音楽会の季節③
江藤先生と対決してたときは
必死だったけど
今、心配そうにあたしを見てる雄ちゃんの隣にいると
ふっと緊張の糸が切れた。
そして・・・
あれ?、
つーーーーっと頬を伝う涙。
あれれ?
自分では分からなかったけど
ああいう場面ってすごく緊張するらしい。
こんな後になってびっくりしたことに気付いたか?
何で涙が出るか自分じゃよく分からないまま
何だかほんとに泣き出してしまった。
何が悲しいか、それでも自分で分からない。
しばらく車を走らせてから、雄ちゃんは
いつかの綺麗な夜景の見えるところに
連れて行ってくれた。
「落ち着いたか?」
「うん。ごめん。びっくりしたでしょ?」
あたしは雄ちゃん見上げて笑った。
大丈夫。もう笑える。
「で、何があったんだ?いってみな。」
雄ちゃんに言うのもなぁ。
で、言わないことにした。
「言わない。でも大丈夫だから。」
「なんだよー、みずくせーな。言ってみろって。」
「あのね雄ちゃん・・・」
あたしは深呼吸して
「もしね、他の人につきあってって言われたらどうする?」
雄ちゃんは、はぁ?って顔して
「つき合うわけないじゃん。なんで?」
「言われたことある?」
一瞬間が空いて・・・
「ある・・・」
ドキッッッッ。聞くんじゃなかった。
「そんなのよくあるけど、気にするな。」
声にならないあたしの胸の叫び・・・
気にしないわけないでしょーーーーーーー
よくあるのかよ!!!
「なんか俺、よく好きって言われるんだけど
だからって、俺が好きになるわけないでしょ。」
そりゃそうだけど。
「お前はもし誰かに好きって今言われたら
そいつを好きになるか?」
「絶対にない。」
「だろ?そういうこと。だから気にするな。」
雄ちゃんは、ポンポンってあたしの頭に手を置くと
「今日の話はそういうことか・・・」
と、つぶやいた。
えっ?
あたし何も言ってないよ・・・
「もてる彼氏がいるとお前も大変だな。」
って、雄ちゃんはニコッ。
えっ?
「お前、分かり易いな。」
そうなの?
「いっそ、つき合ってます宣言するか?」
雄ちゃんは真面目な顔して言う。
それは・・・
イヤです。
だって・・・
このままならもうしばらく雄ちゃんと一緒に
同じ学校で働けるけど
もし、つき合ってることがばれたら
多分雄ちゃんは来年
違う学校にかえられるだろう。
あたしは今年来たところだから。
イヤです。そんなの・・・
綺麗な夜景に酔ったのか
やけに今日は涙が出る。
いろいろ考えてるとまたウルウル・・・
雄ちゃんはそっとあたしの肩を抱き寄せて
「俺が守ってやるから、心配すんな。」
って、優しく言ってくれた。
その優しさが胸に染みて
また涙が止まらなくなった。
雄ちゃんは、あたしの涙が止まるまで
ずっと、そのままでいてくれた。
きっと明日も何かあるだろう。
あんな中途半端な幕切れなんて
女のもめ事にあるわけないし。
だけど、あたしの心に雄ちゃんがいる限り
きっと大丈夫。
あたし頑張るから。




