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9日目、午後の部

空港沿岸にはしらね型護衛艦一隻、掃海艇とかの細々したのが7ほど。

それと米軍艦が一隻居ます、輸送艦だけど。

因みに服部司令の元ネタは服部陸軍大佐、クーデター計画を考えてた人です。

なお思想的等がよろしくない人物の元ネタは全部日本海軍の戦争犯罪疑惑艦艇の名前です。

例えば嵐ですね、捕虜殺害と艦ぐるみの隠蔽だったり、女学院の部隊指揮官の利根とかは国籍擬装の重大な違反行為をしています。


防衛省A棟総合指揮所は今や一人しか居ない。

残りはあきらめて刃物で自身の首を切って死んだり、"化ける"前に自殺したりした。

正確には緊急隔壁の向こうに沢山いらっしゃる、先程もコンコン叩いていた。

非常電源に変わって数日、液晶画面は<あれら>が世界を侵している図を表している。

5日前に遂に粘っていた者たちが諦めた、かき集めた爆薬で防衛省B棟幕僚本部を吹っ飛ばしたのだ。

通信を聞くに未だに皇居守備隊は抵抗を...と言うより囮になってる、皮肉にも元江戸城の堀は橋を落とした結果この周辺の罹患者を大きく引き付けている。

これが御稜威って奴か?あの世で神武帝も高笑いしてるだろうな。 


残念ながら地下の緊急通路まで行けない。

食糧なぞ指揮所にあるわけない、水とお茶は隅っこに段ボール箱で積まれていたが限界だ。

私の体は食わねば死ぬともうしている、そして食糧なぞない、ましてや食糧になる気もない。

そろそろ踏ん切りをつけよう。


数日前、防衛省B棟幕僚本部


その部屋は応接室として扱われていた、しかしその時のその場は完全な作戦会議室に姿を変えていた。

そこに居たのは三島第一空挺団団長、富士教導団団長、東部方面隊司令、画面の向こうに第1、第32普通科連隊に海上自衛隊横須賀地方隊司令であった。

言うまでもなくこの会合は当然非公式で非公開である、彼らは警務や内閣調査室にマークされている者たち。

自称愛国者、他称過激派たちだ。

経済的無策が生み出した政府への不平不満はどうしようもない怒りになり、近年急速に復活する極左暴力集団と離合集散の末に組織化された極右暴力集団がいっそう拍車をかけた。

