未知の模擬戦 14
真野少年が率いるチームタイタンとの戦闘が終わり、初勝利を収めた俊輔は急ぎ海野少年の結界へと戻った。チームメンバーのみ可視化できる透明なそれに、そっと触れる。…すると、ふわりと透明な膜のような結界の中へと包まれる。優しくて安心感があって…なんとも不思議な感覚だ。
「竹也、佐原井、初戦お疲れ!」
「かっこよかったよ佐原井クン!竹也クンもさすがの秒殺!痺れるぅ」
「ありがとうございます。」
「あ、ありがとう…?」
海野少年と秋山少年が優しく声かけてくれる。竹也少年はいい感じだと思います、と小さく声をかけてくれた。しかし、こう言う時に真っ先に喜びの声をあげそうな人物の声が聞こえてこず、ふと振り向くと、湖礼少年は何かを考える素振りで立ち止まっていた。何やってんだ、早く戻れと海野少年がジェスチャーをしているが、見てすらいなかった。
「よく考えたらさ、茂樹っちの防音結界の中だったから、外の音が聴こえなかったのかなって」
「それじゃん、薫っち天才か?」
「あー…十中八九それだ、防音結界だしそりゃ『音』の能力が万全に働くわけねぇな…」
「そっちは聞こえてるよね?そんなわけでサーチしてから戻りまーす」
「俺のせいだな、なんつー初歩的なミス…あー、湖礼に悪いことをした」
「多分茂樹っち結界の中で反省会してるでしょ?あははっ気にしないで!今回はちょっとステルスに意識全振りしすぎただけだよ!なんせボクも忘れてたしね!さてさてと、補足される前やっちゃおう。ヘッドフォンよし…感度良し…『音響探査』」
「…お見通しかよ…」
「ホント仲良いよね」
「……付き合いなげえだけだよ」
湖礼少年がくるっと素早い手つきでヘッドフォンを装着し、何かを呟いてから目を閉じた。俊輔はよく聴き取れず、その姿をじっと見守ることしかできない。
(…?)
「アレはねー、集中力を爆上げして周囲の細かーく音を拾ってるんだってさ。めちゃくちゃ超集中すれば、薫っちの半径百メートルくらいの呼吸音まで聴き取れるらしいよ。マジでヤバくね?」
「や、やばい……範囲もだけど、呼吸音も拾える精度もやばい気がする」
「それな。なんか薫っち、ココ長いらしいよ〜。その分めっさ練習もできるし任務も入るだろうし、プロにもなりますわそりゃ」
「長い…」
「…あと本人の努力もな。あいつ、ああ見えてめちゃくちゃ努力家なんだ。しかも追及型の」
「なんていうか言葉で表せられないくらいヤベーー時あるもんね」
斜め後ろから秋山少年が小声で詳細を教えてくれた。防音結界だというのに声を顰める彼につられて俊輔の声も自然と小さくなる。途中から海野少年も参戦した。竹也少年は黙って成り行きを見守っていた。
(そういや湖礼くんは、いつから学園にいるんだろう?名無先生はこんな小さな時、とか言ってたような気がするけど…園児とか小学生くらい…?)
「…探査完了!」
探索が終わった湖礼少年が結界に入ってきた。ビシッと敬礼を一つしてから彼は言う。
「報告!あっ前提として、精度に自信はあるけどおそろくどのチームも対策してるから当てにしないでね。まずこの階にはもう人気はない。上の階に人数多め…だけど、下に移動してる。屋上に陣取ってるっぽいチームが一つ。それで一つ下の階…二階だね、二階は…四人か五人か六人」
「早速あやふやなんだがもう少しどうにかならなかったのか?」
「んんん、いやさ、なんか微妙にノイズが入ってたと言うか…とにかく人間なら五、六人、ってカンジ!多分…三人ずつどこかの部屋に一部屋、かな」
「…わかった、とりあえず慎重に下行くぞ。この階には廊下出て、一番近い西の階段から行く。」
「「「はい」」」
と、いった刹那。全員の足場が崩れた。
教室の床ごと、全て。
「───あ?!っ対物理結界、展開!全員衝撃に備えろ!間に合わな」




