番外 mission 2 : to the MARS①
船体が揺れる。惑星軌道上を緩やかに弧を描きながら、惑星『火星』へと向かって。
「…もうすぐ着くみたい」
蚊の鳴く様な呟き声がにつられ、四角い窓枠から外を見る。暗澹とした宇宙の闇の中、蜃気楼の様に朧げに見えていた赤色が、気がつけば視界いっぱいに広がっていた。
「……っ!」
目の前の壮大な景色に、思わず窓枠に手を付いて景色に魅入ってしまう。果てしなく赤い大地が広がっており、所々に大小様々なクレーターが…と、しばらく外を眺めていると、船体の高度がゆっくりと落ちていくのがわかった。どうやら無事に重力圏を抜けたらしい。吹き荒れる砂嵐を避けながら、徐々に降下していく。館内放送が流れ始めた。
今日、俊輔は初めて火星に降り立つ。
「火星が赤色なのは錆なんだってね」
「錆…」
隣の少年が再び小声で教えてくれる。そういえば、ここに来る前の火星用授業でAIがそんなことを言っていた。
『───火星の赤は酸化鉄の赤です。なぜ錆がというと、気が遠くなるような昔、元々あった土壌に含まれていた鉄が、かつて存在した水や大気によって酸化したからです』
『なるほど…』
『しかも砂塵により錆びた土は惑星全土に広がりました。およそ火星の表面の七割です。そして、火星には現在、3基の移住区が…───』
「より正確に言うなら、地表の砂だけじゃなくて、岩石にも錆が付着してるからだね。あと赤鉄鉱が含まれている鉱物も多いんだ」
「それも授業で習いました。えっと、それを取りに来たんですよね、俺たち」
「そうだよ」
後ろからどこか楽しそうに補足する声が聞こえ、俊輔は窓から手を離し、首だけ後ろに向けて応える。
「見慣れないから不思議だよねぇ…知らない土地への旅行って、こんな感じなのかな。あ、見てごらん。あそこに透明な建物があるよ…多分、今日からあの中の何処かに泊まるんだよね?ふふ、どんな感じなんだろう」
「……春戸先輩、随分とお気楽ですね」
「だって家部くん、折角の任務なんだよ?こんな機会そんなにないだろうし、楽しまないと勿体無いよ」
「楽しむとか、何言ってんだあんた」
その瞬間、ほんのり和やかだった空気が凍る。俊輔は慌てて割って入ろうとしたが、それやりも早く小柄な少年が口を開く。その声は冷たい。
「火星は第三の地球や月より開発が進んでいない。下手なことをしたら普通に事故死だってします。もっと緊張感を待って下さい」
「君の言いたいことは解ってる。けど、緊張してばっかりじゃ上手くいかない事も有ると思うよ。ほら、リックスしてリラックス」
「……」
「い、家部くん春戸先輩!二人とも落ち着いて!そうだ、適度に貴重感を持って適度にリラックスしましょう」
「佐原井まで何言ってんの?僕は火星で死にたくないんだけど」
「いやわかるし、俺もそうだよ!でも今回の任務のメンバーはこの三人だし、俺としては何というかもっとこう協調性的なものが欲しかったりですね」
「ないよそんなもん…ましてや、同じチームでもないのに。あー、早く帰りたい」
「う…そうだけど…と、取り付く島もない…なんていうスーパークール」
宇宙スーツから沈んだ声が止まない。まるでこの世の終わりと言わんばかりの家部少年の表情に、俊輔の顔が思わず引き攣った。もう一度後ろを振り返ると、彼とは対照的に春戸少年はどこ吹く風と言わんばかりに微笑んでいる。まさか先輩の心は鋼でできている?と俊輔は言いそうになったが止めておいた。
春戸少年が笑みを崩さないまま続ける。
「どのみち、このスーツを脱いだら宇宙空間の何処にいても終了だよ。それに、未開の地だからこそ新しい発見があるかもしれないよ?」
「確かに!えー…えっと、とにかく!今回は無事に任務達成目指して、なんとか三人で頑張りましょう!」
「うんうん、お手柔らかにお願いね」
「…頑張るも何も、荷運びの手伝いだけだからすぐ終わるでしょ」
「その荷運びが大変なのかもしれないなぁ。少なくとも一般の作業員の人たち以外に、プラスして僕たち三人が必要なんだから…」
