研究授業③
昨日も一昨日も雄ちゃんは
中野先生に連れられて研究授業の教材研究。
今日は一緒に帰りたい!
「雄ちゃーん、今日は一緒に晩ご飯食べたいよー。」
昼休みにメールを送った。
程なく雄ちゃんから返事が来た。
「今日も多分帰れない・・・
帰りはいつも11時くらいだから
一緒には無理だろ・・・ゴメンな。
授業終わるまで待ってくれな。」
思わずため息。
そこまで、中野先生やらなきゃダメなの?
放課後も中野先生は雄ちゃんを毎日独占。
何かと雄ちゃんを連れ廻ってる。
連れ廻ってるって人聞きが悪い?
いろいろ伝授している。
まさかおじさんに雄ちゃんを取られるなんて
思っても見ませんでした・・・
で、つい愚痴が・・・
「いいもん。雄ちゃんが一緒に食べてくれないなら
一人で寂しくたべるもん・・・」
メールで書きかけて
自分で悲しくなったので削除した。
うーー研究授業なんて嫌いだぁ・・・
「雄ちゃん先生!ちょっとお話が!」
中野先生が呼び止める前に
あたしは二人の間に割って入った。
こわーーい顔して。
毎日雄ちゃんを中野先生に独占されて
はや一週間。
目の前に毎日いるのに
毎日お預け食ってるあたしの身にも
なってみなさいってのよ。
もういいでしょうが!
あきれたことに土日まで学校に呼び出されて
雄ちゃんは休み無しです。
中野先生も無いんだけど・・・
「中野先生!
今日は雄ちゃん先生を借りていいですか!」
勢いよく中野先生にも言うあたし。
ダメなんて言わせないから!
「雄輔、お前何したんだ?
しっかりあやまっとけよ。」
中野先生はいつもと違うあたしの剣幕に
何か危険な物を感じ取ったか
雄ちゃんをあきらめてくれた。
「やるなぁ。びっくりしたぞ。」
雄ちゃんは車に乗るなり笑いながら言った。
「だって!何日雄ちゃんを独占したと思ってんの!」
あたしがプンプン怒ってるのを見て
雄ちゃんはまた笑った。
「よーし。今日はあそこ行くか。」
そう言うと、久しぶりに
あたしが好きな
ランプのお店に連れて行ってくれた。
ここは、雄ちゃんが
初めてあたしの薬指に指輪をはめてくれたところ。
テーブルにつくと優しいキャンドルライトが
雄ちゃんの顔を照らしていた。
一緒に仕事してるけど
こうやってまともに顔見るのって久しぶり・・・
「なんだよ。久しぶりなんで見とれてんのか?」
雄ちゃんがあたしを見て言った。
図星なんで赤くなったあたし。
「あ、赤くなった・・・分かり易いなぁ。
相変わらず。」
雄ちゃんはニコニコ。
「もう!雄ちゃんのバカ。」
赤くなったまま治らないじゃない・・・
美味しい食事と素敵な雰囲気と雄ちゃんの笑顔に
素敵な魔法にかけられたみたい。
この一週間の辛抱が全部帳消しになるくらい
し・あ・わ・せ・
そして、いつもの夜景を見に行った。
前来たときはそう思わなかったけど
今日は滅茶苦茶寒い。
冷たい空気のなかの夜景は輝きを増していた。
「すげー寒いな・・・」
雄ちゃんはそう言うと
車からコートを持ってきて羽織った。
なんだ・・・かしてくれるんじゃないのか・・・
と思ったら・・・
「キャッ!」
後ろから雄ちゃんはふわっとあたしを包み込んだ。
まるで二人羽織みたいに。
「これで暖かいだろ?」
後ろから雄ちゃんは耳元でささやいた。
「つめてー体して・・・」
雄ちゃんはギュッとあたしを抱きしめた。
・・・なんか、夜景なんか
目に入らなくなったんですけど・・・
「そろそろ帰るか。」
多分あたし達は同じ気持ちで
どちらからともなく手をつないで車に戻った。
心臓の音が聞こえそうなくらいドキドキしながら。




