第29話 掘っ立て小屋
「メイさん!どこかに建物立てても良い場所とかない!?」
「えっと、メリエス商会では土地の売買も行っていますが……郊外なら大きな建物を建てられるスペースを確保出来ますよ?」
「え、勝手に立てて良いの?」
「流石に手続きはして下さいね?ですが、義勇軍の活動拠点を設けられるだけの土地はお貸し出来ますよ?」
義勇軍の寝床を確保しようと思ったら、宿がどこもいっぱいだったから郊外に建物を建てることになった。こうなってくると、もう義勇軍というよりかは共同生活グループだね。
オラージュちゃんの言う通り、大工上がりの人は多くて合計で36人もいた。昔大工をしていた人も含めると、50人を超える。これだけの人が居たら、簡易的な拠点ぐらいはすぐに出来そう。
あ、でもこの周辺で黒衣賊が現れたら数日は離れることになるだろうし、ダンジョンで強くなったらここを離れることになることを考えると、大工の人達を使ってしっかりとした拠点を作るほどでもないのかな?
「雨風を防げるだけの、小さな小屋を繋げ合わせる感じが良いかな?」
『完全に寝床として使用するだけになるだろうし、ダンジョンでの訓練が進めば数日間ダンジョンに籠ることも珍しくなくなるからなあ』
(パルマーさんは、どうしたら良いと思う?パルマーさんが私の立場なら、何をさせる?)
『砦を作る訓練でもさせれば?借りる土地を戦場だと思って、急ピッチで戦える砦を作らせる』
一先ず、掘っ立て小屋を建てるにしても木を切るところからやらないといけないし、今日は郊外に天幕で過ごす。明日から、ダンジョンに行かない組で生活拠点を整えていかないとね。そしてオラージュちゃんから、ダンジョンについて教えてもらった。
「ダンジョンの内部は1層2層3層と分かれているけど、2層が広大で南の大陸と繋がっていることは話したわね?」
「うん。だから通商ルートがあって、その近辺は安全地帯が多い。
……まだ2層の全域の地図って、出来上がってないんだよね?」
「1層はほとんどダンジョンの構造が変わらないけど、2層以降は変わるのよ。だから地図が出来ないし、通商ルートも完全に安全じゃない。弱い冒険者達は1層がメインになるけど、実入りを増やすなら2層に行く必要があるわ」
ダンジョンでは魔物がたくさん出て来るし、それを団体で狩るのも珍しいことじゃない。豚みたいな魔物は美味しいし、前回戦ったレイナールイノシシもこのダンジョンの1層にたくさんいるみたいで、1層の中では強い方とのこと。
……ということは、2層にはレイナールイノシシを超える魔物がわんさかいるってことだね。義勇軍の隊員の内、何人が2層に到達出来るかなあ。
「ところで、3層ってどんな魔物がいるの?」
「2層と3層の間の通路を通り抜けることが物理的に難しいドラゴンとかワイバーンがいるわよ。私も何度か行ったことはあるけど、すぐに撤退したわね。4等級冒険者になった今でも、あまり足を踏み入れたくないわ」
3層についても聞いてみるけど、単騎で挑めるのは2等級冒険者以上じゃないと難しいとのこと。オラージュちゃんでもダメなのかー。そんな3層に挑む人が、この街には多いそうだから、ここで義勇軍を集ったらその強い人が入ってくれないかな?
『その強い人がフレイの下になるメリットが薄すぎるわ。
……その3層が、最下層になっているという認識で良いな?』
「ええ、良いわよ。十数年前、3層を探索し尽くした1等級冒険者達のパーティーが最下層への入り口なんて無かったと発表しているわ」
「最下層?」
「……昔はあったとされる、3層の下にある階層のことね。ドラゴンが怖がるレベルの魔物が犇めきあっていて、最下層の一番奥に到達したものは、女神に願いを叶えられる、と言われていたわ」
「へえ。今は違うの?」
「今でも最下層の存在を信じている人はいる、って感じ。私も信じていた側の人間だけど……」
パルマーさんが、3層が最下層になっているかとオラージュちゃんに聞くけど、昔は3層の下に最下層があった?しかも、お願いごとを聞いて貰える?
あれ?なんか既視感があるんだけど……パルマーさんって、もしかして女神様?
『どこからどう見たらそんな結論に至るんだ……。まあとりあえず、明日からは1層攻略頑張れよ』
「うん!義勇軍を二つに分けて、交互にダンジョンで訓練していくよ。
訓練期間は……この近場に黒衣賊が現れるまで、とかどうかな?」
「既に黒衣賊の目撃情報はあるけどね。ただここメルヴィルに仕掛けて来るとは思えないし、襲撃があるとしたら、ここから西の都市群のどれかね」
この近辺の黒衣賊の情報を集めつつ、ダンジョンで戦いながら資金を貯める。そういえばクラウスから西の街道を進んだレイナール王国軍は、そろそろ黒衣賊と戦ったのかな?これからはそういう情報も集めていかないと、対応が遅くなっちゃうし、新聞とか買おうかな。