「はぁ、そうですね。先輩の腕力に期待してます」
「え〜〜、期待されちゃった!じゃあ、頑張っちゃおうかな」
「……」
「は、はは…お願いします……表面上だけでも、本当、仲良く……頼むから…」
家部少年がため息を吐く。
俊輔はもはや胃がどうにかなりそうで、心の中で胃薬を持たせてくれた海野少年に感謝をしていた。ありがとう海野さま、この恩は忘れませぬ。出発前に服用しておいて良かった。
そう、困った事にどう見てもこの二人、相性がよろしくない。というよりも、家部少年が今回の任務にとても消極的だった。…彼の気持ちもわかる。もう少し協力的であってほしいが。
(俺だって、チームメイトがいないから緊張してるし、正直めちゃくちゃ怖い……何かあったらどうしようって思ってる…)
でも、任務だから仕方ないじゃないか。俊輔は不安な気持ちをため息と共に飲み込んだ。
春戸少年は年齢が一つ上なだけあって家部少年の言葉を流しているが、それが余計に彼を苛立たせている要因の一つであるのは明らかで。これから三日間のことを考えると、胃が爆発四散しそうになる。上っ面だけでも取り繕ってほしい。
…というか、何故この三人なのか?チームで取り組んだ方が効率が良さそうなものだが…。俊輔は選んだ誰かを密かに恨む。
(あ、地平線の方が少し青い……?)
暗い宇宙の端から灯る様に拡がってくる青。赤が紫になり、徐々に青に変わっていく。……ああ、そうか、夕焼けだ。火星の夕焼けは、青いんだった。一日の時間が地球と殆ど変わらないから、日が落ち始めたんだな、これは───初めて目にする火星の景色だけが、今の癒しになりつつあった。
(…まあ、春戸先輩の気持ちも、正直ちょっとわかるんだよな…少しだけ、わくわくする)
───見渡す限りの褐色がかった赤い大地、砂塵。いくつもの巨大クレーターに、火山だったもの。
その周辺に作られた数百メートルはあろう街あるいは生活居住区と大きな湖。各インフラのプラント工場、電力炉と重力制御装置…それらを囲み保護するための、超巨大な透明なドーム。
これが火星。地球と同じく岩石惑星であり、現在テラフォーミング中の、人類の第四の移住区。
『本艦はまもなく火星に着陸いたします。シートベルトを外さず、また、対宇宙スーツをけして脱ぐことなく着席されたままで……』
放送の途中で中型貨物船はガラスの建物の近くに着陸した。再度窓の外を見渡す。
(…小さな町みたい…?大きな湖…っぽいものがある。火星はかなり寒いって聞いていたけど、凍ってないということは中の温度管理はできているのか。そりゃそうか、人が住んでるんだもんな…一応火星用カイロたくさん持ってきたけど…というか、本当になんでこのメンバーなんだろう)
俊輔は横目で街あるいは居住区を見ながら、窓越しに二人を見た。ガラス越し、スーツ越しに家部少年と目が合う。ギクリと心臓が鼓動を打った。
「…何?」
「い、いや、なんでこのメンバーなんだろうなって」
動揺して俊輔は振り返ってすぐに思ったことを口にしてしまった。てっきり不機嫌になるかと思われた家部少年は目を丸くし、何でもない様に応える。
「火星での任務はランダム選出だけど」
───家部少年。一月前の団体戦で、湖礼少年に秒殺された『光』と『未来視』のトゥーフェイスで、第三の地球出身者だと…湖礼少年が言っていた。
「ああ、それ僕も不思議に思って裂記くんに聞いたんだけど、月の定期調査と火星の物資調達任務だけは基本的にはランダムなんだってさ」
───春戸少年。同じく一ヶ月前の団体戦で、俊輔が倒した『炎』のカースドワン。半年ほど早く第三の地球にきている、俊輔と同じ地球人。
「そうなんだ…二人とも、教えてくれてありがとうございます」
「え、海野たち教えなかったの?」
「行ったらわかるとしか言われてないんだな、それが」
「ふふ、スパルタだね海野くん。それはそうと、今日から三日間は一緒なんだから仲良くしていこうね」
「そ、そうですね…」
「はあ……鬱だ。なんで僕なんだ」
(…あれ…でも、前に任務で月に行った時はチームだった様な…たまたま?)
