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第九十話 アマテラス




 日が完全に昇り、日本国民がお雑煮とおせちを食べている午前8時頃。俺と涼太は『ブレックファスト』という名の昼食を取っていた。


 ちなみに、朝食は午前3時ごろに済ませている。


「なんか、お正月にピザとハンバーガーって罪悪感があるよね」


 涼太が、コーラを片手にそんなことを言う。

 いつからアメリカ人になったのかは知らないが、是非とも健康には気を付けていただきたい。


「確かにな。でも、食べながらしゃべるな。行儀が悪いぞ」

「おっと、ごめんごめん」


 笑いながら、涼太はピザを飲み込む。


 そんなふざけた会話をしている裏で、自衛隊がどんどんと撤退していく様子が、モニターに映し出されていた。


 一時間ほど前、自爆ドローン『トンボ』を放ったことで、自衛隊の第一空挺団を撤退させることに成功した。


 少し犠牲者を出したものの、爆発距離を10メートルにしたことで、想定されたよりかは犠牲者は少なかった。

 だが、それでも犠牲者は犠牲者だ。致し方ないとは言え、お悔やみを申し上げるとしよう。


 そんな大戦果とも言える『トンボ』は、性能試験として満点の結果を残した。


 トンボとしての優秀な空力的飛行性能。

 そこにAI『オーディン』による完全制御『O.I.D.S(Odin Integrated Drone Swarm)』システムを搭載することで、何万匹と言うトンボを1個の生物のように動かす事に成功した。


