巻き込まれたのはセイだけ
頑張ってるヘスティアとイフリートの為に飯を作っていく。
「寒いから鍋にしようか?」
白菜やネギ、しいたけとかを用意していく。砂婆みたいに綺麗に用意はできないけど煮込めば同じだしと自分に言い聞かせる。
出汁も取れて、鶏肉は初めから煮込んでたのがもうボロボロに煮崩れた頃にヘスティア達が帰ってきた。
「お疲れーっ」
なんかくったりしているヘスティアとイフリート。
「どうした?」
「終わりが見えねぇんだよ。溶かしても溶かしても全然貫通しねぇ」
神の力でやっても先が見えないぐらい距離あるんだな。
「セイ、腹減った」
「今日は鍋にしてやったぞ」
頑張ったヘスティアに具を入れてはフーフーして渡すセイ。
そしてお腹いっぱいになったのか、ヘスティアはそのままセイにもたれ掛かって寝てしまった。
マットレスを敷いてそこに寝かせる。
「グリンディル、もう1つテント出すからあと宜しくね」
「もう面倒だからここで皆で寝ればいいじゃないか。ぬーちゃんがいても十分寝られるだろ」
ということでグリンディルとも一緒に寝ることになってしまった。ギルマス怒るだろうな。まぁ、人数いたほうが暖かいってのもあるな。
イフリートはここに戻って来た時に、また明日来ますとさっさと帰っていた。ヘスティアがいると眠れないのかもしれない。
寝てても疲れた顔をしているヘスティア。外界でエネルギーを使うと補充が飯では間に合わないのかも。
セイは試しにぬーちゃん達にやるように妖力を注いでみた。
おっ、なんか元気な顔になってるような気がする。そういや妖力ってなんなんだろうな?妖怪達のエネルギーになるのはわかってたけどヘスティアにも効いてるところをみるとエネルギーそのものなのだろうか?もしそうだとしたら俺のこのエネルギーはどっから来てるんだ?だるくなったりするなら自分自身のエネルギーなんだろうけどそんなのないしな。
グリンディルはぬーちゃんと反対側でゴロンと寝転がり、ウェンディ、ヘスティア、俺、ぬーちゃんの並びだ。
「セイ、あんたずっとヘスティアに触れてるけどなにしてるんだい?」
「なんか疲れてたからさ、妖力を流してみたら回復してるっぽいんだよね」
「妖力?」
「そう、ぬーちゃんが疲れた時とかに流したり、サカキが本来の力を出す時に注いだりするんだよ。言い方は悪いけど妖怪達の餌みたいな感じ。ひょうたんの中はその力が満ちてるから皆中に入ると回復していくんだよね」
「へぇ。そんな事ができるんだねあんた」
「陰陽術とかもこの力を使うんだけどね。よくよく考えてみると何なんだろうねこれ」
「自分の生命エネルギーとかじゃないだろうね?」
「こっちは疲れたりとかしないんだよ。サカキとか底なしだから途中でやめたりするけどね。ヘスティアも底なしだよ。ずっと吸収していくよ」
「へぇ」
「ずっと外界にいるからエネルギー補給があまり出来てないのかもね。天界って神様達にとって妖怪のひょうたんみたいなものなのかな?」
「わたしもさすがに天界は行った事がないからね。ヘスティアが起きたら聞いてみな」
グリンディルもヘスティアといる時間が長くなったからなのか様付けしなくなったな。
「さ、もう寝ようか。ドラゴン狩りは明日になるか明後日になるかわかんないけど備えておかないとね」
「うん、おやすみ」
セイもゴロンと寝転びながらもヘスティアに妖力を流し続けてみた。どこまで吸うのだろうか?
そう思うけど眠くなってくるとじっと触ってるのもつらいので自分の手の上にヘスティアの頭を乗せた。
そしてそのまま意識を手放したセイ。
朝起きるとセイはヘスティアを腕枕しているような状態だった。ヘスティアがこっち向いてたらもっと驚いたかもしれない。
結局途中で寝たのでどこまで妖力を流したのかわからないけどかなりの量を流したの事に間違いはない。
起きたらぬーちゃんがズルいといったのでたっぷり妖力を流しておいた。
まだ寝ているヘスティアの顔を見るとなんかツヤツヤしてるから回復したのだろう。
まだ皆が寝ているのでぬーちゃんとキャッキャウフフしていたらグリンディルが起きた。
「あんたいつも早くに起きてるね」
「皆で寝たからかな?安心してぐっすり寝たのかもしれない。ウェンディにも乗られてなかったからスッキリ起きれたよ」
そして簡単な朝ご飯を用意しているとヘスティアが起きた。
「あーっ、なんかスッキリしてんぜっ」
「そうか。今日も作業になるから頑張ってくれよな」
「おうっ。なんか今日は一発でやれそうな感じだ」
そう言ってぐるぐると腕を回す。
張り切ってくれるのはいいけど、山が消えたりしないよね?
