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プロローグ 最悪の魔王

平和な世界になって欲しい。それが私の願いだった。


私のお父さんは、戦争に連れられて死んでしまった。中級農奴の両親から生まれた私は、その日からお母さんの手伝いをしながら働くことになり、朝から晩まで身体を酷使した。


とてもつらかったけど、私達中級農奴は下級農奴とは違い、10日に一度の頻度で休日がある。それがあるだけマシだと自分に言い聞かせて、必死に働く。


転機が訪れたのは、13歳の春。僅かな休みを使って、村のすぐ近くにある山を登っていた時のこと。あまりこの山は登らないように言われているけど、頂上から見える景色は村全体を一望できるから、そこが私のお気に入りの場所だった。


いつもとは違うルートで頂上を目指していると、茂みに隠れた場所に祠のような建物があるのを発見する。


「何だろう、ここ……?」


今まで見たことのないような建物で、その風化具合から、とても長い年月放置されていたことが分かる。誰も住んでないのかなと思いつつ、扉を開けようとすると、その扉を支えている部分が外れて扉が奥に倒れてしまった。


「あわわわわ」


もしかしたら、偉い人の別荘とかかもしれない。慌てながら、外れて奥に倒れた扉を追いかけ、中に入ると大きな部屋の両脇の蝋燭台に火が灯り、薄暗いながらも中を見渡すことが出来た。


内装は建物自体にヒビが入っているし、全体的に古臭さを感じるものの、とても高い身分の人が住んでそうな屋敷だ。光源が足りないのか、奥までは見えなかったので、興味本位で私は奥へ奥へと進んでいく。


すると、小さな部屋で行き止まりになっていた。この小部屋は、何のためにあるんだろう。首を捻っていると、どこからか声が聞こえた。


『左の円の真ん中に手を置け』

「ぴぃ!?」


まるで頭の中に、直接届くかのような声。というか実際に頭の中に響いた感じだ。周囲を見渡しても、誰もいないことが私の恐怖心を掻き立てる。はっきりと言えば、逃げ出したい。ここにこんな建物がありましたよと、上に報告すれば良いだけの話。でもせっかく遭遇した非日常、どうせなら先まで見ないと。


恐る恐る、手を小部屋の左の側面にあった円形の真ん中に置くと、部屋が閉まる。閉じ込められた!と思う間もなく、地面が落ちて行くような感覚を味わう。立っていられず、地面に四つん這いになるけど、なおも地面は落ち続ける。私、ここで死んじゃうの?


時間にして、たぶん1分ぐらい?ゆっくりと落ち続けた部屋は、再度扉を開ける。思わず小部屋から飛び出ると、そこはとても冷たい冷気で満たされた部屋だった。


そして正面には、窓がある。その窓から外を覗くと、とても大きな水晶のような物体があった。赤い湖の真ん中に、巨大な氷?あの赤い湖の正体は、もしかして溶岩?その中央にある氷みたいなやつは、氷じゃないのかな?確かあの溶岩って、とても熱いものだと教えられたけど。


『あれは氷だ。1000年以上前の勇者が作り出した、永久に溶けない氷。その中央にいるのが、俺だな』

「ぴぃ!」


また、頭の中に声が響く。その声によると、あれは1000年以上前の勇者が作り出した氷とのこと。……1つ、思い当たる節があった。私達の村で、いやきっとこの国に住む人全員が知っているぐらい有名な、勇者と魔王のお話。


1000年以上前、悪逆の限りを尽くした災厄の魔王を、勇者がその命と引き換えに封印するお話。その勇者のお蔭で、この世界に平和が保たれたという。ということは、今私の頭の中に話しかけている声って……。


「災厄の、魔王……」

『災厄の魔王とかむずがゆい二つ名止めて。まだ当時の最悪の魔王、の方が良いわ。

ああ、そうだ。右にある装置のボタンを言う通りの順番で押してくれない?そろそろ退屈で死にそうになっているからさ』


災厄の魔王、その本人!?


バッと身構えるものの、周囲は人影どころか物音1つしない。そして右の方を向くと、何十個もボタンのある、複雑な機械が置いていた。初めて見るし、何も分からないんだけど、これを動かしたら災厄の魔王本人の封印を解くってこと!?


「だ、ダメだよ!それって封印を解くってことでしょ。

災厄の魔王の封印なんて、解くわけないよ」

『……ここに来る人間は、大体はその身に余る大志とか野望を抱いているんだがな。はあ、久々に外に出たかったなあ』

「……そう言えば、どうやって声を聴いているんですか?あの氷の中にいるんですよね?」

『精神体になって、あの氷からは脱出しているぞ。ただあの空間内に精神体を通過させないための壁があるから、あの窓までしか近づけない』

「精神体……?」


思わず拒否をしたけど、話していると大量虐殺とか飢饉を起こした魔王とはとても思えない。精神体になって、窓の付近まで来ているとのことなので、窓の方をもう一回よく見ると、空間に人型の揺らぎが見える。


『別に肉体の方の封印を解けとは言ってない。ただあの壁の機能を、ちょっと停止して欲しいんだ』

「……解放されたら、何をするの?」

『んー、まずは世界がどうなったか見たいかな。あとは解放してくれた可愛い栗毛の女の子の、お願い事でも聞いてあげようかな』


願いを叶えてくれると聞いて、少し心が揺らぐ。……騙されるかもしれないけど、封印を解いてみよう。人に何かをお願いされた時は、とりあえず相手を信じる。死んだお父さんから教わったことだ。


「これ、どこを押せば良いの?」

『解いてくれるのか!?

ああ、えっとだな、右端の大きな赤いボタンを押してくれ。マニュアルが頭に入るはず』

「これかな?

うわあぁあああ!?」

『あ、言語インストールまでされてやがる。こいつ文字も読めないのかよ』


そして災厄の魔王さんの言う通りにボタンを押すと、一気に情報が頭の中に入っていく。とても頭が痛くなって、立っていられず私は地面に座り込み、そのまま意識を手放した。


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― 新着の感想 ―
[良い点] パルマ―!!! パルマ―wwww わろたわ!おかえり!
[一言] あら、結局封印は千年経ってもも溶けなかったのか、頑丈だな。
[一言] 本当にパルマーじゃねえか!!! あちらの感想で冗談混じりに書いたことが現実になって草生えますわ
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