事態は60年安保よりたちが悪くなり、ついには与党が確約していた自衛隊の国軍昇格すら消えた。

警察予備隊以来の理想たる国軍昇格が絶たれた結果、ついには政府に忠実であるべき一国内最大の暴力装置すら敵となった。

古来より国軍に愛想を尽かされ存続した国家と言うものは存在しない。

必ずそれが悲劇を起こし、それによる内的外的要因で崩壊した。


「既に第四師団の一部部隊が要所に向けて展開する準備をしています。

第八師団も緊急展開の用意を初めています。」


しかし世界はそんな事をしている余裕を与えなかった。

既にこの時点で中国は罹患者封じ込めに失敗、北朝鮮は予備役退役将兵をかき集めて各個に応戦、

韓国はソウル市街どころかデグ、テジョン、チョルウォンに波及していく。

そして成田、羽田、関西、福岡の四ヶ所の空港でも事態が起こりつつあった。


「最早一刻の猶予もありません!総理は急病で居ない現在、官房長官を御輿にする他ありません」


総理は先週から体調が不調で、しかも先日危篤に陥っていた。

官房長官は反米保守派の派閥を率いており、戦前からの右翼派閥の人気があった。

彼らの行為の云々に意味などない、問題は罹患者をただの暴徒としか思えなかった事である。

想定通りに進んだ戦争なんぞ古今東西一度もない事を彼らは忘れていた。



熊野は持ってきた医薬品を格納庫に運びにドアを開けた。

若干の血の匂いと、机に伏して動かない医者らしき男に怯えつつゆっくり置く。

隅では大小様々な中身の遺体袋が置かれていた、いつ動くか分からないので音をたてないようゆっくりと歩いて医療品の詰まった箱の横に置いていく。


「大丈夫、動かないから安心しろ...」


憔悴しきった男が、死人のごとき顔で言う。


「なんだそりゃ」

「薬品です、私らが持ってきた...」


言い終わる前に、男が大きい声で叫んだ。


「やった!!モルヒネに消毒液、それに綺麗な注射針のストック!!」


疲れきっている顔が、一転して嬉しげな顔に変わった。

熊野は遺体袋を指さして尋ねた。


「動かないって、何があったんです、罹患者じゃないんですか」

「罹患者だ、正確にはその容疑者も含む...スペイン風邪やペストのパンデミックの時に囁かれた言葉を教えてやる」


男は自嘲した表情で言った。


「さっさと感染した奴を殺して焼いちまえ」



熊野達が寝ることになるのは空港に止まっていた貨物機の機内だった。

そこに適当なビニールシートを使い部屋をでっち上げ、個室に仕立てたらしい。

しかしながら特に不満は感じなかった、確かにちょっとひんやりしてるが羽毛布団はついている。

部屋の確認を終えると、若い警察官が熊野とのしろを呼んだ。


「すんませーん、今日の午後から依頼したいんですけど大丈夫っすかねぇ」

「良いけどなにやるんです、土いじるんですか」


畑を指さして聞くと、その警察官は半笑いで「ありゃ私らの趣味なんすよ」と言った。

端から期待してないのかよ。

空港外縁のフェンスの向こうに掘られた堀を指して、その警察官は言った。


「防衛用の陣地をこさえてるんですが、トラップの爆薬の運搬手伝ってくれます?」

「え、大丈夫なんですかそれ」


文月は倉庫をJ-SECの二人と一緒に前歴を申告している、従ってそう言う物は詳しくない。

警察官は「大丈夫なんじゃないっすかね」と適当な感想を述べている、おどりゃクソマッポ分かっとんのかワレぇ。

のしろは首を傾げて「ホームアローン?」と呑気だ。


「えーとのしろちゃんだったかな、のしろちゃんは別の...図画工作みたいなことするよ」

「どういうこと?」

「彼処の戦車の擬装用に漁網に草をつける作業」

「わかった」


あれ子供の手製かよ、いよいよ国民義勇戦闘隊とか鉄血勤皇隊染みてるなおい。

熊野は了承し、去り際にその警察官が言った。


「明日の目玉は民間防衛の射撃練習っすよ」

「え、マジで撃つんですか?」

「撃っちゃうんだな、これが!」


熊野は内心感動した、半世紀も時間があれば竹槍から進化すると感動した!

その日はこの有事にあるまじき平穏な時間で、フェンスの外だと言うのに作業している人員は極めて安穏としている。

航空燃料の入ったドラム缶と、何故かアメリカ軍の備品の爆薬(後から知ったが無人の針尾島から接収)を組み合わせた即席爆弾を堀に置く。

文月は何度も「信管とデトコードを繋がないで!」と注意している、そう言えば文月の前歴は元々施設、つまり工兵だ。

その後は自衛官らが数人で黙々と鉄条網の設置作業をしていくのを横目に戻る。

皆なんでこうなった?と疑問符を浮かべて、とりあえずの遣ることをやる。

無気力的ですらあるが、それでも充分。


何もないって言うのは極めて素敵だ。


次回はスタジアムに罹患者をどうやって閉じ込め、佐賀市をある程度安全にしたのかって話をします。

ちなみに空港守備隊の自衛官は八割近くが海空の敗残兵です、具体的には中国艦隊と艦隊戦やって指揮系統崩壊した連中や、

航空基地から逃げ出したような者達です。

まともに部隊として機能してるのは正規の基地警備隊くらいですがそれは壊滅したのでかなり軍隊としてはにわか作りです。

それでも軍隊っぽさが残るくらい近代軍らしいんですが。


因みに守備隊の部隊の名前はネタ重視、チェックメイト・キングツーはコンバット!ネタ。

他に予定しているのは戦車のクーガー、セイバー(戦火の勇気)、ACHのプリースト2-1とウィザード03(パトレイバー)、

JTACのコング(博士の異常な愛情)、指揮所の八原(沖縄血戦)。

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