ウェンディはなかなか起きないからこのまま寝かせておく。ヘスティアがトンネルを開通させるまでどうせすることがないからな。
イフリートもいつの間にか外で立って待っていたのでヘスティアはちゃちゃっと朝ご飯を食べてイフリートのケツを行くぞっと蹴っ飛ばしてトンネルの奥へと消えていった。
それを見送ったあと、ウェンディってよく寝るよな?と寝顔を眺めてみる。なんの不安も無さそうな顔で寝ているウェンディ。もう神様に戻る気なんてないんじゃなかろうか?
お昼前になってやっと起きた。
「ごはん」
いきなりそれか。
マットレスを片付けて昼飯の準備。ウェンディにはジュースを飲ませておく。
喉も乾いていたのかコクコクと美味しそうに飲んでいく。
「もっと飲むか?」
「飲む」
そして昼飯ようにサンドイッチの準備。ハムとタルタル卵のサンドイッチだ。ゆで卵を潰してマヨと和えただけのやつ。
「セイー、お肉も入れて」
とハムが入っているのに肉を入れろとぬーちゃんに言われてしまったので虎の子のベーコンを炙って挟んだ。もうなくなっちゃうんだよな、カントの奥さんのベーコン。肉屋のベーコンも旨いけど、奥さんのは特別に旨い。食べ比べるとよくわかるのだ。
「このベーコン美味しいねぇ」
「これ、ボッケーノの領主街ギルドマスの奥さんのお手製のベーコンなんだよ。売ってるのよりずっと美味しいよね。シチューとかも美味しいし」
「悪かったね、わたしのシチューは美味しくなくてさ」
途中で何回かグリンディルが作ってくれたけど、冒険者飯だったのだ。材料は提供したのに食べると冒険者飯だったのだ。
「旅先だから仕方がないよ。でもパンを焼くの上手だよね」
そんなことないよと言うのが正解の答えなのだろうけど、そんな事あるからな。
でも鉄鍋でグリンディルが焼いてくれるパンはとても美味しいのだ。このサンドイッチもロールパンみたいなパンでグリンディルが焼いたものだ。
ウェンディはタルタル卵でベチャベチャになった手をまた毛布で拭きやがった。こら、口も拭くな。
一通り食べ終わった頃にヘスティアがご機嫌で帰ってきた。
「貫通してやったぜ」
「おめでとう。サンドイッチ出来てるよ。イフリートは?」
「帰ったぞ」
そんなにヘスティアと一緒にいるのが嫌なのかイフリートよ。
結局イフリートの分はぬーちゃんが平らげ、サカキとクラマも呼び出してから出陣となった。
「セイよ、このトンネルからは他の巣とは比べもんにならんくらい嫌な空気が流れてくるのぅ」
「ドラゴンの住処に繋がった証拠だね」
クラマはトンネルの中の空気も薄いんじゃないかと言って羽うちわでバッサバッサ仰いでいく。
「うむ、押してくる嫌な空気の方が強いの。向こうまで抜けた感じがせぬわい」
クラマの感覚では浄化の風も途中で止まったかもしれないと言う。
「ウェンディ、このトンネルに一発ドカンとやってみてくれ。ヘスティア、トンネルは焼き固めてあるんだよな?」
「おうっ、溶けて固まってるぞ」
なら大丈夫だろうな。
「えーっ、面倒臭い」
こいつ・・・。いつもならいらぬときにぶっ放すくせに。
「そうか、ヨシヨシが足らないのか」
と手をワシャワシャして見せるとビクッとして風を出す構えを見せた。
「くらえっ、かまいたちっ」
「バカッ、竜巻にするんじゃ・・・」
ねぇーーーーーっ
という声と共に巻き込まれるセイは空高く洗濯物太夫になっていった。




