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女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~  作者: (=`ω´=)
〔二千十六年度、智香子、中等部二年生編〕

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学校側のフォロー

 週末を挟んで翌月曜日、世間では連休に突入していたわけだが、智香子は制服に着替えていつものように登校する。

 当然のことながら、いつもとは違って通学中の電車内は空いていた。

 補習かあ。

 車内のシートに腰掛けながら、智香子は思う。

 学習面のことまで学校側がフォローしてくれることは、ありがたいといえばありがたい。

 反面、煩わしく思うところもあった。

 帰還したばかりの時、公社側の智香子たちに対する扱いにも思ったことだが、大人たちは智香子たちを保護しようとはしている。

 心身両面における点検が必要だと判断すれば、智香子たちの心情には構わず断行するし、今回の補習についても、同じようなものだ。

 一方で、そうした施策を智香子たちがどのように受け止めるのかは、あまり頓着していない部分がある。

 大人がやることって、大体そうだよな。

 などと、智香子は思う。

 智香子たち、子どもの側がどう受け止めるのか、心情的な部分には構わず、大人側の都合だけを一方的に押しつけてくる。

 無論、そうした施策がそれなりの根拠、合理性から出ている場合が多いのも確かなのだが、だからといって智香子たちがそれを面白いと感じるかどうかは、また別問題である。


 登校した後、智香子が向かったのは自分のクラスではなく、普段委員会で使用している教室だった。

 ロストを経験した六人がその教室に集まり、そこでまとめて補習を受けることになっている。

 クラスも学年もバラバラな六人でも、一カ所に集めておいた方が指導する側もなにかと便利なのだろう。

 それに。

 と、智香子は思う。

 補習といっても、大半は自習であり、教師の側は疑問点に答えるなど、最低限のことしかしてくれないはずだった。

 連休中に登校している教師もそれなりにいるはずだったが、おそらくは交替で、当番制かなにかで学校に出ているはずであり、平日のように人手が十分に足りているわけでもない。

 六人生徒の中で智香子が一番最後に到着した。

 智香子が着いた時、他の五人はすでに揃っており、十分な休養を取ることができたのか、全員元気そうだった。

 それが確認できて、智香子は安堵する。

 挨拶の声を掛け合い、智香子はいつも使っている席に座った。

「休めた?」

「ずっと寝てた」

「こっちもそんなもん」

「自覚していた以上に、疲れていたみたいだね」

 仲間たちと、そんな会話を交わす。

「補習ってなにやるんだろうね?」

「大半、自習だと思うけど」

「自宅でやる課題でもよかったのに」

「一カ所にまとめておいた方が、教える側も都合がいいんじゃない?」

「丸一週間分、授業を受けられなかったからなあ」

「全教科で、というと、ちょっと大変だよね」

「うちの授業、密度濃いからなあ」

「ペース速いよね」

「普通にしていても着いていくのが大変だし」

 などといった、あまり内容がないやり取りをしているうちに、プリントの束を抱えた勝呂先生が入ってくる。

「はい、全員揃っているね」

 ジャージ姿の勝呂先生は、智香子たちを見渡してからそういった。

「じゃあ、今からプリント配るから。

 これで、先週、授業で進んだ分をしっかりと確認してください。

 質問などがあれば、後で来る教科の先生に質問をすること」

 だいたいは自習になるだろう。

 智香子もそう予想はしていたので、こういわれても特に抵抗は感じなかった。

 配られたプリントにざっと目を通してみる。

 どうやら、授業の内容を段階的に、進行状況を確認しながら進められるようにまとめてくれたらしい。

 親切というか、妙なところに手をかけてくれるなあ、と、智香子は感心する。

「じゃあ、早速開始して」

 勝呂先生は、智香子たちにそう告げる。

「自分のペースで進めて構わないから」

 これなら、このプリントだけ貰って自宅で学習してもよかったのでは?

 などと、思わないでもなかったが、智香子は素直にプリントを広げ、自習を開始した。

 学校側としては、ロストを経験した生徒のフォローをした、という実績が欲しいのかも知れなかった。


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