スライムみたいなポヨポヨしたものだ。なんかの液体が入っているようにも見えるけどなんだろうな?


「くれるのか?」


入り口が少しパクパクする。


「ありがとうな。次に来た時はなんか肉を持って来てやるよ」


そしてこの場所がよくわかるように木々を倒して広場にしておいた。次に来る時はどうなってるか楽しみだな。なんか飼い犬というか飼いダンジョンって感じで愛着が出てくるな。


そんな風に考えていると木を切り倒した騒ぎを聞きつけたのか、ゴブリンやオーク達が寄ってきた。


「ぬーちゃん、あいつらを殺さずにあのダンジョンに放り込んで行って」


出てくる魔物をぬーちゃんと二人で殺さずにダンジョンに放り込んでいく。放り込まれた魔物はどれも出て来ないから吸収されているのだろう。人間は死なないと吸収されないが魔物は生きたまま吸収されてるいのかもしれない。バンパイアの時も食っていいぞと言わなくても普通に吸収したのかもしれんな。そしてダンジョンは時々ゴゴゴと揺れるので成長していっているのだろう。


ここのダンジョンは何を出すのだろうか?さっきくれたのは液体だったからポーションだろうか?それとも毒?無色透明だからわからんな。ティンクルに鑑定みてもらったらわかるかもしれん。


そうこうしているうちにもう夕方だ。研究室が閉まらないうちに帰るか。




「こんにちはー」


「なんだまた来たのか?」


「得体のしれない液体を手にいれたんだけど何かわかる?」


と、野球ボールサイズの水信玄餅みたいなのをみせる。


「それスライムだろうが。なぜそんなもんを持ってくる?」


「スライムじゃないよ。中の液体が何か調べて欲しいんだよ」 


毒だったらダメなので、こぼさないようにボウルに入れてナイフで突き刺すとパンと弾けるように割れて、皮も液体の一部となった。こんな風にして食べる羊羹あったな。


ティンクルが鑑定機にかけるとフリーズして固まった。



「これをどこで手に入れたーーっ」


動き出したと思ったらセイの胸ぐらを掴んでそう叫んだティンクルであった。









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