テテオドットエルルが不幸になるのは、「 御礼をしたい 」と言ったセロフィートの言葉を其のままの意味で素直に受け取ってしまったマオの落ち度が招いてしまった事態である事は間違いない。
セロフィート
「──テテオドットエルルさんは、マオだけに教えたのでしょうか?
其とも他の〈 冒険者 〉にも話したのでしょうか?
知りたいです」
マオ
「う〜ん……。
ニュートタオリッツにも話した──って事は言ってたけど……」
セロフィート
「ニュートタオリッツさんです?
確か……、彼は『 3度の飯より噂話が好き 』だとか…」
マオ
「うん。
歩くお喋りマシンガンとか言われてる。
直ぐに話が広まっちゃうんだ。
何でテテオドットエルルは、ニュートタオリッツにも話したんだろう??」
セロフィート
「其の理由も聞いてみる必要がありそうですね」
マオ
「≪ 魔物の村 ≫の事が広がったら、此処に〈 冒ぼう険けん者しゃ 〉が来くるかも知しれないんだよな。
どうなっちゃうんだろうな……」
セロフィート
「〈 冒ぼう険けん者しゃ 〉による『 魔ま物もの狩がり 』が始はじます。
大たい量りょう虐ぎゃく殺さつです」
マオ
「えぇっ?!
た、大たい量りょう虐ぎゃく殺さつぅ〜〜〜??
其それって……どっちが虐ぎゃく殺さつされる側がわになるんだ??」
セロフィート
「双そう方ほうに決きまってます。
人にん間げんは弱じゃく者しゃを虐しいたげ、優ゆう越えつ感かんに酔よいしれる事ことを、こよなく好すきます。
老ろう若にゃく男だん女じょ問とわず、弱よわい者もの虐いじめが大だい好すききな生せい物ぶつです。
戦せん力りょくにもならない無む抵てい抗こうで弱よわい〈 魔ま物もの 〉は1番ばんに狙ねらわれます。
〈 冒ぼう険けん者しゃ 〉には手て柄がらを取とって名なを上あげたい者ものが多おおいです。
〈 魔ま物もの 〉の質しつよりも倒たおした量りょうで競きそい合あう〈 冒ぼう険けん者しゃ 〉も居いるでしょうし、格かっ好こうの餌え食じきになります」
マオ
「……………………。
未まだ人にん間げんは襲おそわれてないだろ?」
セロフィート
「其それは分わかりません。
人にん間げんを襲おそう〈 魔ま物もの 〉は強つよいです。
〈 冒ぼう険けん者しゃ 〉がいきなり倒たおしに掛かかるとは思おもえません。
先まずは手て頃ごろに弱よわい〈 魔ま物もの 〉を倒たおしながら慣なれる事ことから始はじめるでしょう。
〈 魔ま物もの 〉の弱しゃく点てんを探さぐる為ためや〈 魔ま物もの 〉へ大だいダメージを与あたえるコツを見き極わめる為ため、経けい験けん値ちを積つみ上あげる筈はずです。
其その〈 冒ぼう険けん者しゃ 〉達たちの犠ぎ牲せいとなる〈 魔ま物もの 〉の数かずは計はかり知しれない量りょうとなります」
マオ
「……………………そんな…」
セロフィート
「──さて、マオ。
君きみはどちらの味み方かたをします?」
マオ
「え……」
セロフィート
「君きみは今いま、≪ 魔ま物ものの村むら ≫に居います。
〈 冒ぼう険けん者しゃ 〉達たちがどんなに急いそいでも、此こ処こ魔物の村へ到とう着ちゃくするのは14日か2週間後ごです。
其それ迄までの間あいだ、マオは此こ処こ魔物の村で何なにをします?
〈 冒険者彼かれ等ら 〉が到とう着ちゃくする前まえに≪ 魔ま物ものの村むら ≫を壊かい滅めつさせます?
其それとも〈 魔ま物もの此方こちら 〉側がわで〈 冒険者彼かれ等ら 〉を迎むかえ撃うちます?
ワタシと共ともに双そう方ほうの行ゆくく末すえを傍観みまもる道みちもあります。
どうしたいのか、マオが決きめてください」
マオ
「セロ……。
『 面おも白しろくなりそうwwww 』とか思おもってるだろ〜〜〜!!」
セロフィート
「そんな事こと……」
マオ
「オレの目めを見みて言いえよ!!
あからさまに目めを逸そらすな!!
態わざとらしいんだよ!」
セロフィート
「ふふふ♪
栗リ鼠スみたい両りょう頬ほほを膨ふくらませた顔かおで言いわれても……ね?」
マオ
「『 ね? 』じゃ、ないよっ!!
………………オレは…何どれも嫌やだよ。
≪ 廃はい墟きょ ≫に住すみ着ついた〈 魔ま物もの 〉のボスみたいなのと話はなせないかな?
〈 魔ま物もの 〉側がわからは、人にん間げんを襲おそわない様ように頼たのむんだ。
其それと人にん間げんを餌エサと見みない──って。
セロ、オレの代かわりに魔ま物ものと交こう渉しょうしてよ!」
セロフィート
「はあ?
ワタシに交渉お願ねがいさせる気きです?」
マオ
「うん!
…………だってさ、オレが交こう渉しょうしても最さい後ごは何い時つも破は談だんしちゃうし……。
セロは交こう渉しょう上じょう手ずだし、オレより説せっ得とく力りょくがあるよ。
オレよりもセロの話はなしになら耳みみを傾かたむけてくれると思おもうんだ。
頼たのめないかな?」
セロフィート
「何な故ぜ遠えん慮りょがちにワタシの顔かお色いろを窺うかがいながら言いいます?」
マオ
「えっ……」
セロフィート
「マオとワタシの仲なかでしょう?
恥はずかしい事ことも毎まい晩ばんする程ほどの仲なか良よしです」
マオ
「毎まい晩ばんなんてしてないだろ!!
誤ご解かいされる様ような言いい方かたすんなっ!!」
セロフィート
「少すこし脚ちゃく色しょくしただけです」
マオ
「脚きゃく色しょくすんなっ!!
…………顔かお色いろを窺うかがうな──って言いうんなら、どうすればいいんだよ……」
セロフィート
「決きまってます。
『 おねだり 』です。
マオの得とく意い技わざでしょう?」
マオ
「得とく意い技わざにした覚おぼえはないけどっ!!」
セロフィート
「そうです?」
マオ
「と、兎とに角かく!
セロは魔ま物ものと交こう渉しょうしてくれよな!」
セロフィート
「はいはい。
マオが望のぞむなら。
其それにしても、『 人にん間げんを襲おそわない事こと 』と『 人にん間げんを餌エサにしない事こと 』という此こ方ちら側がわの条じょう件けんを〈 魔ま物もの 〉側がわに呑のませるなら、其それに見み合あう条じょう件けんを提てい示じしなければいけません」