 さらにそれだけでは無く、トンボには他にも優れた技術がある。

 それが『複眼型・多機能カメラ』と『魔石式・小型爆弾』だ。


 『複眼型・多機能カメラ』は赤外線・可視光線・X線カメラの情報を複合的に解析し、目標を補足する機能を持つ。

 『魔石一式・小型爆弾』は、粒状にした魔石に爆発の魔法を付与した『魔道爆弾』だ。

 この爆弾の威力は、6階層の魔石を使用した場合、たったの5グラムで手榴弾ほどの爆発を生じさせる。


 こうしたハイテクな複数の技術を統合し、小さなドローンにしたのが、この『トンボ』なのだ。


 そして、勘のいい人ならもう気づいているかもしれない。

 爆弾にわざわざ『魔石』を使用しているこの兵器が、対モンスター用兵器であることに。


 そもそも、この『トンボ』も『不可侵領域』も『アマテラス』も、全部が対モンスター用兵器なのだ。

 それなのに、まさか最初に使う相手が人間になるとは、思ってもみなかった。


「でも、アマテラス、ちゃんと動くかな?」


 涼太はピザを飲み込みながら、ぽつりとつぶやく。

 確かに、試験運用どころか、テストすらしていない兵器だ。上手く動くかどうかは、神のみぞ知っている。


「……さぁな。でも、多分ちゃんと動くと思うぞ。神である俺が保証してやる」

「何とも御利益のなさそうな神様だね。でも、そう願うよ」



~~~



 和やかに笑い合う正吾たちとは対照的に、自衛隊は今、総力を挙げて撤退作戦を進めていた。


 総撤退をしている中でも、特に数の多い陸上自衛隊は混乱を伴い、各地で支障が生じている。

 その報告を無線越しに聞いていた遠藤幕僚長は、刻一刻と迫る時計の針を見つめた。


「……あと、20分か」


 現在の時刻は8時40分。

 アルカディアからの予告された時刻まで、残りわずかしかない。


「……陸将補、現在の撤退の進捗度を報告したまえ」

「は!」


 陸将補はタブレット作戦地図に投影された人工衛星画像を指し示しながら、即座に答えた。


「第一空挺団の撤退は7割ほど完了しました。このまま順調に進めば、9時ギリギリで撤退を終えられる見込みです。海自の退避もすでに完了していますが……現在、問題となっているのは砲兵隊を中心とする陸自部隊です」

「……やはりネックはそこか」


 日本各地から集められた砲兵隊は、ただでさえ指揮系統が混乱しやすい。

 加えて、3万人近い人員を短時間で移動させるとなれば、必然的に混乱は避けられない。


 結果として、撤退完了率はまだ6割程度にとどまっていた。


「……あと20分で撤退は完了できるのか?」

「いいえ、残念ながら難しいでしょう。予測では、8割程度が限界かと」

「……」


 陸将補の報告は、遠藤幕僚長の予想と一致していた。


 8割というとほとんど撤退が済んでいるように聞こえるが、それでも6,000人ほどが取り残される計算になる。


「……他に打開策はないのか?」


 遠藤幕僚長の言葉に、陸将補は間髪入れずに答えた。


「はい、1つだけ対策があります」

「……1つとは何だ?」

「指揮系統を放棄し、中隊もしくは小隊規模での判断による……退避です」

「「「な!」」」


 陸将補の発言に、幕僚たちは息を呑む。それは遠藤幕僚長も同様だった。


 指揮系統の放棄。つまり、統率を失い、各部隊が個別の判断で撤退するということだ。

 確かにそれを実行すれば、部隊ごとの迅速な撤退は可能になるかもしれない。

 しかし、統制が取れない状態では混乱がさらに深まり、場合によっては組織的な崩壊につながる危険性もある。


「……それはあまりに危険すぎる」


 低く、しかし確固たる声で遠藤幕僚長は言う。それに幕僚たちも同意するように頷いた。


 だがしかし、陸将補は迷いのない目で言い返す。


「ですが、幕僚長。このままでは確実に数千人が取り残されます」


陸将補は、迷いのない眼差しで遠藤幕僚長を見据えていた。 


「このまま指揮系統を維持しながら撤退を続ければ、時間切れとなる可能性が高い。しかし、各部隊の判断に委ねれば、一部は混乱するかもしれませんが、それでもより多くの部隊が迅速に離脱できるはずです」

「……その混乱が、さらなる犠牲を生む危険性があるのではないか?」

