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PASS!  作者: 寛世
第1章
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仮想空間マスターの憂い、未来

 


 ───同時刻 、シュミレーションルーム。

 ()()()がいつも通り仮想空間に入り浸っていた。彼は仮想世界での嫁の一人、彼が最も愛するナツミと海辺の見える白い一軒家にいた。ソファにどかりと腰をかけ、苦虫を潰したような顔を浮かべて彼は呟く。


「どうにも、嫌な予感がする」

『貴方がそんなことを言うなんて、珍しいですね』

「いやな、最近来た地球人の同胞……」

『?』

「あ、ナツミは会ってなかったな、んー、悪いやつではないよ。…とにかくあいつが来てから俺の心の深い部分がこう、ザワザワしている」

『新しい子が来て嬉しい、とかではなく?』

「んんん、そうじゃない、そういうんじゃないんだよなぁ。もっと言うと()()()()()()()。あいつの周囲にいる奴らがいつもの感じじゃない、ような気がしてなぁ」


 ───海野と湖礼、なんだけど。

 彼──栗栖は深くため息を吐いた。すかさずナツミが背中を優しく撫でる。「ありがとう、ナツミ。」僅かに安心した顔を見せ、男は女性の形をした、仮想の嫁を抱き寄せた。


「…とうとう、動くのかもなあ、敵も俺らも大々的に。イヤだ、戦いたくない。戦いたくねえよ。ずっとここにいて、ナツミたちと平穏な暮らしをしたい」

『貴方…それは、ダメ。そう言ってくれるのはとても嬉しいけれど、貴方が現実世界で生きてくれないと、私たちは…』

「わーってる!わかってるんだよ!…うん、いっそ俺の肉体も電子化してこっち住むか!そうしたらナツミたちともずっと一緒にいれるし、何も考えなくていいしな!衣食住も仮想(ヴァーチャル)だから問題ないし!天才では俺?!」


 どう見ても空元気で、どう見ても無理して笑っている。だってそんなことしても無意味だと、栗栖もわかっているから。そんな彼を見て、仮想の嫁(ナツミ)は設定された心がずきりと痛んだ。


『…できなくなさそうなところが怖いけど、ダメ。だって貴方はここの、管理人なんですからね』

「…うん」

『可能な限り、()()()()()()()()()()があるのよ。最後までみんなを守って。私たちの……いいえ、私の大事な、旦那さん?』

「……」


 彼らはその日ずっと、仮想世界で抱擁をしていた。

 日が沈んだあとも。


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