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異世界訪問は突然に  作者: 矢吹さやか
第1章
1/39

#000 プロローグ

2作品目です。平行投稿になってしまいました……。

もう1作品はこちらです↓ お目汚し程度の作品ですが、お暇があればご覧ください。

http://ncode.syosetu.com/n1320dk/


本作も至らぬ点が多々あるかと思いますので、ご遠慮なく突っ込んでください。

続きを読んでもいいという奇特な方は、ブックマーク等お願いします<m(__)m>


今回はプロローグです。よろしくお願いいたします。

「お兄ちゃん!」

 と、私を呼ぶ声が聞こえる。


 今は冬だ。今年は雪が多い。

 今日は朝から降り始めた雪が、昼頃には大雪になり、日の沈むころ漸く止み始めた。

 交通量の少ないこの路地は、5cmも雪が積もっていて、歩くのが大変だ。

 都会は雪に弱い。今日も各電鉄会社の運行は中止、もしくは間引き運転になっている。

 バスは遅れながらも走っているようだが、あちらこちらで事故もあって、なかなかやってこない。


 仕方がないので、学校から歩いて帰っている。

 卒業間近の今、学校に頻繁に行く必要はないのだが、大学入学に必要な書類を揃えるために、行ってきた。

 午前中はまだましだったので、何とかなるだろうと思っていたのが間違いだった。

 帰るころには激しくなって、学校近くの喫茶店で止むのを待っていたが、話にならなかった。

 仕方なく、歩いて帰ることにする。

 言ってもバス亭5個分くらいだ。この雪でも1時間も歩けば大丈夫だろう、と歩きはじめたところ、声がかかったわけだ。


 そういえばそろそろ終業時間だ。

 流石に今日は、部活も休みなのだろう。普段一緒に帰ることはない。妹は部活だし、私は受験生だったからだ。


「一緒に帰ろうよ!」


 こんなに雪が積もっていても、妹には関係ないらしい。いつも元気だ。

 二人兄妹の私たちは、自分たちで言うのもなんだが、仲が良い。

 喧嘩することはほとんどないし、妹は下の兄弟特有の「兄ができることは自分もする」というタイプではない。そのためだろうか、お互いがお互いをきちんとカバーしあえる、そんな関係だ。

 かといって、別にブラコン・シスコンという訳ではない。


 たまに勘違いする奴もいるが、流石にそれはない。


 贔屓目でなくても妹は見た目もよいし、校内では人気者である。

 性格も明るいので、誰彼となくそつなく付き合えるし、先生方の受けもよい。今は1年生だが、2年生になったら生徒会活動にも参加するだろう。先生方のそういう希望を何回も聞いた。本人に直接お願いすればいいものを、なぜ兄に回すのだろうか。

 人気者である以上、男子からの告白も何回もされたことがあるそうだ。すべて丁重にお断りしているらしい。因みに私も私の数少ない友人や、友人ではないレベルのクラスメイトからも、妹に取り成してほしいと頼まれることは多かった。もちろん、私もその場で丁重に断りを入れる。