「考慮しました。しかし、この状況では迅速な撤退が最優先です。統制を維持することにこだわり、結果として取り残される部隊が増えるよりは、少しでも多くの隊員を救う可能性に賭けるべきかと……」


 遠藤幕僚長は厳しい表情で時計を見た。


 午前8時45分。残り……15分。


 もしも撤退が間に合わなければ、何が起こるか、どうなるか予想すらできない。

 考えうる最悪としては、その地域に居るすべての人間が死滅してもおかしくはない。


 で、あれば、なるべく多くの隊員を地域外に退避させるべきだろう。

 しかし、それでも陸将補の案はリスクが高すぎる。


「……」


 だが、考えている余裕は無い。

 1分1秒を争う現在において、それは愚行を越えて、犯罪的な無為無策に他ならない。


 そして、リーダーである以上は決断をしなければならない。

 その先にどんな結末が待っていようとも……だ。


「……やるしか…ないか」


 小さくつぶやいたその声に、幕僚たちは息をのむ。

 遠藤幕僚長は深く息を吸い、決意を込めて言い放った。


「陸将補の案を採用する!」

「幕僚長!」


 幕僚の一人が声を上げかけたが、遠藤幕僚長は目で制止した。


「……失礼しました」


 遠藤幕僚長は、他の幕僚たちにも目配せをし、異論がないことを確認する。


「もう時間がない。一か八かで、作戦としては恥ずかしい限りだが、1人でも多く助けられるのであれば、私は博打を打つべきだと思う」


 もはや誰も異論を挟まなかった。


「全通信系統を開け。各部隊に通達。指揮系統を一時的に解除し、中隊・小隊単位での即時撤退を許可する!」

「了解!」


 オペレーターたちが一斉に端末へ手を伸ばし、命令を次々と打電していく。

 司令部の空気が張り詰めた緊迫感に包まれる。


 この判断が正しかったのか、それとも誤りだったのかは、誰にもわからない。


「……どうか、間に合ってくれ」


 それは『神』のみぞが知る。



〜〜〜



 しばらくの時が過ぎ、自衛隊の撤退が9割方完了した頃、俺と涼太は無言でモニターを見つめていた。

 先ほどまでの軽口は影を潜め、部屋には緊張した空気が漂っている。


「そろそろ時間だ。『アマテラス』の試射を行う」


 俺の言葉に、涼太は『やっとか。ワクワクするね!』と言いながら背伸びをした。


「では涼太。アマテラスを起動してくれ」

「OK、アマテラス起動するね」


 涼太はAI『オーディン』から『アマテラス』へとアクセスし、そのシステムを起動させた。

 モニターには、高速で流れるプログラムが、画面を埋め尽くす。


 そして数分後、モニターに映し出された数値はすべて正常値だった。


「問題ないね。起動したよ」

「よし。では、『アマテラス』と『八咫鏡やたのかがみ』をリンク」

「OK……八咫鏡のリンクに成功したよ」


 アマテラスの子機である八咫鏡とのリンクが確立される。

 これにより、現在メキシコ上空を太陽同期軌道で飛んでいるアマテラスと、日本上空の太陽同期軌道で飛んでいる八咫鏡が、複数の中継器を通す事で接続された。


「……では、これから試射を試す。目標座標は、アルカディア人工島から10キロ南の海域。発射時刻は9時ちょうど。発射エネルギーは1秒、照射時間1秒。モードはCO2レーザー」

「了解。9時の1秒1秒、CO2レーザーね」


 涼太はキーボードを操作し、必要なデータを入力していく。


「OK、セットアップ完了だよ」


 ……これで、準備は整った。

 あとは、時計の針が運命の刻を指すのを待つだけだ。


「……でも、待ってるだけだと、なんだか緊張してきたよ」

 

 涼太がふっと苦笑するように言った。


 しかし、それも無理はない。アマテラスの試射どころか、完成したのも1週間前の話だ。

 そして、なによりも宇宙というまったく異なる環境での運用となる。

 理論上は完璧でも、実戦でどうなるかはわからない。


 時計に視線を落とせば、表示は『08:59』を示していた。


「……そろそろだな」

「うん……」


 体感時間はゆっくりと進み、10秒が1分にも感じる。


 我ながら緊張している事に内心苦笑しながらも、心を落ち着けるように息を深く吸い込んだ。


 時計の長針は55…56…57…58…59…と時を刻んでいく。

