mission 1 : to the MOON②
◼️月の裏側: 南の海
地球時間で時刻9:00、俊輔たちは速やかに月へと降り立った。海野少年曰く月の裏側は機械兵たちにまだ感知すらされていないとのことだが、念には念を押してスーツに搭載されている迷彩効果を使用した。これで地球から万が一感知されてもすぐに見つかることはない。また、スーツには月の砂という物質が織り込まれているらしく、宇宙線や太陽風を防げるとのことだった。俊輔は正直、よくわからなかった。
そのまま月における拠点へと繋がる地下への入り口へと向かう。無人となった宇宙船は、迷彩効果を維持し月の裏側にてじっと静かに待機していた。
───見渡す限りの砂と石、クレーター、遠くに見える山。水が流れていたような跡、暗すぎて見えない箇所がある大地。そして、地平線には宇宙の闇とかすかな星の光。
これが月。地球の衛星にして、人類の第二の移住区。
(うわ、足が…か、軽い…うまく、歩けない…!すごく浮き上がる!重力六分の一って、こんなに違うのか!?みんなは…!?)
気を抜くとふわっと浮いたまま宇宙空間に放り出されてしまいそうな恐怖を感じながら(重力があるためそのようなことはないのだが)、歩き慣れない月面をなんとか歩く。浮かないように意識しながら、慎重に。ほかのメンバーは慣れているようで、普通にその辺を散歩でもしているかのように歩いていた。
(……これ、慣れる、かなあ!)
さて、ここから目視できる範囲だけでもざっと三箇所、階段らしきものが確認できる。そのうちのどれか一つを使うのかと思いきや、それは一般用らしく任務では使用不可であると海野少年に言われた。
月の裏側の、南の海と呼ばれる場所から数メートル離れたところまで歩く。海野少年が徐に地面を立て続けに六回ノックをすると、突如地面が一メートル四方に割れ、新しい階段が出現した。「これはな、いわゆる隠し通路、ってやつ。」
この階段のみが月における拠点に繋がっているそうだ。それを伝い降り、月内部へ向かう。階段は見た感じ、普通の鉄製の階段だった。カンカンカンと音が響く。全員が階段を降りると、階段を隠していた地面が元に戻った。
(月の表面がこんな風に開くなんて、一体誰が信じようか…)
さて、月における拠点に到着後、対宇宙スーツを洗浄機に突っ込むと、俊輔たちは横一列に整列した。
拠点の中は一面グレーで雑風景。設備は整っているようで、あちこちに大きなモニターやオペレーター席、対宇宙スーツがいくつもある。ほかにも何らかの備品らしきものがいくつかあり、人もまばらにいた。
(そういえばこのスーツ…なんの素材でできてるんだろう)
「佐原井、ここがムーンベース。ここと月内部は地球に近い酸素濃度に調整してあるから、普通に呼吸できる。必要な物資はここで補給できるし、休むことも可。何かあったらここに来れば…ま、安心だな。
よし、現時刻を待って各位任務を開始せよ。ヒトフタマルマルにはここへ集合、任務開始!」
「「はい!」」
「とりあえずボクと行動しよっか!着いてきてシュンスケ!」
「う、うん(ヒトフタ…なに?)」
共に任務に同行していた二人組は、返事をするとすぐ様駆け出していった。あっという間に二人の影が見えなくなった。俊輔も湖礼少年に続き、ムーンベースを慣れない足で駆けていく。
海野少年は、まだ動かない。




