15.リアの覚悟
ラドゥの言葉を聞いているうちにリアは目が覚めたような気になった。
カーサとの因縁は今世が最初じゃないかもしれない。その言葉はシェインがリアに池のほとりで忠告してくれたことと同じだ。その時のシェインの顔が思い浮かんだ。
すごく真剣な目で私を心配してくれていた・・。彼への愛しさがリアをこんな時でも温かい気持ちにしてくれる。私はシェインを失うわけにはいかない。たとえ1%でも可能性があるなら、やるしかない。
「わかったわ。ラドゥ。取り乱してごめんなさい。私やってみる。シェインをみすみす失ったりできない。それに未来世のあの人のためにも。あの人は小さい部屋の中で閉じ込められて絶望しているように見えた。あの人はまだ片割れに出会っていないのね?出会っていたらあんなに暗いエネルギーのはずはないもの」
ラドゥはそれを聞いて微笑んだようだった。
「よかった。やっぱりもう変化は始まっていますよ。今のあなたは、私の中にある記憶とは全く違っています。こんなに強くてたくましいなんて」
「・・それって・・褒められているの?」
リアは複雑な気分でつぶやいた・・。
「地球の未来世のあなたは瑠璃子というのですが、あなたの約5000年未来を生きています。瑠璃子はあの時点では確かにまだ片割れに出会っていません。それも、カーサの魂との因縁が関係しています。けれど、彼女は苦しみながらも、とても勇敢に闘ったのです。実は今回のことは、瑠璃子が道を拓いてくれたと言えるのですよ」
リアはびっくりした。
「地球の時間の概念では理解しにくいかもしれませんが、時間というのは本当は双方向に流れ、どちらにも影響しあっていると最初に話しましたね。今回、瑠璃子のおかげで時空に風穴が開き、不変のはずの過去に変更の余地ができたのです。それを私が感知し、調べあげ、今回の「プロジェクト」を思い付いた。そしてあなたに繋げた。そういう流れなのです」
「そうなの?すごい・・!瑠璃子のおかげなのね。彼女には会えないの?」
「そのうちに、瑠璃子とも通信できるようになるでしょう」
リアはそれを聞いて微笑んだ。
「楽しみだわ。とにかく、今度は、その壮大なプロジェクトに私が貢献する番なのね。でも、今の私ができることって、何なの。あと3日しかないのに」
リアは頭を抱えてうつむく。その時、胸元の例のスカイブルーの光石が目に留まった。
「・・!ラドゥ、これ!私にも光石が作れる?シェインを守る光石を作って持たせたら、少しは違うのではないかしら」
「リア、いい考えです。もちろんできます。・・まず、シェインを思い浮かべて、彼に光のエネルギーを送って包み込むようにイメージし続けなさい。その光に乗せたいエネルギーも一緒に」
ラドゥの言葉にリアは頷き、その場でイメージし始めた。
(シェイン・・愛しているわ。私の愛があなたを守ってくれますように。私の元に無事に帰って来てくれますように。私の存在全てをかけてこの光を送ります・・!)
魂の祈りを続けるリアの体が明るく輝きだす。その色は次第にルビーのように美しい赤に変わり、その赤い光は帯となり、漆黒の闇を割いてどこまでも遠くへと伸びていく。そして次第にその光は薄くなり、完全に消えた。
そして、我に返ったリアが異物感を感じて、握りしめていた左手を開くと、そこには小さな赤い光石があった。
「これ・・・うまくいったのかしら・・?」
リアはラドゥに赤い光石を見せて聞いてみる。なんだかラドゥがくれたものとは質感が違うようだ。美しいのだが、完全な透明ではなく、ガラスっぽさもそれほどない。
「ええ、上出来です。とても強い愛のエネルギーを感じます。あなたの祈りが光に乗った結果、こういう質感に作り上げられたのです。これがあなたのエネルギー個性ですよ」
それを聞いてリアはホッとした。その赤い光石は本当に美しく、これを自分が創り出したとは信じられなかった。
「私・・これを急いで編みこんでペンダントに仕上げるわ。そうしたらシェインは首にかけて行かれるもの」
「そうですね。では、今日はこの辺にしておきましょう。あなたもそろそろ帰った方がいいでしょう。」
ラドゥはにこやかな声で最後に付け加えた。
「私が言える確かなことは、成功のカギは、あなたの選択を信じ切るだけだということ。あなたの信じる心の強さを、私は信じます・・」