 そして、9時00分00秒になった瞬間……太陽神が目覚めた。


 太陽同期軌道上に存在するアマテラスは90分で地球を一周する。

 その速度はすさまじく、毎秒7.5キロメートルと言う超スピードで宇宙空間を飛んでいる。


 それ故に、八咫鏡が常に角度を変え標準を合わせ続けた。


 そして、アマテラスから八咫鏡へと1秒間の光が照射される。


 もっとも、その光が人間の目に見えることはない。

 アマテラスが放つのは中赤外線であり、可視光よりもはるかに長い波長だからだ。


 だが、その不可視の光は、とてつもないエネルギーを秘めていた。


 不可視のレーザーは宇宙空間を光速で飛び、八咫鏡がそれを受け取る。


 受信した八咫鏡は、即座に次の八咫鏡へとCO2レーザーを転送した。

 2つの中継地点を経由し、光はついに7500キロ離れた日本上空の太陽同期軌道にある八咫鏡へと到達する。


 日本上空の八咫鏡は、送信された座標に向けてCO2レーザーを照射した。


 秒速30万キロメートルで放たれた光は、猛烈な勢いで地球へと落下していく。

 大気が濃くなるにつれ、空気中の水分や塵との反応により、強いプラズマを発生させながら突き進む。


 そして、2.67ミリ秒(0.00267秒)というあまりにも短い時間で海へと到達した。

 6.7テラジュールもの膨大な熱エネルギーによって海水は瞬時に気化し、水蒸気爆発を起こす。


 最初は、水中に広がる衝撃波だった。

 爆心を中心に海面が白く変色し、真円を描くように泡と衝撃波が広がっていく。


 瞬く間に白い幕が周囲を包み込み、視界を覆い隠す。

 わずか数秒で、爆心地は巨大なベールに包まれた。


 さらに数秒後には、白い幕が徐々に拡散していき、空へと昇る水柱が露となる。

 300メートルにも及ぶ巨大な水柱の姿は、10キロ離れたアルカディア人工島からも目視することが出来た。


 だが、そんな天にも昇る水柱も、重力に引かれて崩れ始める。


 飛沫が周囲へと降り注ぎ、空に漂っていた海霧が風に流され、ようやく視界が開けてきた。

 しかし、水柱が残留しており、未だ大爆発を感じさせている。

 

 そして、爆発から約30秒後。

 遅れて届いた空気が、アルカディア人工島を揺らした。


 低い重低音が心臓にまで届き、音と共に吹き込む潮の匂いが肺を満たす。


 凄まじい光景だった。


 海に穿たれた一瞬の穴。それを埋めようと押し寄せる波。立ち上る白煙。飛沫。地鳴りのような音。

 すべてが、たった1秒の照射によって引き起こされた現実だった。


「「……」」


 その光景を目の当たりにした俺たちは、言葉を失っていた。


「……うわぁ……想像以上の威力だね」

「……これで最低出力なのか……」


 俺と涼太が驚愕の表情を浮かべる。


 最低出力でTNT換算1.6キロトンの兵器だ。

 もしも出力を上げたら、ここら一体が吹き飛びかねない。


「……核爆弾が各国で封印されてる理由が、よくわかるよ……」


 涼太の呟きに、俺は深くうなずいた。


「確かに、『アマテラス』は熱核兵器レベルの代物だ」


 少し説明が遅れたが、ここで『アマテラス』について改めて説明しておこう。


 この兵器の正式名称は『太陽光エネルギーレーザー兵器』と言う。


 アマテラスは、高度800キロメートルの太陽同期軌道上に存在している。


 本体のサイズは、中心に直径3メートルの赤い球体を備え、周囲には直径10メートルほどの輪状の構造体が接続された形状をしている。


 そして、この赤い球体はアマテラスの本体であり、この兵器の中核となっている物。それが『圧縮魔石』だ。


 圧縮魔石とはその名の通り、魔石を高温・高圧・高密度魔力によって、融解・融合させ、巨大な1つの魔石としている人工魔石だ。


 言わば、超濃縮された魔力蓄積体であり、そのエネルギー容量は桁違いである。


 これは余談だが、この圧縮魔石を作るためには、7階層に出現するテラポイズンスライムの魔石が1万個ほど必要だった。

 もちろんすべて手作業で採取したものであり、そのせいで俺と玲奈は、朝から晩までひたすら魔石を集める羽目になったのは、また別の話。


 閑話休題。


