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ダブルデートside雪夜④

「ちょっとショップ入ってみてもいいですか?ラッチュに行きたいです。」


後藤がショッピングモールの前で言い始めた。


「いいよ。」


結衣がすぐに同意する。オレも別に異論はない。正哉に見られたので頷いておく。


「じゃあ、行くか。」


ショッピングモールの中に入り、ラッチュへ行った。石鹸やらバスボムやらの匂いが混じり合っている。ちょっと異臭に感じるけど、入るとすぐ慣れた。


「実は買い溜めしてた冬季限定のシャワージェリーが無くなっちゃったんですよ。新しい香りが欲しいです。」

「去年の冬季限定も良かったよね。私も使ってた。妹もお母さんも使うからすぐ無くなっちゃったけど。」


シャワージェリーねえ…噂にしか聞いたことないけど。プルプルのゼリーみたいな石鹸でしょ?どんな感じかちょっと興味はあるけど使ったことない。


「香りが堪りませんよねえ…夏に使うのは勿論良いんですけど、冬季限定のはまた別格で。今は何使ってます?」

「今はポードフルールのフレグランスボディシャンプー。香りは2種類あるけど、うちで使ってるのはローズの方。すごーく良い香りでしっとりする。」


キャンプや温泉旅行などの外出以外での結衣のお風呂上がりは見たこと…あったな。酒井と相合傘して結衣に誤解された日、濡れた結衣がうちでお風呂入った。あの日はオレも凍えきっていて、結衣のお風呂上がりの見た目や匂いを堪能している余裕はなかったな。お風呂上がりの結衣見たいなあ…匂いも嗅ぎたい…って言うと変態くさいけど。


「いいですねえ。私はどんなのにしようかな。」


後藤が店内を回って石鹸を探し始めた。


「雪夜は彼女にどんな匂いがしてて欲しい?」

「普段はオレがあげた香水の匂いがしてて欲しい。」


そのつもりのマーキングだしな。他の男の移り香とかいらない。オレの作った匂いに染めておきたい。


「でもお風呂上がりはやっぱり石鹸の香りがしてて欲しいから、いい匂いの石鹸を購入しててくれるのは嬉しい。」


ほのかに香る湯気と石鹸の匂いって相手が結衣なら男心をくすぐられるな。想像しただけでおいしそう。


「彼女のお風呂上がりとかお目にかかってみたいよな。」

「うん。」


正哉に同意した。オレも青少年だから洗い上がりほかほかの結衣なんて遭遇したら普通にムラムラしちゃうと思うけど。お泊まり会とか興味あるけど、中途半端なお泊まり会はきっと生殺しだろうなあ…月姉あたりがそのうち企画しそうな気もするけど。


「雪夜は美人なお姉さんが二人いるよな?二人とも男いる?」

「くっついたわけじゃないけど友達以上恋人未満な男がいる。」

「お姉さんガード堅いの?」

「かなり。」

「朝比奈さんとどっちが堅いかな?」

「桃姉は結衣と同程度。月姉の方はちょっと別種な感じ。ときめかせるのがすげー難しい女だよ。月姉の相手は頑張ってるけどまるで…女王様と犬って感じ?」


桃姉は心の傷の問題だから包容力と手腕でフォローする感じだけど。月姉はねえ…あの無駄毛まみれの心臓をときめかせるのは難しそう。でも情で絆すことなら出来そうだから一条には頑張ってもらいたい。犬のように従順に。結衣は狼の牙を見せたら捕食できるタイプだけど、月姉は狼の牙を見せたらへし折るタイプだ。


「SMにしか聞こえないぞ、それ。」

「アハハ。多分ぶたれて悦ぶ趣味はないと思うけどね。我儘言われて振りまわされるのは喜んでるみたいだからちょっとMなのかもな。」

「雪夜はどうなんだよ?SとMで言うと。」

「どっちだと思う?」


くすっと悪戯っぽく笑った。


「…Mな雪夜が想像できない。」

「まあ、気持ち良くイジメてあげられたらいいかなとは思う。」

「なんかエロい…」


甘くイジメてあげるのがベストだよね。別にセックスのことだけに関わらず、さりげなく結衣をいじめるのは割と好きだったりする。さりげなく高所に連れだしてみたり、ちょっとイジワルなことを囁いてみたり。やりすぎないのが基本だけど。嫌われたいわけじゃないから。