そう、今回の任務『火星資源運搬任務』のメンバーは団体戦で戦った彼らと共になったのである。
思考の海に浸る前に、船内放送が流れる。すぐに乗組員と作業員、三人は自分達の荷物を持たされ、ガラスの建物の入り口である梯子へ向かう様に指示された。降り立つ前に携帯端末の地図を開いて現在地を確認しておく。
ここは火星の数少ない街あるいは居住区の一つ、ゲール・ポイント…らしい。端末を仕舞い、貨物船からそっと火星の大地へ降りる。
(…良かった、月より歩ける)
火星の表面の重力は地球の三分の一。すでに月面を経験していた俊輔は安堵の息を吐いた。少しふわふわするけれど、ちょっとした力で浮いたり飛んでいくほどではない。意識して足を動かせば、歩行に問題はなかった。
「ああ、余裕だね…これなら火星歩行のシミュレーションしなくても良かったかも」
「……まあ、最初に月を経験しますしね」
二人も特に苦戦している様子はなく、普通に歩いていた。俊輔はそれを確認してから、再び前を向いて歩き出す。何を隠そう今回のミッションのチームリーダーは、俊輔なのである。ちなみに顔合わせ時にじゃんけんで決まった。発案者は春戸少年である。
(…まあこれも、経験だよな…まさかこんな胃痛役になるとは露ほどにも思わなかったけど)
火星の大地は広いが、貨物船が居住区のある透明な建物…ガラスの様なドームの近くに着陸したため、さほど歩くことはなかった。数十ほどメートル歩行して、中に繋がる大きなラダーを登る。勢いをつけて手を離したら、そのまま宇宙空間へ飛び立ってしまいそうだ。いやこれは普通に怖い。俊輔は身震いしながら、しっかり手摺を握りラダーを登り切った。
作業員達も含めて全員の到着を待ち、許可証を荷物から取り出し確認してから、頑丈そうな分厚い扉をまずは大きく三回ノック。数秒も待たずに機械音声が流れる。
『御用件をどうぞ』
「だっ第三の地球から、物資の調達に参りました!こちらが許可証で、三日間の滞在許可が出ております。お、お通し願います」
『…照合一致。『火星第一居住区ゲール』へようこそいらっしゃっいました。どうぞお入りください』
「………き、緊張したぁ」
「お疲れ様ぁ〜!頑張ってたねえ」
「お疲れ様。僕、絶対こういうのやりたくない」
入場許可を取ったところで、後ろから着いてきていた作業員のリーダーに、背中をばしばしと叩かれる。
「坊主、立派だったぞ」
「ひゃ、ひゃい!!」
「さて、俺たちはこれから荷物を置いてすぐ採掘班、整備班に別れ作業に取り掛かるが…」
「じっじ、自分たちはこの後、居住区内部の拠点を確認後に、採掘班に合流し、午前は同作業に従事します。午後は、区長の指示により、各自動くことになっておひます!」
「心得た。じゃすぐ会えるな、先行ってるぜ」
作業員たちはそういうと宇宙スーツのまま先に居住区内へ向かっていった。彼らは作業中は貨物船が拠点となるため、スーツの本格的な洗浄はしないらしい。すぐ隣の個室で、風で砂塵を払うだけだ。俊輔たちも拠点の確認や区長への挨拶、その後は外で採掘班に合流するため、簡単な洗浄のみする。
銀色に囲まれた廊下で、荷物を持ちながら他の作業員たちが終わるのを待つ。
(なんかムーンベースと似てるな…えっと、これが終わったら…まずは拠点に荷物を置きに行かないと)
程なくしてドアが開いた。三人で目を合わせ、作業員たちが部屋から出て再び外へ向かったことを確認してから、俊輔たちも部屋に入る。荷物を端に寄せ、壁に備え付けられてあるスイッチを押すと、火星の砂を落とすための大型送風機に天井から突風を浴びせられた。それは容赦無く。
「うおおおおおお?!なんか風が重いいい?!これ砂どころじゃな、やりすぎああああ!!」
「ははは、そういうのは事前に教えて欲しかったなあ裂記くん」
「………湖礼のよりマシ…か」
スーツを着用していても感じる上からの突風と圧力に、このまま潰されそうになる錯覚を覚えた。一秒がやたらと長く感じる。…やがて風が止み、下を見ると赤みを帯びた砂が、大量に散らばっていた。