 とにかくとして、直径3メートルの超巨大な圧縮魔石は、その容積に比例して膨大な量の魔素を蓄積可能だ。

 数値に換算すれば、その貯蔵量はなんと『500ペタジュール』に達する。

 ペタとはテラの1000倍。あまりに単位がデカすぎて、もはや日常生活では使わない単位だ。


 だが、これほどのエネルギーを蓄えることができたとしても、当然ながら『それだけの膨大なエネルギーをどうやって集めるか?』という問題がある。


 そこで様々な案と否定を繰り返した結果、涼太とAI『オーディン』が考え抜いて出した答えが『熱エネルギーを魔素として変換できるのではないか?』というものだった。


 魔素がエネルギーとして様々な作用をもたらすのならば、逆にエネルギーを魔素に変換できるのではないか?と言う仮説に基づき、『熱変換魔法』を編み出した。


 しかしながら、また新たに問題が浮上する。

 それが、『500ペタジュールものエネルギーをどうやって収集するのか?』という、物理的な規模の課題だった。


 仮にだが、宇宙空間にパラボラアンテナ状の集光装置でエネルギーを集めたとしよう。

 その場合、必要な口径はなんと直径135キロメートルに達する。


 どんなに非常識な手段をもってしても、そんな規模の構造物は建造不可能だ。


 この問題を解決するために開発されたのが、『フレネルレンズ式・太陽光集約魔法』という魔法技術である。


 この魔法は低魔力で稼働しつつ、大規模な面積で光を一点に集めることが可能であり、従来のレンズでは得られなかった集光効率を実現した。


 しかし、それでも500ペタジュールものエネルギーを集めるのは難しい。

 故に、最後の最後は力ずくで解決することにした。


 フレネルレンズ式・太陽光集約魔法を直径5キロメートルまで拡大。

 さらには八咫鏡にも500メートルのフレネルレンズ式・太陽光集約魔法でエネルギーを集め、アマテラスに逆送信することで、1日あたり10ペタジュールという莫大なエネルギーを確保する事に成功した。


 これで、500ペタジュールのエネルギー問題は解決したが、また新たな課題が浮上してくる。

 それが、『兵器をどうやって正確に目標へ向けて照射するか?』という制御の問題だった。

 

 これはすべての人工衛星の欠陥なのだが、衛星軌道上を飛行する物体は、地球の重力と慣性の法則に従って飛ぶだけで、自由な操作は一切できない。

 つまり、目標地点が真下に来るタイミングを『待つ』しかなかったのだ。


 これではあまりにも使い勝手が悪すぎる。


 この致命的な制約を打破するために開発されたのが、『八咫鏡やたのかがみ』だ。


 八咫鏡はアマテラスの縮小版で、直径30センチの圧縮魔石を中心に、ジャイロ式の姿勢制御機構、通信装置、そして高精細光学カメラを備えている。

 これも小規模な『熱変換魔法』によってエネルギーを得て稼働しているのだが、あくまで八咫鏡は『中継機』だ。


 もちろん、これも独立稼働型の小型衛星ではあるが、アマテラスとは異なり、自らが直接攻撃するわけではない。

 八咫鏡の役割はあくまで中継機であり、アマテラスから放たれたレーザー光を受け取り、標的へと誘導するシステムだ。


 だが、地球全土を覆う『中継網』は並みの数では構築できない。


 八咫鏡がその機能を果たすには、地球全土をカバーできるだけの数が必要であり、なおかつ常に最適な位置に配置されていなければならない。

 そのため、AI『オーディン』で軌道配置演算を行い、最も効率の良い衛星軌道を導き出した。


 その結果として決定されたのが、太陽同期軌道6本、準極軌道4本、赤道軌道1本という計11本の軌道上に、それぞれ20機ずつ、合計220基の八咫鏡を宇宙に打ち上げることだった。


 これによって、地球上のあらゆる地点に対して、常にレーザーを届かせることが可能となり、まさに『天空を統べる神の目』とも言えるシステムが完成したわけだ。


 だが、当然ながら八咫鏡にも制限は存在する。


 まず、エネルギー容量。

 アマテラスに搭載されている圧縮魔石は直径3メートル。対して、八咫鏡の魔石は直径30センチ。

 単純な体積比でいえば、1334倍もの差がある。


 これが何を意味するかというと、アマテラスに蓄えられる500ペタジュールの内、1334分の1に相当する374テラジュールしか八咫鏡は1度に受け取ることが出来ないと言う事だ。


