アネモスに帰国
陸地ルートはいくつか国らしき場所や街や村もあった。しかし、何かに巻き込まれたら帰るのが遅くなるのでスルー。行きは20日程だったが、帰りは一ヶ月以上かかった。魔物図鑑の充実にあてたからだ。
「帰りは倍ぐらい日にちかかったね」
「まぁ、そのお陰でボン・キュッ・ボンで帰ってやれるよ」
ぬーちゃんに乗って上空から水の機関銃攻撃は強烈だった。まるで機銃掃射なのだ。これでは魔物図鑑もへったくれもないので下に降りて普通に戦った結果、グリンディルのカロリーも消費されたのであった。
アネモスにはオーガ島経由で帰る。
「砂婆、迎えにきたよ」
「おー、無事に帰ってきたか。ウンウン。よー帰ってきた」
砂婆はセイが子供の頃のようにヨシヨシした。
「田植えも終わったみたいだね」
「鬼共に田を作らせたら早い早い。とらくたーみたいじゃったぞ」
鬼達は重機なみなのか。さすがに田植えは普通だったみたいだけど。
サカキ達はヒョウエに飲ませろとたかりに行った。今日は飲み会で帰れそうにないので入江に行ってみる。
ビッシャンビッシャン
入江にはマーメイがいて、セイを見るなり海水をかけまくる。
「なっ、なんだよっ」
「あんた、サムにあたしたちの事教えたわけっ?」
そういや出発してすぐにサム達と一悶着あったな。その後の出来事が多すぎて忘れてたわ。
「お前ら仲間なんだろ?」
「あんなの仲間じゃないわけっ。なんてことをしてくれたのよっ」
あれ?この怒りようは本当にまずかったのか?
(お義兄ちゃん、お義兄ちゃん)
(マーリン、本当にサムはお前達の仲間じゃなかったのか?)
(ううん、知り合いなのは確かよ)
(ならなんであんなに怒ってんだよ?)
(サムがお姉ちゃんに気があるのを聞いて居場所を教えたからよ。わたしの事をなんとも思ってないわけって。大変だったんだから)
(意味がわかんないんだけど?)
(お姉ちゃんはお義兄ちゃんと結婚するつもりなのに他の男を押し付けようとしたと怒ってんのっ)
(あの話は無くなったじゃん)
(お姉ちゃんの中では無くなってないの)
「マーリンっ!何コソコソ喋ってるわけっ」
マーメイ激オコだわ。マーリンにまで当たり散らしてる。
マーリンはキャーっと言って泳いで逃げたのをマーメイは追っかけていった。
これは早く退散しなくては・・・
と、セイがコソッと逃げようとすると。
「セイ」
と呼び止められた。
「は、はい・・・ ってサムかよ。お前も来てたのか?」
「マーメイと結婚するって本当か?」
「嘘だよ。マーメイが勝手に言ってるだけだ。それに人魚と人間がどうやって結婚するんだよ?」
「お前はなんとも思ってないのか?」
「好きは好きだけど結婚とかそんなんじゃないよ。お前、ちゃんとマーメイを振り向かせろよ。それが種族のためでもあるんだぞ」
「それは本気で言ってるのか?」
「本気じゃなきゃお前にマーメイ達がここにいることを教えたりするわけないだろ?」
「そ、そうか。あんな見事な宝石を渡したのはお前だと聞いてな」
「マーリンも同じの持ってただろ?あれはお土産だ」
「確かに同じのをしていた。てっきり二人共嫁にするのかと」
「そんなわけあるか」
「悔しかったらこんなの寄越してみろと言われてしまってな」
「そうか。他のもあるけどお前に渡してもバレるだろうしなぁ。真珠とかダメなのか?」
「真珠?」
「貝の中に白い玉が入ってんの見たことはないか?」
「いや、俺達はあまり貝は食わんからな」
「そうか。なら、アコヤ貝ってのがいたら片っ端から開けてみろ中に白い玉が入っているやつがあるから」
形を絵に描いて説明してやる。なんとなくホタテに似ているはず。
「比較的温暖な砂地にいると思うから探してみろよ。海で採れる宝石はそれぐらいしか知らんからな。もしくは沈没した船になんかあるかもしれんけどな」
「お前、色々と知っているんだな」
「まあな。ちなみにアコヤ貝は貝柱が食えるから食った事がないなら試してみろよ。貝は真珠を見つけるのに開けると死ぬだろうからせめて食ってやれ」
「解った。色々とありがとうな。いつかこの礼はする」
「そんなの気にしなくていいぞ。それよりちゃんとマーメイを射止めろよ」
サムは水かきのついた手を降って水中へと消えて行った。
「セイーっ。天麩羅うどん作ってやったぞー」
砂婆が大きな声で叫んで呼んでくれた。
「やった!そういうのに飢えてたんだよねっ」
喜んで砂婆の所に行くと素うどんになっていた。ウェンディ、お前だろこんな仕打ちをしやがったのは?