 そもそも自分でちゃんと言えない奴は、話にならない。


 かといって、別にブラコン・シスコンではない。くどいようだが、大事なので二回言っておく。


 人気者の妹と対照的に、兄である私は、成績はそこそこよいが、どっちかというと表現が下手というか、あまり人づきあいが上手ではない。

 先ほども触れたが、友人は数多くはないし、親友と呼べる奴はほぼいない。

 まぁ、どうせ3年間のことだし、そこまで突っ込んだ関係にならなくてもいいのではないだろうか、という気がしている。


 じゃぁ、どこでそういう友人を作ればいいのか、と言う事にもなるが、やはり自分の好きな分野や仕事で仲間を作るのがいいんじゃないかと思う。


 一緒に歩いていると、妹は一生懸命学校での話をする。

 授業の話、先生の話、友だちの話、部活の話。

 その話は止まることがない。

 時折笑いながら、時折怒ったふりをしながら、いろんな話をしてくれる。

 私はその話に時折相槌を打ち、時には口を挟み、二人の時間を楽しんでいた。


「今日は私がご飯作るんだ!お兄ちゃん、何が食べたいかな?」


 両親は共働きで、帰りが遅くなることが多い。それでも母親は早めに帰ってくるのだが、週に何回かは家事負担軽減ということで、妹が食事を作ることになっている。

 そうか、今日は妹が食事当番か。


「そうだな、寒いし、作るのも大変だろうから、鍋なんかはどうだろうか。」

「お、いいこと言いますね~。私もそれがいいんじゃないかと思ってたよ!」


 結構妹と意見が合うのだ。

 もしかすると妹が合わせてくれているのかもしれない。

 もし、妹が合わせるつもりがなくて、意見が合っているのであれば、お互いに良く見ているということになるのだろう。


 妹というのは、兄にとっては特別な存在だ。少なくとも私にとってはそうだ。

 私は妹を守る必要があるし、妹は兄にそれを頼っても構わないものだ。

 何があろうとも私は全力で妹のことを守ろうと思っている。


 雪の中を二人で歩いていたら、寒さなんて気にならなかった。

 寒いということを感じる暇もなかったと言っていい。

 来年からまた学校が離れて、すれ違う生活になるだろうが、妹とのひと時は私にとって、欠かせない生活、いや、人生の一部だ。


 鍋の材料を入手するため、二人で近所のスーパーに行く。

 きのこ類は家にあった。

 鍋のベースになる出汁をどうするか、それによって野菜と肉の組み合わせも変わる。


「今日はこれにしようよ!」

 と妹が突き出してきたのは、カルボナーラ風味の出汁だ。


「カルボナーラ風味?最近はそんなものまであるのか?」

「うん。ちょっとこの前テレビでいろんな出汁の元を使った鍋特集やっててね、一番興味を引いたんだ。」

「脂肪分が高そうだな、コレ。あんまりバクバク食べると太るぞ~。」

「え、お兄ちゃん、太った私は嫌かな。」

「私は別に構わないが、お前の年頃だったらそういうの気にするだろう。まぁ、多少太ってもあんまり変わらないと思うけどな。」

「ならいいや!」


 兄からの視線ばかり気にしても仕方がないぞ、妹よ。

 私にとって妹は人生の一部ではあるけれど、それは有限なのだ。


 大人になれば、私も妹も全く別の伴侶と新しい家庭を築くことになるだろう。

 その時は人生の一部を切り離して、別の道を歩まなければならない。

 その時視線を向けるのは、向け合うのは互いの伴侶であって、今の私たちではない。


 それでも今の妹にとってみたら、兄の存在は大きいのかもしれないな。


 結局カルボナーラ風味の鍋の出汁を選択したので、肉類はやはりベーコンか。

 しかし、鍋に入れるベーコンの量とか想像がつかないな。

 沢山入れすぎると塩辛くなりそうだし……。

 私たち兄妹はいいとしても、両親には辛いんじゃないだろうか。


 そう思って、ベーコン以外の肉に淡白な鶏肉などを選んだ。こちらは特に味付けなしで行けるだろう。


 会計を済ませて、購入商品を袋詰めにする。

 袋は妹が持っていた。用意周到だ。学校にまで買い物袋を持っていくとは……。男子が見たら少し幻滅するんじゃないだろうか。


 外に出たときには雪は完全に止んでいた。

 冬の夜は早いので、もう真っ暗になっている。

 雪が降った時はここからが危ない時間だ。

 気温が下がるにつれて、足元が危なくなってくる。


 妹に注意深く歩くよう伝えて、一歩踏み出したところで、自分が転んだ。

 買い物荷物もあって、先ほどとは重心バランスが異なっていることに、あまり意識をしなかった罰だ。

 恥ずかしいな、結構。

 妹はそれを見て、心配そうに寄ってくる。

 幸い、頭も腰も打たず、手もついていないから骨折の心配もない。少しコートが濡れただけだ。


「もう転ばないように支えてあげるね!」

 妹は、私が荷物を持っていない方の腕に身体を寄せて、腕を巻き付ける。

「いや、それじゃかえって歩きにくいよ。」

「歩きにくい方が慎重に歩くから、これでいいんだよ。私がくっついていたら嫌なの?」

「そんなわけじゃないさ。」

「よし、じゃぁ、帰ろうか!」


 決して、私たちはブラコンでもシスコンでもない。とても大事なことなので三回言っておく。


 ゆっくり歩いて漸く家に着いた。

 結局買い物込みで2時間かかった計算になる。

