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9日目、午後の部2

【お詫び】作者不手際により作中の作画が間に合いませんでした。


気がつけば日も暮れて夕暮れになり、文月が言った


「のしろちゃんをどっちに泊めます」

「簡単だ、聞けば良いじゃないか」

「疲れて寝てます」


文月は何とも言えない顔で良い、熊野は「うっそだろ」と微笑した。

子供って強いね、うん。

面倒なのでじゃんけんやって決め、女性用の貨物機の方へ運ぶ。

熊野は荷物もちで、文月はのしろを背負っている。

すると、一人の女性が驚いた声を上げた。


「のしろ?!」

「はい?」


文月が首を傾げて、熊野は「どちらさまで?」と聞いた。


「酒匂阿賀野です」

「...えーともしかして酒匂博士の」

「旦那は?旦那は大丈夫なんですか!?」


熊野は素直に答えた。


「亡くなられました」


一瞬顔が固まり、静かに「そう」と呟く。

揉め事かと警官二名が近づいて尋ねたが、事情を説明すると去っていった。

貨物機入り口でのしろを帰し、その場を離れる。

熊野の部屋の隣人は少女で、笑顔の似合う快活な子であった。

髪の色や肌の色と、瞳の黒が彼女がハーフだと教えている。

挿絵(By みてみん)

【描いてくれた人:管澤捻氏】


「あなたが新しく来た人?」

「ん?そうだけど」

「よろしく~」


まるで縁側で欠伸をする猫のような、間の抜けた声だった。


「おいーっす」


少女に続いて髭の濃い中年男性が出てきた、まるで頑固なバーの主人のような風格をしている。

少女が「父さん」と言ったのを見るに、父親なのだろう。

何処からともなくワンカップの焼酎を取り出してグビリと飲み、もう一本取り出して言う。


「飲むか?」

「ぼく一杯で酔えるエコロジーなんで、すいません」

「シケモクも?」

「むせるから吸いません」


それを聞いてその中年親父は、「かぁーっ日本の若者も困窮してんな」と愚痴を呟く。


「俺は長波、こいつは娘のイラストリアル」

「こんちゃーす」

「あ、どうも。熊野です。

小郡から流れ流れて来たんすよ」


それを聞いて長波は驚いた。


「小郡?そりゃ時間がかかったろうにな」


熊野は元々対馬に行く予定で、パニックと混乱と渋滞の四日間は廃線を沿って進んだ事を話した。


「あぁ廃線を上手いこと使ったのか!その手があったな。

で、来たところを見るに対馬は...」

「少なくとも昨日までは放送してたんで壊滅してないとは思うんですが、ただ戦闘に巻き込まれて」


続けて日中間の戦闘について話す。

やはり空港も攻撃を受けたようで、滑走路が壊れた事とレーダー類がほぼ全て吹っ飛んだ。

それに通信設備も巻き添えになったらしい。

幸いだったのがパニック二日目だったので避難民が居なかった事だが。


「そう言えば罹患者を封じ込めたって本当ですか?」

「あぁ、殆ど封じ込めてる」


長波はパニックの当時を語った。




熊野がヘリを手に入れようとしている頃、佐賀市も罹患者が現れていた。

警察は佐賀県庁舎に籠城しており、自衛隊は居なかった。

渋滞と道中の混乱により兵力は機動力を喪失し遊兵になったのだ。

市街各所から聞こえる警官隊やヤクザの銃声、悲鳴、鳴り響く車の盗難ブザーの音と緊急車両のサイレン。

駅前近くに住んでいた長波一家は乱闘と怒声が飛び交う大通りの渋滞を見ながら静かに立て籠り落ち着くのを待った。

四日ほどすると、県庁から放送が聞こえた。

まだ生きてる人は生きてると言うことを表すサインを用意して、良く見える所に出してくれと言うものと。

これから二日後にあなた達を救出しに行くから二日後まで静かに音を立てず絶対に立て籠ること、というものだ。


翌日になると、ドローンが拡声器を着けて飛んでいた。

音楽を流しながら罹患者が追い付けるようにゆっくりと低速で飛んでおり、見る見る内に罹患者が彷徨いている様子を見なくなった。

そして二日後、散弾銃を装備した機動隊と火炎放射器を装備した自衛隊が現れた。

生存者達はシーツやタオル、或いは物干し棹といったものでまだ生きているとアピールし、彼らは生存者に音を立てないように指示した。

長波は後半になってから救出された、彼が空港に向かう最中見たのは溶接されたスタジアムまでの道をふさぐバリケードと、

生存者のシグナルが無い家屋を火炎放射器で沖縄血戦の米軍のように焼き払う自衛隊の姿だった。

極めて効率的だった、罹患者とは言えもとは人間である。

黒焦げに焼ければ動けなくなるのだ。

一般的に火炎放射器とはガスを噴射すると思われているが、本物は文字通り燃える液体燃料を水鉄砲のように撒き散らすものだ。


「ミディアムレアだ!」


燃料をぶっかけられて炎上する罹患者が近づくが、散弾銃が頭を砕く。

よほど切り詰めてる小型の物でないなら、20m向こうだってある程度纏まって命中する。

斯くして封じ込めが成功した。

他の町でも海岸部に罹患者がぞろぞろと出ていったりしたらしい。


「なるほど」


熊野は納得し、罹患者は聴覚を主に使用してると確信した。

しかし例の婦警や、銃を撃てる罹患者の事は言わないでおいた。

デマゴークとしか思わえないだろうし、要らぬ嫌疑をかけられる。


「酷い世界だ」

「なに、可視化されただけさ」


長波は残った酒を一気に飲みきって、そう言った。

熊野は確かにそうなのだろうか、と思いつつ睡魔に誘われた。


長波さんの奥さんはイギリス人です、つまりイラストリアルちゃんは日英ハーフっ子なわけです。

阿賀野さんの作画が間に合わなかった、来週くらいには出来ると思う。


ちなみにイラストリアルちゃんにするか、インドミタブルかフォーミタブルにするかはかなり迷いました。

元ネタはイギリス空母で、長波さんは駆逐艦由来です。

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