「短時間の移動でも、こんなに付くんだ…」
「砂嵐が凄かったからねえ」
「終わったしそろそろ出ようよ。なんか風酔い?して気持ち悪いし」
「そうだね…」
三人は荷物を持って部屋を出る。長い長い廊下を抜け、二枚目の重たい扉を開く。
次の瞬間、銀色の世界に、呼吸も忘れるくらい鮮やかな色彩が飛び込んできた───
「な……!?た、建物がいっぱいある…自然がある、人がいる!人が、普通に歩いてる…!?」
「落ち着きなよ佐原井、居住区なんだからそりゃ人はいるでしょ」
「それはそうだ…あ、建物がよく見たらなんか半分地下に埋まってる?!あの透明な天井がドームだよな?!うわめちゃくちゃデカい!?なんかすごい!」
「佐原井って本当に授業受けたんだよね?湖礼みたくなってるけど大丈夫?」
「う、だっ、大丈夫!多分!授業は受けたけど、なんか緊張とかで所々忘れちゃった、かも…あはは」
「わあ…」
「大丈夫、佐原井くんの気持ち、僕はわかるよ!それよりあれだね、湖が貨物船から見た時より遥かに大きい…半径の三分の一くらいを囲う様に、色々建っている…なるほどねぇ」
「それに、パッと見ただけでも、昇降口がやたら多いです。授業の情報にはなかったけど、全体的に縦に長い。つまり、ここは月モデルの地下都市なんですね。あとなんか酔いが………いや、これは気のせいかな」
(一回見ただけで解析し始めてる!?めっちゃ頼りになるじゃん二人とも!?お、俺もしっかり見ないと…!)
───俊輔たちの目の前には居住区、という言葉では想像もできない光景が広がっている。人工的なものに違いはないが、大きな湖、それを一部囲う様に植林された木や花々、大きさの違う家々や建造物…見慣れているものが、ここにはあった。
ひとしきり感動を噛み締め、銀色のラダーを降り街に降りる。地面は普通のコンクリートだった。歩行用道路を歩きながら地図を開いて、事前に告知されていた拠点へ向かう。…道ゆく人々には奇異な目で見られたのは、宇宙スーツを脱いでいないせいか。彼らの格好は、普通の一般的な服装だった。
「…忘れた疑惑の佐原井のために言うけど。グラスオブマーズ、って言うらしいよ、この空間。あのガラスが宇宙からの有害電波の遮光とかしてるんだって。電気は何処かにある小型の原子力発電炉と、蓄電池で賄ってるんだとか。重力制御装置も何処かにあるみたい」
「ないとこうやって地球みたいに立って歩けないもんねぇ。水源もしっかりしてそうだ。なんせ湖もかなり復元してるし…だから植林も可能で、それにより生物も生活できている。空気も地球に合わせて調整されてるんだって。ああ、そういえばこの第一居住区ゲールは、オリンポス山の麓だって裂記くんが言ってたなぁ」
「…は?そんな山、地図にもないし、何処にも見当たらないんですけど…少なくてもドーム内にも外にも。授業でもそんな情報もなかっ………まさか、削った…?」
「ふふ…僕らがなんか知らないことが沢山あるんだねぇ、きっと」
「…つまり、クソ面倒ですが、新たな情報収集も必要ってことですね… はあ…怠い…」
「ふ、二人とも詳しいですね…?」
「…別に、僕のはすでに行ったことのあるチームメイトから聞いた話だし」
「あれ?色々教えてくれるでしょ?」
「?!!俺のとこ何も教えてくれなかったですよ?!行ったらわかるとしか!」
「それは………まあ、湖礼とか海野だし……元気だしなよ……あとで、飴で良かったらあげる」
「あ、ありがとう…」
「本物のスパルタなんだねぇ、海野くん。なんか怖くなってきたよ、彼のこと…」
「俺はぶっちゃけ時々鬼に見えます」
「…うん、聞かなかったことにしておくね」
二人から同情の眼差しを向けられたところで時は遡り───団体模擬試合リーンフォースの総力戦が終わってから一週間後。例の任務の話し合いも終わり、俊輔は通常通りに授業を受けていた。授業ランクは1-F。授業内容は、本格的な対人訓練に入っていた。
