11話 疑問
「クリス様、申し訳ありません。この中に私の望む答えはないようです。もう少し、考えさせてください。」
「そう、わかったわ。しばらく無所属ということにしましょう。スミレ、あとはお願いね。」
眼帯のメイド、スミレは主人の命令に綺麗な礼をして言う。
「お任せくださいませ、主様。」
その返事にクリスティーアはニコリと笑って答える。
その後、この部屋からつながっている4つの長い廊下のうち、一番奥の廊下を歩いていく。
スミレはそれを見送ると、こちらに振り返った。
「ルカ、あなたには部屋の案内と食事の用意をします。……主様の命令ですから……。」
「じゃあ、僕も部屋に戻ろうかな。またね、スミレさん、ルカちゃん。」
「はい、また明日、です。」
「主様に迷惑を掛けないのならば、また明日よろしくお願いします。」
スミレの返しにトーヤは苦笑いして、一番手前の廊下をまっすぐ進んでいった。
「それでは、行きましょう」
スミレはそう言うと部屋の隅に向かった。
「ルカは能力が不完全だと聞きました。」
スミレは手袋を取り、そこの床に手を置くと床のふちを指でなぞった。
真ん中あたりで手が止まった。
少し出っ張ってる部分に指をかけ、開く。
人が一人通れるくらいの隙間があった。
「ここを下りて、真っ直ぐ降りると広い空間があります。能力の訓練ならそこで。くれぐれも庭や外ではやらない様に。」
「外では、何でダメなんですか?」
「この建物は、金持ちのお嬢様が実家が嫌になり飛び出して、隠れ家にしているという設定です。そんな家の庭で能力の訓練何て誰もしません。それに能力はとても珍しいのです。あんたの力なら100%、狙われますよ。」
最後にはあんた呼びだ。
薄々気づいていたがこのメイド、クリスティーア以外敬う気がないらしい。クリスティーアがいなくなった瞬間から明らかに力が抜けている。
そんなスミレの忠告にルカは無言で頷いた。
「それでいいです。次行きますよ。」
ーーーーーー
「はあ、疲れた。」
ルカはベッドに倒れこんだ。
あの後、スミレから食堂の場所、トイレの場所、風呂の場所を教えてもらった。
この世界に風呂まであるとは思わなかったが、思った以上に快適だった。
ベッドもふかふかだし、ご飯もおいしかった。
この世界、想像以上に過ごしやすいのかもしれない。
ルカは寝返りをうって考える。
例えば、能力を暴走させてた少年。
スミレは言った。能力の珍しいと。
アーロンやクリスティーアは言った。能力を発現させるには強い意志がいると。
ルカの目から見て、あの少年にそんなものはなかった。
そして、ルカ自身にもなかった。
例えば、正義科幹部のトーヤ。
スミレと彼の白髪の違いを比べてみた。
スミレの髪は艶があり、しっとりしていた。
トーヤの髪は艶がなく、ぱさぱさしていた。
トーヤの眉毛やまつ毛は黒だった。
スミレは白だった。
トーヤの髪は、まるで染めているようだった。
そこまで考えると、ルカはそのまま眠りについた。




