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「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした  作者: 希羽


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第40話:はじめてのおつかい(討伐クエスト)

 子供の成長は早い。

 キャベツから生まれて数週間。フタバは外見年齢4歳ほどに成長し、言葉もかなり流暢になっていた。

 そして今日、彼女は人生(?)初の大仕事に挑もうとしていた。


「パパ! フタバ、いってくる!」


 玄関先で元気よく手を挙げるフタバ。

 頭には黄色い通学帽(ローズお手製の防御力カンスト装備)。

 肩からはアンパンの絵が描かれたポシェット(ルミナお手製の四次元アイテムボックス)。

 首には「お守り」として、俺の作った最高級魔石のペンダントを下げている。

 完璧な装備だ。


「よし。フタバ、頼むものは分かってるな?」

「うん! カレーのおにく! あと、にんじん!」

「そうだ。あと、道草食うなよ」

「はーい!」


 俺は笑顔で手を振り、娘を送り出した。

 今日の夕飯はカレーだ。だが、メインの食材が切れていたため、フタバが「わたし、買ってくる!」と立候補したのだ。


 パタン、とドアが閉まる。

 その瞬間、俺は背後の茂みに向かってサインを送った。


「……よし、追跡開始だ。頼んだぞ、ガストロン」


 ガサッ。


 茂みから、全身を迷彩服(光学迷彩魔法付き)で包んだガストロンが現れた。手には最新鋭の録画用魔道具カメラを持っている。


「お任せくだされ、ジン殿! フタバお嬢様の勇姿、この『潜入カメラマン・ガストロン』が、涙と共に記録してみせますぞ!」

「バレないように撮れよ。あくまで『一人でできた』という達成感が大事だからな」

「御意! ……BGM、スタート!」


 ♪ダァ~レもいない~森~で~(脳内再生)


 ガストロンが透明化して消えた。

 俺はリビングのモニター(ガストロンのカメラ映像を受信)の前で、ローズ、ルミナ、アイリスと共に正座した。


「ああ……フタバちゃん、転ばないかしら……」

「ハンカチは持ちました? 防犯ブザーは?」

「大丈夫だ、見守ろう」


 モニターの中、フタバはログハウスを出て、トコトコと一本道を歩いていく。

 だが、彼女が向かったのは、安全な人間の村ではない。

 俺が「食材はあっちにあるぞ」と指差した方向――Sランクモンスターが跋扈する『深淵の魔の森』だった。


 

(以下、ガストロンによるナレーション風)


『さあ、フタバちゃん。元気よく出発しました』

『お歌を歌いながら、ご機嫌ですねー』


「あるこ~♪ あるこ~♪ わたしはげんき~♪」


『おっと、フタバちゃん。道の真ん中で立ち止まりました。何を見つけたのかな?』


 ガサガサッ……グルァァァァッ!!


『茂みから飛び出したのは、全長5メートルはあるキラー・グリズリー(脅威度A)です!』

『鋼鉄の爪を持つ森の暴君! いきなりのピンチです!』

『ああっ! フタバちゃんに襲いかかるぅぅぅ!』


「くまさん! こんにちは!」


 ドゴォォォォンッ!!!


『……おっと、映像が乱れました』

『えー、フタバちゃん、熊さんの顎に強烈なアッパーカットをお見舞いです』

『熊さんは……星になりましたね。空の彼方へ飛んでいきました』


「くまさん、バイバーイ!」


『フタバちゃん、笑顔で手を振っています。礼儀正しいですね』(震え声)


 モニターの前で、俺たちは安堵の息を吐いた。


「ふぅ、まずは第一関門突破か」

「挨拶ができて偉いですわ!」

「熊さん、かわいそう……」(小声)


『さあ、森の奥へ進むフタバちゃん。そろそろお肉屋さんに到着です』


 フタバが到着したのは、薄暗い洞窟の前。

 そこは、この森の主である『アビス・ドラゴン(災厄級)』の巣。


『フタバちゃん、臆することなく洞窟に入っていきます!』


「すみませーん! おにく、くださーい!」


『元気な挨拶が洞窟に響きます! おっと……奥から、地響きと共に巨大な黒い竜が現れました!』

『その口から、灼熱のブレスが漏れています!』


「グオォォォォォ……ッ!!(貴様、我を食料扱いするか……!?)」


『ドラゴンが激怒しています! これは交渉決裂か!?』


「おにく! パパのカレーの、おにく!」


『フタバちゃん、一歩も引きません! そして、ポシェットから取り出したのは……お財布ではありません。道中で拾った『オリハルコンの棒きれ』です!』


「おにく、ちょーだい!!」


 ズドォォォォォォォォンッ!!!!!


『……はい、カメラマンのガストロンです。今、凄まじい衝撃波で吹き飛ばされました』

『土煙が晴れると……おや?』

『綺麗にお座りをして気絶しているドラゴンと、その尻尾肉(最高級部位)を嬉しそうに抱えるフタバちゃんの姿が!』


「ありがとー! これ、おかね!」


『フタバちゃん、気絶したドラゴンの鼻先にお金を置いています。等価交換……には程遠いですが、商談成立です!』


 リビングはお祭り騒ぎだった。


「やったー! お肉ゲットだ!」

「偉いですわフタバちゃん! ちゃんと対価を払いましたわ!」

「あのドラゴン、後で治療してあげに行こう……」


『さあ、最後はにんじんです!』

『フタバちゃんが向かったのは、森の最深部にある湿地帯。ここには、野菜の王様(?)が生えています』


「あった! にんじん!」


『フタバちゃんが見つけたのは、地面から少しだけ顔を出している奇妙な葉っぱ』

『それは人参ではなく、引っこ抜くと死に至る叫び声を上げる『マンドラゴラ・キング(即死級)』です!』


「うんとこしょ! どっこいしょ!」


 スポォォォォンッ!!


『抜けました! マンドラゴラが目を見開き、口を大きく開けます!』

『死の絶叫が来るぞぉぉぉッ!?』


「キェェェェェェェ――」


 パァァァァンッ!!!


『乾いた音が響きました』

『フタバちゃんが、叫ぼうとしたマンドラゴラの顔面を、神速の平手打ちで黙らせました!』


「うるさい! メッ!」


『……マンドラゴラ、白目を剥いて気絶!』

『フタバちゃん、ぐったりしたマンドラゴラをポシェットに詰め込みます。これで、お買い物コンプリートです!』


 そして、夕暮れ時。


「ただいまー!」

 

 泥(とドラゴンの返り血とマンドラゴラの体液)だらけになったフタバが、満面の笑みで帰ってきた。


「パパ! おにく! にんじん! 買えたよ!」

「おお、お帰りフタバ! よく頑張ったな!」


 俺はフタバを抱きしめた。

 ポシェットの中には、新鮮なドラゴン肉と、のびているマンドラゴラ。

 完璧なおつかいだ。


「一人でできたな。偉いぞ」

「えへへ~!」


 頭を撫でると、フタバは誇らしげに胸を張った。

 後ろから、ボロボロになった迷彩服姿のガストロンが、涙を流しながら戻ってきた。


「うぅ……感動しましたぞ……。立派な戦士の顔でした……」

「お疲れガストロン。編集してDVDにしてくれ」


 その夜。


 俺たちが囲んだ食卓には、極上のドラゴン肉カレーと、マンドラゴラのサラダ(滋養強壮効果MAX)が並んだ。

 自分でおつかいをした食材の味は格別だったのか、フタバは何度もおかわりをした。


 こうして、フタバの「はじめてのおつかい」は大成功(被害総額:森の生態系崩壊)に終わったのだった。

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