今日も今日とて人間の様にお喋りなAIに、『佐原井くんはもっと柔軟性があればいいですねえ』だの『あ〜〜いい加減ですよォ!これで繊細なコントロールはバッチグーです』だの指導を受け、午後からはそれを踏まえた上で海野少年と共に実践訓練をする予定だった。
(ようやく日常に戻ってきた気がする…ご飯が美味い)
昼食は食堂で鳥飯丼を頼んだ。絶妙な加減の甘辛いタレがたまらなく美味しい。聞くところによると、肉以外の食材は殆どのものが人工物らしい。けれど、俊輔的には地球で食べていたものとあまり変わらなかった。あえて比較するなら、野菜などの食感や匂いがやや違う程度か。昼食に舌鼓を打っていると、突然ピロンと可愛いらしい音が響く。
『鳴ったな、なんか』
『ボクのじゃないよー』
『あ、俺だ…えっと…『火星への物資回収任務』…?』
『『あ〜〜〜』』
『えっなに?!』
俊輔の携帯端末に任務の連絡が入ってきた音だった。急ぎ端末のメール画面を開く。ミッション名を読み上げると、同じく昼食を取っていた二人から納得した様な溜め息の様なものが溢れた。タイミングがぴったりすぎて余計に怖かった。一体何があるというのか。
『たまーにあるんだよねぇ、物資確保の任務。月でもあるよね?茂樹っち』
『ある。主に月の砂の回収だけど。俺から言えることは…とにかく、準備はしっかりしておけ。気温は常にマイナス60度以下だからかなり寒いぞ。重力は大体地球の1/3だから、まあ、月面よりは移動しやすいと思う』
『多分乗り物…探査車っていう車みたいなので移動することになると思うけど、多少は歩くかも?火星、広いし……まあ何処で何を採掘するかによるけど』
『で、ちなみにメンバーは?』
海野少年に言われて任務の内容の続きに目を通す。
『俺と、春戸先輩と、家部…くん?なんか聞き覚えがある様な…』
『ああ、真野くんのとこの…ボクが瞬殺した彼だね!えっと家部くんはねぇ、弱いけど面倒見は良いから、何かあったら頼れるかも?諦め早いしちょっとクールだけどね』
『ほ、ほうほう』
『春戸先輩は…まあお前と同じで比較的こっちに来たばっかだし、正直よくわからん。掴みどころがなくてかなり強いとしか…佐原井、その任務はいつからだ』
『えっと、二日後だって』
『『二日後??!!』』
『イレギュラーな事が流石の俺でもわかった』
『準備期間無さすぎるだろ、何考えてんだ上の連中は!?普通は一週間くらい準備期間があんだよ!火星は月じゃねぇんだぞコラ!』
『シュンスケ、今すぐ火星の特別授業を二コマは入れた方がいいよ!あと念のため火星の歩行シミュレーションも!』
『買い出しもだ、対火星グッズを買いに行く必要がある…!ガチで準優勝できて良かったな、資金には困らねえ』
『評価されてお小遣い沢山支給されたもんね!そんなわけで放課後はモールに買い物だーーー!あとで迎えに行きまーす⭐︎』
『や、やることが、やることが多い…急に多い…!』
───そんなわけで、火星に行くことになりましたとさ。二人にはなんやかんやお世話になってはいる。スパルタとは言うが、よくよく考えれば今回は伝える時間が足りなかったのかもしれない。モールで色々買うもののアドバイスは貰えたけど。あまり事前情報的なものは貰えなかったけど。
俊輔が色々と思い出しているうちに、三人は指定されていた拠点に着いた。四角い青い屋根で、一階部分の半分が地下に埋まっている。扉がない。
念の為に家部少年が端末の地図と照合をする。
「拠点はここで間違いないっぽいよ。…入る?リーダー」
「拠点は小さな簡易宿舎みたいなものだと聞いていたけど…面白いねえ、中が気になる」
「二人とも、横に下に続く梯子がある、玄関口は地下みたいだ。…入ろう。各自携帯端末以外の荷物を置いたら、区長のところへ向かう。端末は宇宙スーツの左ポケットに装備するように」
「「了解」」