「お姉さんの相手は雪夜がお兄さんと呼びたい人?」

「あんまり…」


二人ともいまひとつ尊敬できるタイプではないな。


「残念。」

「正哉の兄さんの彼女は?」


正哉には大学1年のお兄さんがいる。ちょっとけだるい感じの退廃的な雰囲気のお兄さんだ。見たことあるけど喋ったことはあんまりない。


「可愛い人だよ?小動物みたいで。兄貴がイジメるとすぐはわはわする。母さんとも仲良いし。でも犬が苦手みたいで茶太郎に追っかけられると涙目。兄貴はその顔が気に入ってるらしくて、よく嗾けてるけど。」

「正哉の兄さんこそSじゃん!」


正哉がアハハ!と笑っている。


「いやあ、最近平和だよな。藤森ふじもりいなくなったし風間かざま派も大分変ったみたいだし。如月きさらぎ派もAKITOにド嵌まりしてるから雪夜の方にはあんまり行ってないし。」


如月派はAKITOという新人男性アイドルにド嵌まりして、みんなでライブ行くとか何とかキャーキャー言ってる。関心がオレから外れてくれてありがたい。AKITO…ありがとう。スキャンダルなど起こさず、末永く活躍してくれ…


「あ、雪夜、正哉、久しぶり。今日も二人でお出かけ?」


百介が声をかけてきた。


「百介か、久しぶりだな。オレらは前に言ってた彼女とのデート。今日飯島鮮魚店も行ってきた。」

「ダブルデート?」

「そう。」

「へえ。良いなあ。」


百介が羨ましそうな顔をした。


「紹介するよ。結衣!」


呼びかけると結衣が振り向いて、後藤と一緒にこちらへやってきた。百介の目は結衣に釘付けだ。


「麻衣ちゃん…」


小さく呟いた。その様子を見てアチャー…と思った。


「の、姉の朝比奈結衣です。麻衣のお友達?」


にこにこ百介に問いかける。


「あ。え?あ。えっと…去年麻衣ちゃんと同じクラスだった葛西百介かさいももすけです。」


多分だが百介がハートブレイクした相手は麻衣さんだろう。そっくりな結衣を見る目に衝撃が隠せてない。


「百介。こっち俺の彼女の美穂な。」

「後藤美穂です。よろしくお願いします。」

「よ、よろしく。」


百介はうろたえながら挨拶をした。


「こっちオレの彼女の結衣ね。」

「よろしく。葛西君。」

「よろしく…」


結衣を見て麻衣さんを思い出してるのだろう。ちょっと凹んでる。

百介の背中をばしばし叩いた。


「元気出せって。」


自分の恋が破れても麻衣さんが笑顔の方が良いんだろ?


「…うん。雪夜たちはデートどこに行ったの?」

「水族館。」

「その帰りに魚を食べるとか…鬼畜の所業だよ。」


百介が唖然としている。


「ですよねえ。」


後藤が乗っかった。


「なんだよ。旨かったろ?」

「美味しかったから悔しくて…」


しょぼんとした後藤に周りが和んだ。


「結衣さんも悔しかったですか?」


百介が結衣に話題を振る。


「おいしかった。」

「結衣は水族館にいるときから魚を食べる方の目線で見てたからね。」


カクレクマノミを食べようとか。結衣がむくれた。


「雪夜君のイジワル…」


妹の友達の前でそんなこと言わなくっても良いじゃない!って感じかな?むくれてる結衣も可愛いけど。ぷんと膨らんだ頬に指を当ててつつく。


「そんな結衣も好きだよ。」


うにゅにゅっと眉が歪んだが、結局怒りを維持できなくてにへらっと笑っている。結衣が可愛すぎてツライ…


「くっ。イケメンなんて滅びれば良いのに…!」

「百介もどっちかって言うとイケメン寄りだと思うけど?」


知的な感じで顔立ちが整ってるんだよね。体型もがりがりでもムキムキでもなく、スマートだし。服はちょっとダサめだけど。その変な柄のロンTは止めた方が良いと思う。


「お世辞は良いよ…」

「いやいや、お世辞じゃないし。顔は良いと思うよ?服のセンスはいただけないけど。」

「うん。よくダサいって言われる。」

「改善しろよ。」

「どんな服買ったらいいか全然わかんないんだよ…」


百介が困った顔をした。オレと正哉は百介の着ている服をしげしげと観察した。春日さんが見たら怒りそうなセンスしてる…。


「コーディネートのセンスもないけど、パーツもちょっとな。なんなの?その変な柄のロンT。」


やっぱり正哉もそこ気になるよね?なんだろう?黒いTシャツの両胸に1つずつ円形の白い丸があって上にフサフサが生えてる。乳パット?って聞きたくなる上に、メンズでそういうフサフサが生えてる服ってあんまり見ないよね。そんなアイテムどこで売ってるの?


