26.ナイーシャの話
「初めまして。ナイーシャです。リアですね?懐かしいな」
彼も光人の姿だけど、リアに向けるシェインのまなざしを感じてリアはドキドキした。未来のシェインもやっぱり優しい。
「ごきげんよう。ナイーシャ。来てくれてありがとう。聞きたいことがあるんです。シェインにかけられた術のことなの。それを解くために、何かヒントになりそうな情報が欲しいんです。私にできることがあるか探したいの。瑠璃子のサポートもしたいし」
リアは一気にまくし立てた。リアは瞑想状態をそれほど長時間持続できるわけではないので、急いだほうがいいと思ったのだ。
「あぁ、あの術のことですか・・」
ナイーシャは自分にかけられた術のことを他人事のように頷いた。
「あの術エネルギーは、特に「来世の結婚」の妨害を目的に掛けられたものなので、当事者の瑠璃子は強く影響を受けています。そのせいで、その転生での私にまだ出会えていません。では、なるべく簡単に説明します。
まず、ああいう術というもの全般、どんな類のものであれ、太刀打ちできないものが一つだけあります。それは真実。真実にはどんな術も効かないのですよ。だから、まず、あなた自身が自分の真実をしっかり自分の芯に据えて行動することがとても大事になります。又、自分に決して嘘はつかないこと。人を騙したりしないこと。それを覚えておいてください」
説明の仕方がまるでシェイン本人が話しているようだ。リアは泣きそうになった。
「又、実は「術」全般、かけられていると見破った時点で、その力はだいぶ削がれます。けれど、術者への引け目や罪悪感があったり、自分の真実を自分で見つけていない場合はその限りではない。瑠璃子は自分の真実にほぼたどり着いていますが、私の魂はまだ術によって眠らされ、真実が見える状態ではない。
今回、私からの提案は2つです。
1つは、その眠らされた魂に向かって働きかけること。光を送るのです。これは瑠璃子の役割ですが、あなたとシェイン、そして私たちもサポートできます。」
確かに、それならリアたちにも手伝える。早速今夜からやってみよう。
「もう1つは、あなたの時代からしかできないこと。難しいですが、シェインへの術を無効化するのです。あの類の術は、かける時に光が一筋でも入れば無効になる。完全な闇の術だからです。術をかける瞬間を狙って、光エネルギーを混ぜ込むのです。」
こちらはかなり難易度が高そうだ。闇の術を無効化するなんて高等技術、リアは試したことがない。
「ですが、それにはいつ術を行うのか、知らなければなりません。魂の記録ではシェインが死ぬ直前の夜中となっているので、もうこの情報自体使えないでしょう。シェインが死ななかったから、カーサは余計躍起になって彼を苦しめる術をかけようとするはずです。・・リア、残念ながら私に手伝えるのはここまでです。どういう風に妨害を実行していくかはあなたが自分で考えなくてはなりません」
ナイーシャは、この前のラドゥと同じセリフで長い説明を締めくくった。
「ナイーシャ、どうもありがとう。おかげで少し見えて来たわ。どういう風にできるのかはまだ全くわからないけれど・・」
リアがお礼を伝える。やはり、事は簡単にはいかなそうだ。話を聞く前より、眉間のしわが深くなったリアを見て、ずっと話を聞いていたラドゥが口を挟んだ。
「リア、1人じゃないわ。あなたにはアリスがいるでしょう?きっと助けになってくれるはずです。あなたならできます。信じることを忘れないように。私たちはいつも繋がっています。緊急の時にはその光石を握って呼んでください」
「大丈夫、リア。僕も信じています。君ならできると」
ラドゥの温かい言葉とナイーシャの有益な情報を土産にもらい、リアは2人に別れを告げた。
*
リアの姿が消えてからも、ラドゥとナイーシャはまだその場に留まっていた。この空間は、正確には宇宙空間ではなく、ラドゥが作った仮想空間だ。許可した者しか入って来られないようになっている。
「思っていたよりも際どい所まで来ているようだね」
ナイーシャは言う。その声は少し気遣わしげだった。
「えぇ。想定以上に核心に近づいている。これなら本当に全てを変えることができるかもしれないわ」
「でもそれだけ危険も増すということだ。我々からのサポートも更に強めていこう」
「そうね。とにかく、あのカーサが放った闇の術と念は一日も早く取り除かなくてはならないのよ。それができるのは、直に彼に関わったリアと瑠璃子、そしてシェインだけ」
「そうだね。瑠璃子は、シェインが殺されてしまった時間軸では、片割れに出会えない。正確には、出会ったけど、片割れだと認識できなくて終わってしまう。「来世の結婚」が果たされなかったんだ。今回も瑠璃子が一番負荷が大きいし、心配だな・・」
「私は信じているわ。瑠璃子が全ての鍵よ。今回、彼女の投じた一石がじわじわと広がり、全ての時間軸に変化を起こし続けている。おそらく、彼女はもう間もなく、片割れと真の再会をする。確信があるの。そして「来世の結婚」を間違いなく成就させる。だって・・」
「わかるよ。このところ、ぼくたちの次元エネルギーもかなり軽やかになってきているからね。これまでずっと、僕たちに重くのしかかっていたものが確かに小さくなってきているんだ」
「希望が出てきているのよ。信じて次の一石に私たちも備えましょう」
2人の光人の姿もその言葉を最後に消え、空間は又静まり返った。