 それでももちろん、両親は帰っていない。当然だ。まだ夕方の5時くらいだからな。


 私は冷えた身体を温めるために、風呂の準備をする。

 妹は鍋の準備だ。鍋のいいところは、両親が帰ってきてから始めても、そんなに時間を取らずに食べられるようになるところだ。

 他の料理だと冷えたり、作っている間に時間がかかったり、いろいろあるが、鍋だけはそれがない。

 後は、両親がそれぞれ近い時間に帰ってくれるとありがたいのだがな。


 風呂の準備ができたので、妹に声をかける。

「お~い。風呂の準備ができたから、先に入れよ!」

 妹に一番風呂を譲る。

「いいよ、お兄ちゃん先入りなよ。私まだ準備が終わってないから。」


 譲るつもりが譲られてしまった。

 言い合いをしていてもあまり意味がないので、自分は風呂に入る。


 冷えた手足を湯船で伸ばし、じんわりと熱が戻ってくるのを感じる。

 冬場の風呂の一番いいところだ。


 身体が温まるようにじっくりと使っていたら、脱衣所から声がかかった。

「お兄ちゃん、私、ノート買ってくるの忘れたから、コンビニ行ってくるよ。」

「おう。下が凍ってるから気をつけてな。」

「お兄ちゃんじゃあるまいし、簡単に転ばないよ!行ってきまぁす!」


 それからしばらく湯船を堪能してから上がる。

 寝るにはまだ早いし、食事もするから、少し厚めのトレーナーとジャージズボンをはく。


 リビングに戻ると鍋の準備がほぼできている。肉類が冷蔵庫にあるだけだ。

 妹はまだ帰っていない。


 暫くソファで寛ぎ、テレビを見ていた。

 大学に入学が決まっている今、急ぎ勉強する必要もない。

 バイトでもすればいいのだろうけれど、そこまであくせくしなくてもいいと思っているので、今は何もしていない。


 偉く長い間テレビを見ていたような気がする。妹はまだ帰らない。

 そのうち、母が帰ってきて、父もそのあとすぐに帰ってきた。

 二人とも鍋を見て喜んでいたが、妹が帰っていないことを告げると、風呂を先にすることにしたようだ。


 両親の風呂も終わったが、妹はまだ帰ってこなかった。

 流石に気になって、様子を見てくる、と両親に断わり、私もコンビニに向かった。

 何かトラブルでもあったのだろうか。少しどころかかなり心配になり、少し急いだ。

 いつも行くコンビニに着いたが、妹の姿は見えなかった。


 棚を覗くとノートが売り切れになっていた。

 別のコンビニに遠征したのか。

 ここから一番近いのは……。


 と思いつくところにいくつか行ってみたが、どこにも妹の姿はなかった。

 両親に電話をして、先に食事にしておいてほしいといい、妹を探した。


 探せども探せども、妹の姿は見当たらず、何度も両親から電話がかかり、私もかけた。

 寒いはずなのに、汗だくになりながら妹を探した。


 事故に遭ったんだったら、救急車とかそういう音も聞こえるだろうが、全く気が付かなったから、走っていなかったんだと思う。


 いつまで探していただろうか。

 ふと気が付いたら、私は公園の中にいた。雪の積もった公園だ。

 該当が照らす部分に何かが落ちているのが見えた。


 なんだろうと思い近づいた。

 それはノートが入ったコンビニの袋だった……。


 それが妹が落としたものだと、直感で思った。

 ところが、妹の姿はない。

 足跡がそこまで続いていたのだが、その先に足跡がなかった。


 なんだ……これ。


 妹の存在自信を掻き消すかのように、その足跡は街灯の下で止まったまま、どこにも動いていなかった。


 そして……妹は、二度と帰ってこなかった。


 *****************


 私は暗い冷たい場所にいる。

 何でこんなところにいるのかもわからない。しかし、息苦しさと冷たさを感じる。

 身体が冷える。どんどん体の機能が低下しているような気がする。

 低体温症になりかけているのだろう。

 意識も落ちそうだ。何だか眠くなってきた……眠ればいいのかな。


 と、ぼーっと思っていたら


「助けて……。私、今どこにいるの?……。お願い助けて。」


 と何かしら助けを求める声を聞いた。


 あぁ、私と同じように助けを求める人がいる。

 そう、私も助けを求めているのだ。


 同じ境遇の人なら、一緒に励ましあったらいいんじゃないかな。生き残る率が上がりそうな気がする。


「おいで、ここに。一人なら私と一緒にいようよ。」


 そう言って私は何かを包み込むように手を伸ばした。

 何か光のようなものが私の手の中に入ってきたようだ。

 何だか暖かい……。もうあの声の子は寂しくないかな。

 私も少し安心したよ。


 これで眠ってもいい……かな。


 意識が完全になくなるその瞬間、私は自分の身体が引き上げられる感触を認識した……。


字数とか、改行ポイントとか、難しいですね……。

慣れない作業ですが、可能な限り続けたいと思います。


更新頻度は2日ごとくらいで考えています。

次回は8/3更新予定です。

書き溜め具合によって、更新頻度を上げる期間があるかもしれません。


今後ともよろしくお願いします。

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