046 裏話〜王国〜
西岡のオフィスでは、作戦会議が行われていた。
とはいえ、会議とは名ばかりの西岡による独裁。
「ようやくこの日が来た!私達が強者と示し、この世界に安寧を!」
西岡はこの世界に執着している。
ここに来た時の事を思えば、楽しい事では無かった。
初めの数日は当てもなく街を歩き回り、漠然とこの悪夢を終わらせたかった。
だが自らの能力に気付いてからは大きく変わった。
今まで味わったことの無い万能感。
欲望に従って、暴力を振るった。
自分を正しく評価しなかった、以前の職場の人間を殴り、オフィスを破壊した。
自分の会社を見下し、相手にしなかった相手も同様にした。
数日はそんな行為に酔いしれる事ができた。
だが間も無く飽きた。
どうせ現実に戻るといつもの日常が待っているのだ。
壊したはずの会社は何事も無く営業している。
殴り倒した人間も元気に歩いている。
それはそうだ、実際には何事も無かったのだ。
そして次に夢を見ると、この世界でも何事も無かったことにされている。
押し付けられるように会社の代表となり、他人に頭を下げ続ける日々を過ごしていた。
共に会社を立ち上げ、志を同じくしたはずの仲間はどこかに消え、連絡もつかなくなった。
多額の負債を西岡に押し付けて。
以前在籍していた会社にいた時には、自分に頭を下げて依頼してきた人間に、今は自分が頭を下げている。
うんざりしていた。自分はやればなんでも出来るはずだ。なのに社会がそれを許さない。自分を封殺しようとしている。
だがこの世界では違うと教えられた。
力の使い方や、世界の法則。そして人間の扱い方を学習した。
そこからは、現実でも夢でも、何もかもが上手くいった。
邪魔な人間を排し、仕事を奪った。
オフィスの部下をこの世界に落とし、現実では味わえない快楽に溺れさせ忠誠を誓わせた。
新たな人材発掘をし、能力を扱える人間を集めた。
西岡はこの世界の『王』になりたいのだ。
くだらない現実を捨てて、この世界で絶対的強者として君臨する。
そのためには、自分達のような人間に対する脅威は取り除かねばならない。
あのコートの男がいなくなれば、まだ表に出てきていない意識ある人間達も姿を現すだろう。
そして自ら西岡王国の一員となるのだ。
そしてら現実でも王のために、大いに働いてもらう。
もしそんな人間がいなければ、新たにこの世界に招待すればいいだけだ。
歪んだ笑顔で号令を飛ばす。
「場所は以前から目を付けていたスタジアムだ!全力であの男を叩く!」
満足げに頷き、長谷川はすぐに行動を開始した。
オフィスの隣の部屋に、ドアも開けず声をかける。
「トオル君、あなたには後から指示を出します。今はすぐ相馬氏を追ってください。まだ情報を持っているかも知れませんので。私達全員がここから動かないと思っていて、気が抜けているであろう今がチャンスです」
返事がしてすぐにドアが開き、真壁が急いで部屋から出ていく。
「さぁ急ぐぞ!決戦は明日だ!」
自信に満ちた西岡の声がオフィスに響いた。




