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Dミート

さんざんウェンディにチョップした後にグリンディルからウェンディがものすごく心配して膝枕をしてくれていた事を聞かされる。


そんなのを聞いたらウェンディのヨダレが口に入った事をもう怒れないじゃないか。あれは気のせい、あれは気のせいと自分に言い聞かせながら口をグイグイと拭った。




「何の肉だこれ?オーガ肉か?いや、味もずっと濃いし噛み切れ無くもないな」


かなり歯ごたえのある肉をセイがかじってそうサカキに聞いた。


「ドラゴン肉だ。こいぁ精が付くぜ。なんか力が漲ってきやがる」


「本当だな、俺様の力になってる感じがしやがる」


ぬーちゃんも塊にカブり付いて食べている。


確かに肉の味は濃くて旨い。しかし噛みごたえが強くて顎が疲れてくる。牛肉と豚肉と鶏肉の旨味を全て足したような味なのだ。こんなの初めての味だな。


しかし、これでは一切れでギブだ。


なんかごはんが食べたいな。よし、炊いてみるか。いや、炊飯器ならともかく土鍋で炊くとか失敗するのが目に見えている。


「マダラ、マダラ、お前は飯炊けるか?」


「はいはい〜。お呼びですかにゃ?」


「お前、土鍋で飯を炊ける?」


「お任せにゃ。ホカホカご飯にカツオのタタキとかたまりませんからにゃぁ」


と出てきてくれてご飯を炊いてくれる。マダラの指示で狐火を強めたり弱めたりしながら炊いてもらった。


「ありがとうな。ご飯が食べたかったから助かったよ。お礼にドラゴン肉を食ってみるか?」


「にゃんですかそれ?」


「ほれ、噛みごたえが強いからな」


と、サイコロ状に切って口に入れてやる。


ムグムグ食べて飲み込んだマダラ。


「フーっ フーっ」


ドラゴン肉を食べたマダラは人型から猫又の姿になり毛を逆立てている。


「ど、どうした?」


「力が溢れだすにゃ。ちょっと戦ってくるにゃっ」


ドラゴン肉を食ったマダラは興奮してひょうたんに帰っていった。


「おい、セイ。この肉を里の者に食わしたらまずいかもしれんぞ」


「なんか今、マダラもやたら興奮してたな」


「あぁ、この肉は力が付きすぎるんじゃねーか?」


なるほど、強い魔物の肉はそういう効果があるのかもしれん。ヘスティアが疲れたら妖力を注いでやれるけど、ウェンディにはこれで回復させてやるのがいいかもしれんな。これはウェンディの飯として・・・