次の天麩羅が揚がるまでセイはハイカラうどんを食べたのであった。
翌日、セイの屋敷で戦利品をどう分けるかグリンディルと相談する。
「どれ持ってく?好きなの選んで」
「別にわたしはいらないわよ」
「ダメだよ。共闘だったんだから。好きなの好きなだけ選んで。ドラゴンの血以外はどれでもいいよ」
「本当にいいの?」
「いいよ。俺達はブラックドラゴンの血が欲しかっただけだから」
「じゃあ、ドラゴンの涙とウロコ、牙をひとつ貰えないかい?」
「全部持っていく?」
「そんなにいらないわよ」
「売ったら売れるんじゃない?」
「こんなもん売ったらどうしたんだって大騒ぎになるだろう。これはマモンへのお土産よ」
「なら自分で倒したファイアドラゴンの皮も持って行きなよ。ドラゴンスレイヤーとして自慢するなら戦利品持っていかないと」
「そう?ならそれももらっておこうかな」
「でも一番のお土産はボン・キュッ・ボンのグリンディルさんだろうね」
「ふふふ、当たり前でしょっ」
グリンディルはドラゴンの皮とか目立つからアイテムボックスに入れて送って欲しいと言ったのでまずはギルドへ行く。
「マモン、帰ったよ」
リタにギルマスを呼んでもらったらここでチューかましやがった。
「セイさん、無事に帰ってきてくれて良かったです」
「うん、結構大変だったけどね」
「またお話をゆっくりと聞かせて下さい」
「うん、連行されないうちに明日ボッケーノに行ってくるよ。帰って来たら家でご飯食べながら話そうか」
「ハイ♪」
熱いチューが終わったみたいなので、グリンディルを送って行くことと詳しい話はボッケーノから帰ってからすると伝えてギルマスの家に。結構立派な家だ。
「お茶でも飲んでいきなよ」
「いや、なんかアネモスに着いたと思ったらドッと疲れが出て来たから帰るよ」
「そう?ならまたね」
「グリンディルさん、色々とありがとうね。一緒に来てもらって本当に良かったよ」
「あら、ならアクアに行くときも付いてってあげようか?」
「お願いしたいけど、ギルマスが可哀想だからね」
「そうね、さっきちょっと泣いてたから寂しかったんでしょうね」
そうふふふと笑ったグリンディルにバイバイして屋敷に帰った。
「はーっ、疲れたわ」
「よう変態、飯どうすんだよ?」
「まだ変態とか言ってんのかよ?いつまでもそんな事言ってたらガン見してやるからな」
「やっ、やめろよっ」
「ほれほれっ」
「やーめーろーよーっ」
あれからヘスティアとはこういう遊びを良くしていた。からかいに来てはからかい返すような遊びだ。
「セイ、何か食べたいものはあるかの?」
「うーん、煮物か煮付けとか砂婆の味がするやつが食べたい」
「そうかそうか、ならちょっと待っとれ」
しばらく待つと、豆ごはん、たけのことワカメの煮物、ズイキと揚げと鶏肉の煮物、鰯の生姜煮、アサリのお味噌を出してくれた。
どれもセイの好物だ。
「砂婆、めっちゃ旨い」
ウェンディとヘスティアも食べるけど鰯の生姜煮とアサリの味噌汁はよく食べた。
「これ、あんまり味がねぇのな」
ズイキの煮物を食べてそういうヘスティア。
「多分日本酒と合うと思うぞ」
ウェンディは豆ごはんを食べてから、豆をフォークでほじくり出してよける。豆ごはんは好き嫌いがあるからな。セイはウェンディのほじくり出した豆も食べることに。
あっ、お前、いま口から出したやつも混ぜただろ?もうどれがそうなのかわからんではないか。全部捨てるのももったいないから食わねばならない。さすがにニャンニャンされてたら無理だけど原型を保ってるのが幸いだ。お湯でシャカシャカと洗ってから食べるか・・・
ヘスティアは味が無いと言ったズイキの煮物と日本酒を旨そうに食い出した。多分今日のメニューはどれも日本酒にあうだろうな。
先に満腹になったセイはウェンディ達に露天風呂を取られないうちに先に入る。
はぁー、なんの警戒もせずに入れる風呂は最高だ。移動中も風呂に入ってたけど完全に気を抜く事は出来なかったからな。
身体の汚れと疲れを風呂で落とし、部屋に戻るとウェンディとヘスティアも風呂に行ったようだった。
さて、寝よとベッドに寝転ぶと二人がやってきた。
「なんで露天風呂に先に入ったのよっ」
「お前らまだ食ってたじゃないか。今空いてるぞ」
「もう中のお風呂に入ったわよっ」
「ならもういいだろ?俺はもう眠たいから静かにしてくれ」
セイは疲れていたのでウェンディがまだなんか言ってるけどそのまま寝たのであった。
うーん、うーん
夜中に重くて目が覚めるとまたウェンディが足を腹に乗せて寝ていた。隣にはヘスティアもいる。
ここに3ヶ月近くグリンディルとか皆で寝たりしてたから部屋で一人で寝るの寂しいのかもしれないと、そのままセイも寝たのであった。
※素うどん=かけうどん
天カス=揚げ玉
ハイカラうどん→素うどんに天カスがはいった食べ物。