表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした  作者: 希羽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/57

第13話:勇者廃業。そして全世界にバレた「ハリボテ」の真実

 ――ドサッ、ドサッ、ドサッ。


 辺境の森の出口付近。

 泥だらけの人間が三人、ゴミ袋のように吐き出された。

 シロ(フェンリル)とクロ(古竜)による、手厚い「お見送り」の結果である。


「はぁ、はぁ……死ぬかと思った……」


 勇者ライオネルは、震える足で立ち上がろうとして、泥に滑って転んだ。

 全身打撲に、精神的な摩耗。ミスリルの鎧はスクラップ同然にひしゃげ、自慢の金髪は見る影もない。


「最悪……あたしの服、ドロドロじゃない……」

「剣が……俺の剣が……」


 ルルと剣士も放心状態だ。

 だが、彼らの地獄はここからが本番だった。


 ブブブブブッ……!

 泥の中に落ちていたルルのスマホが、異常な振動を始めた。

 通知の嵐だ。


「な、なによこれ……?」


 ルルがおそるおそる画面を見る。

 そこに表示されていたのは、SNSのリプライ、DM、そしてニュースアプリの速報通知だった。


 【速報】勇者ライオネル、配信中に土下座! Sランク詐称疑惑が浮上

 【炎上】元メンバーへのパワハラ、給料未払い、手柄の横取り……元関係者が次々と暴露

 【悲報】チャンネル登録者数、異例の「マイナス」記録へ


「ひっ……!」


 ルルがスマホを取り落とす。

 さきほどの「重力土下座」の配信は、アーカイブとしてネットの海に永遠に刻まれた。

 それだけではない。

 あの配信を見たかつての依頼人や、ライオネルにいじめられていた元ギルド職員たちが、一斉に声を上げ始めたのだ。


『あの時の討伐成功、やっぱりジンの魔法のおかげだったんだな』

『ライオネルの手柄だと言われてたけど、映像見返したら全部ジンがサポートしてるわ』

『こいつ、打ち上げの代金をいつも「ツケ」にして逃げてたぞ』

『脱税疑惑も出てきたぞ』


 ダムが決壊したように、過去の悪事が全て噴出していた。

 「勇者」というメッキが剥がれ、中から出てきたのはただの醜悪な小悪党だった。


「お、おいルル! ギルドに連絡しろ! これは誤解だ、ジンの捏造だって言えばまだ……!」


 ライオネルが縋るように叫ぶ。

 だが、ルルは冷ややかな目で彼を見下ろした。


「……触らないでよ、犯罪者」

「は?」

「あんたのせいで、あたしのキャリアもめちゃくちゃよ! どうしてくれんの!? 詐欺師! 無能! ペテン師!」

「な、なんだとぉ!? お前だってノリノリだったじゃないか!」

「あたしは騙されてた被害者なの! ……そうよ、これから配信して『脅されてました』って泣けば、まだ助かるかも……」


 ルルはブツブツと呟きながら、壊れた杖を引きずって王都の方角へと歩き出した。

 剣士もまた、無言でライオネルに背を向けた。


「お、おい! 待てよ! 俺を置いていくな! 俺は勇者だぞ! これから復活するんだ!」


 ライオネルの絶叫が虚しく響く。

 誰も振り返らなかった。

 残されたのは、巨額の違約金請求と、社会的信用の喪失、そして二度と消えない「土下座動画」のデジタルタトゥーだけ。


 数日後。

 冒険者ギルドは『シャイニング・ブレイバーズ』の解散と、ライオネルのライセンス永久剥奪を公式に発表した。

 理由は「虚偽報告」および「配信規約への重大な違反」。

 かつて栄華を極めた勇者は、路地裏の借金取りに怯えるただの浮浪者へと転落したのだった。


 ◇◇◇


 一方その頃。

 辺境の廃棄ダンジョン。


「ふんふんふ~ん♪」


 俺は鼻歌交じりに、畑で採れたばかりの「ダンジョン芋」を収穫していた。

 重力耕運のおかげで、土はふかふか、芋は丸々と太っている。


「シロ、クロ! おやつだぞー」


 俺が呼ぶと、森の奥から銀色の風と黒い暴風が飛んできた。

 二匹は俺の前で「おすわり」をして、尻尾(片方は極太)を振る。


「はい、蒸かし芋。熱いから気をつけろよ」


 ホクホクの芋を投げてやると、二匹は幸せそうに頬張った。

 平和だ。

 王都の方では何やら大騒ぎになっているらしいが、ここには関係ない。

 勇者たちがどうなったかは知らないが、まあ、自業自得だろう。


 俺はふと、タブレットを確認した。

 チャンネルの登録者数は【102万人】。

 動画サイトから「金の盾(ゴールド・シールド)」を送りたいという通知が来ていたが、住所がバレるので「受け取り拒否」にしておいた。


「ま、俺はここでのんびり暮らせればそれでいいしな」


 名声も、地位もいらない。

 美味しいご飯と、快適な住処と、ちょっとしたペットたち。

 それだけで十分だ。


 俺は満足げに空を見上げた。

 「地味で映えない」と言われた俺の魔法は、ここでは誰よりも役に立ち、誰よりも輝いている(主に整地とかマッサージで)。


 ――だが。

 俺はまだ知らなかった。

 「100万人登録」の影響力が、俺の想像を遥かに超えていることを。

 そして、この平和な辺境に、勇者よりも遥かに面倒な「お客様」たちが押し寄せようとしていることを。


 遠くの空から、王家の紋章が入った飛空艇が、こちらに向かって飛んできていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