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「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした  作者: 希羽


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第11話:勇者、ドラゴンの寝起きドッキリ(命がけ)を決行する

「うおおおおっ! 死ねぇぇぇ詐欺師ィィィッ!!」


 静寂なダンジョンの入り口広場に、場違いな絶叫が響き渡った。

 茂みから飛び出したのは、かつての仲間――勇者ライオネルと、魔導師ルル、剣士の三人だった。


 俺は手に持っていた(くわ)を止めて、きょとんとした。


「……ライオネル? どうしたんだ、そんな血相変えて」


 俺が声をかけるが、ライオネルの目は血走っており、会話が通じる状態ではないようだ。


「とぼけるな! そのふざけた人形劇もここまでだ! 俺がその『張りぼて』を破壊して、世界の目を覚ましてやる!」


 ライオネルは一直線に、俺の後ろで寝ていたクロ(エンシェント・ドラゴン)に向かって走った。

 彼の手には、全財産をはたいて買った(らしい)ミスリルの大剣が握られている。


「まずはそのデカいトカゲの風船からだ! 中身が空っぽなのを証明してやる!」


 ライオネルが高く跳躍した。

 狙うはクロの眉間。


「はぁぁぁっ! ブレイブ・クラッシュ!!」


 勇者の必殺技が、無防備に寝ているクロの頭頂部に直撃した。


 ――カィィィィィィィン!!


 甲高い金属音が、森中にこだました。

 次の瞬間、クルクルと宙を舞ったのは、真っ二つに折れたミスリルの刃だった。


「……は?」


 ライオネルが着地し、自分の手元を見る。

 そこにあるのは、無残に折れた剣の柄だけ。

 一方、斬られたはずのクロの頭には、傷一つ……いや、埃ひとつ付いていなかった。


「な、なんだ? 硬質強化したゴーレムか!? クソッ、ルル! 魔法だ!」


 ライオネルはまだ現実を認めていない。

 指示を受けたルルが、杖を構えて叫ぶ。


「任せて! あの白い犬っころの方を燃やしてやるわ! 毛皮が燃えれば偽物だって分かるでしょ! ファイア・ボール!」


 ルルが放った火球が、シロに向かって飛んでいく。

 シロはあくびの途中で、鬱陶しそうに片目を開けた。

 そして。


 パクッ。


 シロは飛んできた火球を、まるでフリスビーでもキャッチするかのように口で受け止め――そのままゴクリと飲み込んだ。


「げふっ(美味くない)」


 シロが小さくげっぷをして、煙を吐く。


「……え?」

「うそ……食べた?」


 ルルと剣士が凍りつく。

 魔法を食べる。それは高位の魔獣だけが持つ「魔力吸収」のスキル。

 つまり、目の前にいるのは紛れもなく本物のフェンリルだ。


 そして、もっと恐ろしい「本物」が、今まさに目を覚まそうとしていた。


「グルルルル……(誰だ……?)」


 地響きのような唸り声。

 クロがゆっくりと瞼を持ち上げる。

 その金色の瞳が、目の前で折れた剣を持って震えている小さな人間ライオネルを捉えた。


「ヒッ……」


 ライオネルの喉から、ひきつった音が漏れる。

 間近で見るその質感、圧倒的な魔力、そして生物としての格の違い。

 正常性バイアスなど一瞬で吹き飛ぶほどの「死の気配」が、彼を襲っていた。


「グルァッ!(虫か? 鼻がムズムズする!)」


 クロが大きく息を吸い込んだ。

 周囲の空気が一気に収束していく。

 ブレスの前兆だ。


「ま、待て! 違うんだ! 俺は勇者で――」

「ハ、ハックショォォォォン!!!」


 クロの盛大なクシャミが炸裂した。

 それはただの生理現象だが、エンシェント・ドラゴンのクシャミは、災害級の衝撃波ソニックブームとなって前方を薙ぎ払った。


 ドゴォォォォォン!!


「ぎゃああああああああっ!!」


 ライオネル、ルル、剣士の三人は、木の葉のように吹き飛ばされた。

 地面を転がり、木々をへし折り、数十メートル先まで弾き飛ばされて、泥の中に突っ込む。


 土煙が舞う中、唯一、その場に平然と立っている男がいた。

 俺だ。


「おいおい、クロ。クシャミするなら手で押さえろよ。せっかく耕した畑が台無しだろ」


 俺の周囲だけは、透明な壁――グラビティ・ウォール(重力障壁)によって完全に守られており、塵ひとつ舞っていなかった。


 俺は呆れたように杖を振り、重力操作で舞い上がった土煙を一瞬で鎮圧する。


 そして、泥まみれになってピクピクと痙攣している勇者たちの方へ歩み寄った。


「で? なんの用だったんだ? 『張りぼて』がどうとか言ってたけど」


 俺が見下ろす先で、ライオネルは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、震える声で呟いた。


「ほ、本物……だ……」

「当たり前だろ。偽物が飯食うかよ」


 俺は心底不思議そうに言った。


 その一部始終は、地面に落ちたライオネルのスマホによって、全世界にライブ配信されていた。


 アングルは完璧だ。


 「圧倒的強者であるジンとモンスターたち」と、「泥にまみれて失禁している勇者たち」の対比が、残酷なまでに鮮明に映し出されていた。


『あああああ』

『知ってた』

『放送事故(物理)』

『ドラゴンのクシャミで全滅www』

『剣が折れた音、いい音すぎた』

『おっさん、バリア張るの早すぎ。慣れてるな』

『「クシャミなら手で押さえろ」というドラゴンへの説教』

『格付け完了しました』

『ざまぁぁぁぁぁぁ!!』


 コメント欄は、爆速で流れる「草(w)」と称賛の嵐で埋め尽くされた。


 勇者ライオネルの英雄譚はここで終わり、代わりに「世界一無謀なクレーマー」としての伝説が始まった瞬間だった。

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