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第15話 繋がり

「みんな起きてー!盗人を捕まえたよー!」


盗人を捕まえて、服や近くにあったゴミとかで雁字搦めにした後、私は周囲の人達を起こし始めた。深く眠っている人は、耳の近くでパンパンと手を叩くと結構すぐに起きる。パルマーさんに教えてもらった技だ。


『……マジで返すのかよ。誰がどれだけ盗まれたのかも分からないのに』

(それは分かってるよ。だから、盗人2人の財布にあった90000円分、きっちりここにいる人の数で等分するよ)


盗人を捕まえた時、盗人が持っている財産は国が管理することになる。そして盗まれた分の被害額が返されていくことになっているけど、この路地裏で生活しているような人に財産があった証明をするのはとても難しい。だから大半は、お金が返却されないし、盗まれた側は泣き寝入りすることになる。


でも、だからといって盗人を捕まえた人が国に引き渡す前に、盗人から財産を盗んで良いわけじゃない。暗黙の了解で見逃される、全部私のものにして良いお金と言われても、私は今ここにいる人達にお金を返したい。


「2人合わせて9万円あったから、ここにいる全員に3000円ずつ返していくよ!」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。盗人を捕まえたんだろ!?何で全部自分の物にしねえんだよ」

「え、だって元はみんなのお金でしょ?」

「た、確かに財布は軽くなっているけどよ……マジかよ、ありがてえ」


起こす時に人を数えたら、ちょうど30人だったから1人3000円分だね。1人1人に、3000円ずつ返していく。細かい小銭をかき集めたような90000円だから、両替とかは特にしなくても大丈夫そう。


「お、俺は4000円盗まれてるぞ!俺には4000円返せ!」

「おい、お前……!」

「ごめんね。そうすると2000円になっちゃう人がいるから、出来ないんだ。だから本当に4000円持っていたとしても、3000円ずつで我慢してね」

「なあ、90000円を30人に3000円ずつ配るって、あんたの取り分がないじゃないか。盗人共、本当は幾ら持っていたんだ?」

「正確には90930円だね。だから私の取り分は、端数の930円だよ。大丈夫、この人達を冒険者ギルドに引き渡せば達成報酬が入るから心配しなくても良いよ」

「達成報酬って、ここにいる奴らで集めた1万円だけだろ……?」


私を中心に、ぞろぞろと路地裏にいる人達が集まって来るので、1人ずつ手渡ししていく。あ!盗人を蹴ろうとしてる!!ダメ!


「盗人達は私がちゃんと警備隊に引き渡して罪を償ってもらうから、暴力は駄目!」

「ああ!?うるせえ!俺はこいつらに1万円以上盗まれてるんだ!こうでもしねえと気が済まねえよ!たかが3000円返しただけで良い気に」

「いい加減にしろ!ここにいる誰も捕まえられず、冒険者や国は捕まえようともしなかった盗人を捕まえ、本来ならあり得なかった返金までして貰っているんだぞ!」


盗人に襲い掛かる半裸の人に、それを御す冒険者風の人。路地裏生活者と言っても、結構色んな人がいるんだなあと思いながら、30人全員への返金を完了させる。うん、満足。


『自己満足で腹は満たせねえよ。せっかくの大金が……』

(もーいいでしょ!それに、お金なら1万円入って来るよ。盗人のお金890円に加えると、10890円。うん、良い仕事した!)

「なあ、あんたの名は何だ?」

「フレイだよ。年は13歳。昨日冒険者になったばかり」

「そうか。若い女なのに大人の男2人組の盗人を捕まえるとは大したものだ。

俺の名前はジラト。一応冒険者登録はしているが、違約金のせいですっからかんになってな。しばらくはここで寝泊まりしていたんだ」


冒険者風の人は、ジラトさんで一応8等級冒険者だったけど降格で今は9等級冒険者になっちゃったみたい。そっか、失敗して違約金が発生したら、私も路地裏で生活しなきゃいけなくなるかも。


「フレイちゃんだな?おら、恩人の名は忘れねえからよ、また何かあったらよろしくな」

「はい、よろしくお願いしますね」


一番最初に話しかけてきて「ありがてえ」と連呼していた人はジルさんという方で、結構ご年配の方だ。私の村とは違う村の出身だけど、故郷の村が壊滅した時に、ちょうどこの街に買い出しに来ていたみたいで、境遇は似ている。


この方も冒険者登録はしているけど、昇級試験は受けてないから10等級冒険者のままとのこと。昇級試験のことを考えると、オラージュちゃんのランクの4等級冒険者までの道のりって結構大変なんじゃ……?


『……そっか、こいつら全員冒険者登録はしているのか。低ランクの冒険者なんて、実質日雇い労働者みたいなものだしな』

(そうみたいだけど、声に元気が出たね?何か良いことあったの?)

『長期的に見たら、今回の9万円は無駄にはならなさそうだと思っただけだ。もうそろそろ朝日が昇る時間だし、さっさと盗人を警備隊の宿舎まで連行するぞ』

(うん!達成報酬も貰わないとね)


色んな人と知り合えたし、最終的にはパルマーさんに従ってこの路地裏に来たことは良かったと言えるかな。改めて縄でぐるぐる巻きにした盗人2人を引き連れて、今日も警備隊の宿舎の扉を叩きに行こう。何だかんだで、警備隊の宿舎は今日で3日連続の訪問だね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! …… フレイに取り憑いている存在が、かつて絶滅兵器作って8桁は下らない数の人間を殺した『魔王』とは思えない程の、このほのぼの感よ。w [一言] 続きも楽しみ…
[一言] パルマーさんとフレイの対比かつ情けは人のためにならずをパルマーさんが学んでるのがいい
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