勝利条件1 :あの日の小雪
CRY STAR 本編の” 勝利条件1 : あの日の小雪 “です。
本編と直接関係しているエピソードで、場面は涙の効果が日本全土に広がり始めた段階です。舞台が北海道なので効果の広がりが全国で最も遅く、まだ全体的にそれ自体が知られていません。そんな中で将来誰かが過去を振り返り、感じた体験を主観で語っています。
昔、中学校のクラスメイトに“小雪ちゃん”って子がいてね。別に話した事なんて無いし、特段話す子じゃなかったし、いつも学校にはきてたんだけど休み時間に誰も知らない聞いたこともないような本読んでたり、髪が長くて顔もよく見えない子だったから、当時は顔も覚えてなかったし。声も忘れてた。
だけどあの日を境に忘れられなくなった。
中学二年生の冬休みだったかな。長期休みが終わって、いつもの女子メンバーで各々の小さな変化を交換してた。好きな先輩と連絡先を交換した〜とか、髪を短くしてみたとか。みんなどんなに小さな事でも大きく喜んだりしたけど、内心変化なんて誰も望んでないことを後から知った。楽しくてあっという間に時間は過ぎ、新学期最初のホームルームに最後入ってきたのが小雪ちゃんだった。私たちが知ってたのはお世辞にも可愛いとは言えないルックスで、髪は無作為に長く、爪は不揃いで噛んだような跡があるような。ちゃんと見たことはないような気がしたけど、何となくそんなイメージ。だけど目の前にいる小雪ちゃんは、そんなイメージとは真逆の絶世の美女だった。明らかに顔が変わっていたのだ、美容整形とか矯正だとかのレベルではなかったし、一目で天然のルックスが仕上がってることがわかる。
そもそも私たちは北海道の片田舎の中学校で、昔から山や牧場に囲まれ、外出こそするものの遠出などしたことがない。狭い狭い井の中で生きてきた私たちには初めて見た美人。そんな“長期休み明けショック”から数週間経ったある日だった、すっかりクラスの一軍集団の仲間入りを果たした小雪ちゃんは活気を底上げするいわゆるムードメーカーになっていた。ボケもツッコミも一人ででき、誰にでも分け隔てなく明るく接し。そんな小雪ちゃんに好奇が大半なのだが、どこか恐怖を覚える、自分ですらなぜだか分からないのが不思議だった。
話しているうちに家の方面が同じことに気がつき、何人かと小雪ちゃんで一緒に帰ることになった。私が一番遠かったから、段々と人数が減りやがて小雪ちゃんと二人きりになった。小雪ちゃんの家は案外素朴で、数十年前建の古民家のような風貌だった。粗雑な木材と土壁、加えて前の大雪の影響か倒壊寸前を匂わせていた。
家の周辺にはゴミ袋や釜のような陶器の破片、錆びて赤くなったドラム缶など、見たこともない惨状が広がっており。初めてを見た私は秘密基地のような空気感を吸った私は、もっと周りを散策したくなった。脇道を抜けた家の裏手に山道があり、今より少しだけ高い位置から家を見れるとおもった私は、小雪ちゃんの家の中まで音が立たないように一歩一歩を慎重に、枝を避けて通った。
ようやく山道に辿り着いた私は裏側を注視してみた、おそらく長い間使われていない車が埃をかぶっていたり、カーポートは日光の影響か何かで劣化し、粉々になっていた。窓も内側から布が貼り付けられており、中の様子はわからない。屋根は修繕が試みられた跡があり、失敗したのか一部が落ち剥がれている。その横には小雪ちゃんの首を吊った死体があった。手首と体に無数の引っ掻き傷があり、髪はボサボサであちこちに虫が集っている。服は着ておらず、全身の肌があらわになっていた。そう、とっくに生気は失われていた。
三十分ほどほど恐怖で足を立てることができなかった私はゆっくり山道を降り、公道に戻るまでに二回吐いた。自然と小雪さんの家の正面に帰ってきた私は横からガタガタと戸を引く音が聞こえ、恐る恐る振り向いた。
小雪さんが驚いた様子で私に話しかけてくる。
「あれ、〇〇ちゃんどうしたの?なにかあったの?」
「う、ううん。何でもないの。ちょっと学校で疲れちゃったみたいで休んでたんだ。」
「私も分かるよ、学校ってしんどいよね。ゆっくり休んでから帰ってね、本当はうちで休んで欲しいけどうちって汚いから、ごめんね。」
「いいの、全然。ありがとう小雪さん。」
そんな会話をしたことは覚えてるけど、衝撃ではっきりとは覚えてない。家に帰った後も、全く寝れなかった。次の日は学校を休んでその次の日に学校に行った。今度は私が最後に教室に入った、見渡してみると小雪さんと何人かが駄弁っている。
やっぱり小雪さんはクラスの中心で、ムードメーカーで、美人だった。だけど、小雪さんの家の裏で首を吊っていた小雪さんは顔が昔のままだった。あの時、顔をよくみると唇が下だけ青黒くなっていた。よく考えると何かが悔しかったのか、そしてそれが理由で自殺をおこなったのかは分からないが、下の唇を強く噛み出血をしていたのだろう。
今教室にいる小雪さんが誰なのかは分からない、誰かが小雪さんのふりをしているのか、亡くなった小雪さんの幽霊のようなものなのか。そんなことを考えるのは止め、そっと忘れて元の学校生活を再開した。
小雪は北海道北部初の涙の効果を受けた人間です。元々は容姿にコンプレックスを抱いており、自ら命を絶ちました。しかし自身の効果である七転八倒に気づいていませんでした。七転八倒は7回までは死が許され、8回目の生を終えるまで蘇ります。一度死ぬごとにDNAが変質していく為、効果が増えていき、小雪は一度自害で死んでいる為蘇り、容姿を自在に変化させることができる効果を得ました。コンプレックスを払拭した小雪は以前とは異なり、笑顔を取り戻したようです。