しかし、ドラゴン肉をなかなか噛み切れないウェンディはドラゴン肉をペッてしていた。


セイはドラゴン肉をナイフで薄く薄くスライスしてタマネギを加え醤油と砂糖で少し煮込み、ドラ丼にして食べてみる。


うん、薄くても噛み切りにくいのは同じだな。でも適当な味付けでも旨いや。顎が疲れてもう食べられないけど。


残りの白飯は今のタレとタマネギだけかけて食べ、肉はぬーちゃんに食べてもらった。



「しかし、たくさん倒したなぁ。なんだよこのアイテムの数?」


「何言ってやがんだ。大半はお前がやったんだろうが」


「俺が?どうやって?」


「お前、自分が暴走したの覚えてねーのかよ?さっきまで気絶してたろうが」


サカキにそう言われてなんとなく記憶が蘇ってくる。


「ウェンディ、お前ちょっと顔を見せろ」


と、セイはウェンディの顎をクイと持って顔をあげて確認する。


「なっ、何よっ」


「火傷は大丈夫だったか?」


「あんなの当たり前でしょっ。お気に入りの服がダメになっちゃったんだからまた買ってよねっ」


ブーツは履いてるけどポンチョは燃えたんだな。


「これ着てろ。初めからそうしているべきだったわ。すまん、油断していた」


とワイバーンマントをウェンディに被せた。 


「もうドラゴンがいないからいらないわよっ」


「寒くなるから着とけ」


ウェンディにマントを着せたセイはくるくると小さな身体に合わせて袖まくりをしていく。このままだと引きずるので腰紐でたくし上げて丈も調整した。


セイの記憶はウェンディがドラゴンの炎に一瞬包まれた所で途切れている。ウェンディが顔を火傷した所で自分が暴走したのだろうと理解した。


「タマモは?」


「ひょうたんに戻ったぞ」


「もしかして俺が怪我でもさせた?」


そう心配するセイ。


「いや、怪我をさせにいったぞ」


サカキにそう言われて何が何か分からないセイ。まぁ、タマモが怪我してないならいいかと思い、戦利品を見ていく。


ドラゴンの皮がたくさんある。茶色、黒、赤、ずず汚いピンクの4種類×複数。肉はどれがどのドラゴンの肉か不明。大きな牙や小さな牙が各種ゴロゴロと、それにひときわ大きな牙と爪。爪は指ごとあるからコイツは自分が切ったものだと解った。あとは血の入った袋。ここまではわかる。


「これなに?宝石?」


大小様々なビー玉みたいなのがたくさんある。それは透明で中に不思議な光が揺らめいているようにもみえた。


「それはドラゴンの涙よ」


「涙?」


「そう、暴走していたセイが弱いものイジメをして泣かせたのよ。そっちのはそいつからカツアゲしたウロコよ」


とグリンディルが教えてくれた。暴走した俺はそんなことをしていたのか・・・。サカキの事を言えんな。



ウロコは大きく透明だけど涙と同じく不思議な光が揺らめいていた。持ち上げると拍子抜けするぐらい軽い。


「このウロコってドラゴンのなんだよね?盾になるかな」


「どうだろうね」


「よし、耐久性を試してやるか。セイ、そのまま持ってろ」


「お、おい何する気だよ?腕をぐるぐる回すなっサカキ。おいやめろってばっ」


そう言っているにも関わらずぶん殴って来た。


ドゴンっ


セイはその衝撃に備えて踏ん張ったけど、思っていたより衝撃が来ない。というかぜんぜんだ。


「ほう、俺様の攻撃を吸収しやがったぜ。ならちょっくら本気で殴ってやるぜっ」


「やめろよ馬鹿っ」


とウロコで殴るとサカキには衝撃が伝わった。


「これ凄いね」


鬼火をぶつけてみたり、グリンディルの水機関銃で攻撃してみたり、ヘスティアの抑えた炎攻撃にも耐えた。


「これをバビデに加工してもらえたらいいんだけどね。硬すぎて加工は無理かな?」


「それ、俺様なら曲げたり出来るぞ」


とヘスティアが言い出し、熱を加えた様子もないのに曲げてみせた。というより布みたいになる。


「何これ?」


「こいつはエンシェントドラゴンのウロコだ。神の力があれば自在に形を変える」


なんだよそのファンタジーアイテム?


「もしかしてポンチョみたいにして着れる?」


とヘスティアに試させる。


「こうか?」 


とウロコを羽織ったヘスティア。


「うん、やめとこうか」


肌の露出の多いヘスティアが透明なウロコを纏うとなんかなまめかしい。直接肌が見えるより艶かしいのだ。某男性アイドルがデビュー当時に着ていた服のように。


次にウェンディに持たせてみるとなんとか曲げたりは出来るみたいだけどヘスティアみたいに布みたいにはならなかった。


「見習いには無理なんだな」


「キィーーーー」


ウェンディはポカポカ殴って来るけど事実だからしょうがない。

 

そこにペンの九十九神がやってきてドラゴンのイラストをくれた。


「おーっ、ありがとう。とてもわかりやすいよ。でも、このデカいのは書き直して。ドラゴンが泣いてる姿を図鑑に載せるわけにはいかないからな」


「セイ、エンシェントドラゴンは図鑑に載せるな。人間達に存在を知らせない方がいい」


とヘスティアが手を出して来たのでイラストを渡す。


「なんで?」


「パニックになるだろうが。他のドラゴンでもやべぇのに。それに人間がどうこう出来る存在じゃねーからな」


「でも泣いてたんだよね?」


「暴走したお前みたいな奴が他に存在するか。俺様でも少し怖かったんだからな」


・・・

・・・・

・・・・・


ヘスティアが俺を怖がったのか・・・


セイは母親の怯えた目を思い出した。自分では覚えてはいないとはいえ、きっとヘスティアにも同じような目で見られたんだろう。


「悪かったなヘスティア」


「おっ、おう。次から気を付けろよな」


「わかったよ」


その後、セイはヘスティアから少し距離を置くようになっていったのであった。





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