表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~  作者: (=`ω´=)
〔二千十六年度、智香子、中等部二年生編〕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

343/358

折衷案

「黎ちゃんも、将来的には学校の経営に関わるようになるの?」

 智香子は、ふと思いついた疑問を口にしてみた。

「それは、ないかな」

 黎は即答する。

「うちは、本家からかなり離れた家柄だし、それを抜きにしても、そういうのに自分が向いているとも思えないし」

「田舎でもないのに、本家とか分家とかいう言葉がさらりと出て来るのが凄いなあ」

 佐治さんは素直に感嘆している。

「今時、そういう世界もまだ残っていたんだ」

「もう二十一世紀だっていうのにね」

 黎は、苦笑いを浮かべながら、そういう。

「うちの場合は、大きすぎる利権を持っているがために、親類同士が結束する場面があったからそうなっているんだと思う。

 迷宮の所有権についても、長いこと国と裁判をやってどうにか確保したそうだし」

「ああ、それは、聞いたことがある」

 香椎さんがいった。

「各迷宮の地権者たちと、迷宮を完全に国有化したい国とが長い時間をかけて争っていた、って」

「国としては、なにかと口実を作って完全に迷宮を召しあげる方がずっとやりやすかっただろうしね」

 佐治さんがいった。

「でも、そうか。

 裁判までやってたのか」

「弁護士団を組織して、場合によっては海外からも圧力をかけてもらって、最終的には、どうにか今の体制に落ち着くわけだけど」

 黎は、淡々とした口調で説明をする。

「揉めている最中は、いろいろと大変だったみたいだね。

 そのおかげで、うちの親戚連中の結束は固くなったみたいだけど」

 そんな感じなのか。

 智香子は、心の中で素直に感心をしていた。

 この黎が、学校の経営者一族と縁続きでなければ、智香子など、到底が知るはずもない情報といえた。

 いや、古い本とかの中には、そうした事情について記したものもあるのかな?

 その辺は、詳しく調べてみないことにはなんともいえなかったが。

「面白いなあ」

 香椎さんが、妙に感情のこもった声を出した。

「迷宮は私有地の中にあり、それを国が統括する公社が管理している。

 そういう体制を、わたしたちは当然と考えているけど、実際にはそうなるまでにはそれなりのいきさつがあって、そうなっているわけで」

「わたしたちが生まれるずっと前のことばかりだから、わたしたちがそれを当然と捉えても無理はないと思うけど」

 佐治さんは、その言葉の先を引き取る。

「当時の人たちが葛藤をして、関係者同士が相互に働きかけを行った結果、今の形に落ち着いたわけで」

「迷宮からはなにが出て来るのかわからないから」

 黎は、説明を補足した。

「その迷宮を、たかだか極東の一国に管理させておくのは、かなり危険だって煽ったみたいね。

 その当時の、うちの親戚たちが」

「迷宮が見つかった頃っていうのは、この国が戦争に負けたばかりの頃だからなあ」

 佐治さんが、感心したように呟いた。

「戦勝国の側が、国を通り越して迷宮を丸ごと管理しようとしても、おかしくはない状況だったはずで」

「で、誰が管理してもどこからか文句が出て来るから、それならいっそのこと、私有地のままにして、誰でも入れるって形にしてはどうかと。

 迷宮が出現した土地の持ち主たちは、団結して各方面に働きかけたようなんだよね」

 黎が説明を続けた。

「ぶっちゃけ、どこかの勢力に独占されるよりは、そういう形にしておいた方が無難だと。

 そういう風に訴えて」

「ドロップ・アイテムの中には、それまでの物理法則をまるっと無視したような代物もあるしね」

 佐治さんがいった。

「この間の、〈チャクラム〉のように。

 それを誰かに独占させておいたら、確かに、かなりヤバい」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