34.仲間との作戦会議
「結婚式だぁ?!」
昨日思いついた考えを、早速アーサスとゲネルに話した。2人には、いずれにしろ力を貸してもらう予定だった。案の定2人とも口をあんぐり開けて驚いている。
「いや、シェイン、昨日公衆の面前で「姫を抱きかかえた王子様」になっちまって、あれ以上のことはないだろうと思っていたが、俺が間違ってた!お前ってやつは人を驚かせる天才だな。知ってるか。もう城内はその話で持ち切りだ。ま、お前はリアの従兄ってことで、そこまで下世話な話にはなってないようだが」
アーサスはからかい口調で言う。
「けど、お前、本当に天才だよ。その案で決まりだな。やろうぜ、結婚式。俺たちも親友として見届け人として立ち会えばいい」
ゲネルも言う。
「ああ。それ以上のいい考えは思いつかない」
「それでな、ゲネル、実はお前に頼みたいことがある」
シェインは少し遠慮がちに言う。
「わかってるよ、シェイン。サージャだな?俺はお前の暗殺に失敗したと報告した。寝返ったとは思われていない。それを利用して情報提供の体で奴にご注進すればいいんだな?そうすれば多分直にカーサに届く。噂を広める必要もない」
「だが、信ぴょう性を高めるために、さりげない噂は下の者たちに少し流しておいた方がいいんじゃないか?」
アーサスは言う。しかし、ゲネルは渋い顔をする。
「あまり多くの人間に流布すると、後でシェインとリアさんの立場の回復が大変になるぞ?」
「いや、そこはあまり気にしないでいい。そもそも一番にカーサに知られなきゃいけない計画なんだから、守る立場なんて無いに等しいだろう。最初から捨て身の計画だ。心配するな。その覚悟はできている。リアだけは何としても守りたいが」
シェインはきっぱり言う。
「リアか。巫女が結婚式を挙げるというのは、もしかしたら彼女の方がやばいかもだな」
アーサスがさすがにまじめな表情になる。
「そうなんだ。だが、そのリスクを冒しても彼女もこの計画を実行すると言い張っている。確かにこれ以外のいい案もない。リアのことは、万が一、神殿を追放されるようなことがあっても、僕が絶対に守る。2人で他の街に行ってもいい」
「それは最悪のシナリオだけどな。何とか彼女の名誉は守る方向で考えていこう」
「もちろんだ。この計画は僕が勝手に立てて、彼女を無理やり巻き込んだ。一切の責任は僕にある。いいな」
*
「・・で、結婚式ってどういう風にするの?」
アリスが巫女が結婚式を挙げるという掟破りな話の衝撃から立ち直った後、リアに尋ねた。
「今のところ、特に何も考えていないけど。だって、大事なのは式自体じゃないし」
リアは生真面目な表情で答える。
「それはそうだけど、あんまりあっさりしすぎてるのも怪しまれるわよ。少なくとも人に見られた時に本当の結婚式と映る程度にはちゃんとしとかないと。計画の仕掛けとして、結婚式はとても大事なものよ」
アリスに言われてなるほど、と思う。
「計画を成功させるために、中途半端は許されないのね。わかったわ。じゃあ、どんな風にすればいいのかしら。私、結婚式なんて幼い頃に1,2回出たきりで、よくわからないの」
「そんなに難しく考えることないわ。公式のものではないんだし、リアの好きなやり方をしていいと思う。とにかく、幸せな雰囲気が伝われば十分役割を果たすんだから。必要なのは、夫婦としての誓いを述べること、立会人がそれを認めること。それだけよ」
「私の好きな結婚式・・?そんなこと言われても全く考えたことないもの。私には無縁だと思ってたから・・」
リアは本気で困惑してしまう。でもその時、ひらめいたことがあった。心の中で問いかけてみる。
(瑠璃子、聞こえるわよね?結婚式に何をすればいいと思う?)
なんとなくびっくりした雰囲気が伝わって来た。急に話しかけられて瑠璃子が驚いているらしい。けれど、リアが期待した通り、間もなく、頭の中に自分のでは絶対にない、初めて目にする映像が見えてきた。
「わぁ、素敵。花を摘んで束にして持つのね。あと、編みこんで花冠にも。ドレスは白くて繊細ね。きれいな薄いショールを頭からかぶるの?」
(ヴェール)
その薄いショールの名称なのだろう。単語が頭に浮かぶ。瑠璃子が教えてくれたらしい。
「ちょっと、リア、どうしたのよ?」
急に1人でしゃべりだしたリアにアリスが不審な目を向ける。
「瑠璃子に聞いてみたの。この前から瑠璃子の意識が前より更に近くなって来ていたから、もうお互いに考えを伝えあうことができるかと思ったの。やっぱりできたわ。瑠璃子の方からは単語とか瞬間的な映像で送られてくるわ」
アリスに答えてから、又瑠璃子の意識に話しかける。
「結婚式をシェインに提案してくれたのも瑠璃子ね。おかげで突破口が開いた。瑠璃子ってすごいのね。助けてくれてありがとう。結婚式の様子も素敵ね。5000年後はこういう結婚式をするのね。参考にしてみる。ありがとう」
リアはにっこり笑った。アリスはそんなリアを見て、
「なんだか、ますますぶっ飛んでいくわね・・」
とつぶやいた。