 もっとも、この数字を聞いてもピンと来ない者も多いだろう。正直、俺自身もそうだ。


 なので比較してみよう。


 たとえば、1945年に広島へ投下された原子爆弾『リトルボーイ』のエネルギーは、TNT換算で15キロトン。ジュールにすれば62ギガジュール(0.069テラジュール)に過ぎない。


 さらに、史上初の熱核爆弾の『マイク実験』で使用された熱核爆弾の威力はTNT換算では10.4メガトン(10,400キロトン)。ジュールに直せば43ペタジュールとなる。


 そして、熱核兵器の中でもダントツの威力を持つ『ツァーリ・ボンバ』の威力はTNT換算50から100メガトン。最大数値で計算すると、418ペタジュールだ。


 ……気が付いた人も居るかもしれないが、アマテラス本体はツァーリ・ボンバと同等以上の最大級熱核兵器に匹敵する

 一方の八咫鏡ですら、『リトルボーイ』5000発分のエネルギーを単独で扱えることになる。


 だが、真に恐るべきはその『威力』ではない。


 アマテラスは、太陽エネルギーを魔素へ変換することで、500ペタジュールもの膨大なエネルギーを、たったの50日で充填可能。

 それにより、八咫鏡を介して1日あたり数十発、何百発もの戦略級攻撃を世界中どこでも、即座に、絶え間なく撃ち込むことができるのだ。


 しかも、発射から着弾までの所要時間は、0.01秒未満。

 これでは、防衛も回避もできるはずがない。


 そして、当然アマテラスの防御面にも抜かりはない。 


 アマテラス本体には、常時『不可侵領域』が展開されている。

 さらには、AI『オーディン』とリンクしており、不審なミサイルが発見されれば、自動的にレーザーが照射されてるように設計されている。


 これがアマテラスのスペックなのだが、文字通り3日もあれば、世界を破壊しつくす事すら可能な兵器なのだ。


 とはいえ、これは『やりすぎ』だと思われるかもしれない。

 だが、時代が変わり、世界が激変していく中で、俺たちが生き延びるためには、全力で備えるしかなかった。


 でなければ、淘汰されるのは自分たちの方なのだから。


「……さて、問題なく動作したようだし、そろそろ始めるか」

「衛星画像では、全部隊の退避を確認済みだよ」

「わかった」


 俺は、モニターに映る衛星画像を見ながら言った。


「……では、攻撃を開始してくれ」


 その瞬間、AI『オーディン』によってターゲットがロックオンされ、次々と神の雷が大地へと降り注いでいった。




『O.I.D.S(Odin Integrated Drone Swarm)』

日本語に訳すと『オーディン統合ドローン群』。


『犯罪的な無為無策』

幼女戦記のターニャが放った言葉。この言葉かなりお気に入りだったりする。


『太陽同期軌道』

人工衛星が地球を回る軌道に一つで『いつも同じ太陽の角度で地球を観察できる』と言う利点があります。

今回は、アマテラスが常に太陽の光を浴びていてほしかったので採用しました。


他にも準極軌道や赤道軌道がありますが、どれも低空を飛行する人工衛星です。

ちなみに、ISS『国際宇宙ステーション』もこの太陽同期軌道です。


『CO2レーザー』

10.6マイクロメートルの中赤外線で、人の目には見えません。

非常に強い出力で、切断、溶接、医療用途と、様々な事に使われています。


『フレネルレンズ』

フレネルレンズは、レンズを『段階的』に薄くした設計を持ち、普通のレンズと同等の集光効果を、ずっと軽く・薄く・広く作れる光学技術です。


現実世界でも灯台や太陽熱発電所などで使われています。


今回のアマテラスの計算式。


『アマテラス』

E=1,361 W/m²×19,634,954 m²×86,400 秒×0.8=1.84 PJ/日

太陽定数×面積×秒数×ロス


『八咫鏡』

E=1,361×785,398×43,200×0.8=36.77 TJ

36.77 TJ×220=8.09 PJ/日


『アマテラス』+『八咫鏡』

1.84 PJ+8.09 PJ=9.93 PJ/日

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