「てゆーか、黒は使いやすいアイテムだけど、黒のTシャツに黒のカーディガンに黒のパンツって…今日誰かの葬儀?」


見事に黒尽めだ。そのロンTは致命的な欠陥アイテムだけど、カーディガンとパンツは別々に合わせる分には問題なさそうなアイテムなのに。


「靴はそろそろ買い換えた方が良いぞ?先端変なシミが出来てるし、踵ボロボロ。」


なんか油シミっぽいよね。どこでつけてきたんだかわかんないけど、なんか汚い。


「鞄もどうなの?そんなリュック背負って。登山帰り?」


鞄もお洒落な感じのがいっぱいあるはずなのに「ちょっとハイキングに…」みたいなイメージのリュック背負ってる。


「うう…そんなこと言ったって…ちょっと個性的なアイテムの方がお洒落かなって思ったんだもん。明るい色を着るのは何となく気後れしちゃうし、スニーカーはコンビニでバイトしてると知らず知らずの間にフライヤーの油シミが…鞄ってあんまり持ってないしどういうの買って良いかわかんない。学校じゃあ、みんな制服に通学バッグだし。」

「自信がないなら個性的なアイテムを取りこむのは止めた方が良い。淡い色を少しは取りこんだ方が良いとは思うけど、淡い色と濃い色両方で全体のバランスを取るんだよ。コンビニでバイトしてるって言うけど、今バイト帰りなの?」


それなら靴は仕方ないとは思うけど。バイト先の控室で履き替えてくるのがベストだけど、靴置くスペースないかもしれないし、そこまで多くは望まない。


「違うけど…」


違うんかい。


「バイト用の靴と普段の靴は分けておいた方が良いよ。お気に入りの靴が汚れちゃったら悲しいでしょ?鞄は街ゆく人をちゃんと見ろ。色んな鞄持ってるでしょ?自分と同い年ぐらいの男の子がよく持ってるタイプの鞄が平均。別に百介にお洒落になれとか言ってない。普通になれ。服が普通なら百介は美形ブーストかかるから大丈夫だ。」


非モテが妬ましがる美味しいブーストがな。普通にしてるだけでモテまくる。特に百介は性格も良いし、好ましく思ってくれる女性は多いはずだ。


「うーん…」


百介は困った顔をしている。どっかで一般人が気軽に立ち寄れるファッション講座とか開いてないもんかね?


「俺、百介のクローゼットとか滅茶苦茶興味ある。」

「オレも気になる。」


どんな致命的なアイテムが揃ってるのか。ロンTを見ると悪い意味で期待値が高い。怖いもの見たさ的に見たい。


「じゃあ、見に来る?」

「行く行く。百介、連絡先交換しようぜ?」

「オレとも。」


百介と連絡先を交換した。結衣と後藤はその様子を微笑ましげに見ている。休日、正哉と一緒に百介のクローゼットの整理に行くことにした。

百介と別れて再びぶらぶら。


「葛西君の服何とかするの?」

「うん。百介は少し磨けばかなり光ると思うし。」


ちょっと磨いてみたい気がする。興味ある。


「彼女さんとかと一緒に服選んだりしないのかな?」

「百介ハートブレイク中だから。」

「そうなんだ?」


相手は多分麻衣さんで。麻衣さんの気になる人って言ったらカズテル先生か?そりゃ立場あって動けないわ。カズテル先生はあと2年近く大人しくしてるしかないな。2年経っても交際とか大丈夫なのかな?和郎さん怒んない?大丈夫そうな気はするけど。


「雪夜。そろそろお開きにしようぜ。」

「そうだな。正哉、後藤、またな。」

「バイバイ。美穂ちゃん、正哉君。気を付けて帰ってね。今日は楽しかった。ありがとう。」

「こちらこそありがとうございます。朝比奈さんと七瀬君もお気をつけて。」

「またな。」


正哉と後藤と別れた。結衣を送って帰る。


「結衣、ダブルデート楽しかった?」

「うん!ありがとう。雪夜君!」


結衣は可愛いなあ。ナデナデしておいた。



おしまい。

本当に気ままなデート風景を描写しただけですね。需要があるのか疑問になります。なんとなく書いちゃうからUPもしちゃうけど。


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