エピローグです。
あのいろいろあった日から数日後。ご主人様の目がうざい。
ご主人様はにやにやにやにやとこちらを見ている。そりゃあ嬉しいだろう。目的が達成したんだから。見事自分の飼っているペットのカップル化成功である。
私もタマが雄猫と仲良くしていた時は生暖かな目で見ていたものだが、この事もまたタマに謝ればならないらしい。
はあ、とため息をついていると元凶がどうかしたのか、と頭を撫でてくる。
憎らしいはずであるのに、惚れた弱み、その手を心地よいと感じてしまう。が、ここでうっとりとしてしまうのもプライドが許さないのでふん!とわざとらしくそっぽを向いてやる。
するとあの夜はあんなに素直だったのにと意地悪く言ってきた。
その言葉に私はきっ!と彼を睨む。
「いい?!そもそも私はあの日酔っていたの!」
そう私は酔っていた。
じゃなきゃあんなふうに感情的になることもなかったし、想いをバラしたりなどもしなかった。
結果的に想いが通じたのは嬉しい。だが、その後のあの展開は頭を抱えてしまう。
あの日の私は正気ではなかった。正気だったらあんな恥ずかしいこと受け入れられる訳がない。
私はそりゃあ年頃の女の子だから、あの恥ずかしい行為のことを考えたことがなかった訳ではない。ないけれど、ポチと共に行ったあの行為は想像以上のものだった。
ポチは優しいけれど優しくなかった。あんな言葉を言わせるポチなんて信じられないが、もっと信じられないのはそれを言ってしまった自分だ。
私は酔ってもその時の記憶は消えるタイプでないらしく、こと細かくそのことを思い出せる。故に恥ずかしくて死にそうになるのだ。
二、三日ポチの顔を見るだけで赤くなるほどに恥ずかしかった。
ようやく治ってきたけれど、当分はあんな恥ずかしいことごめんである。恥ずか死ねてしまう。
「たま」
名前を呼ばれる。たま、なんてまるで猫みたいで、屈辱的。本当の名前ですらない。でも、なぜだろう。この人に呼ばれるとそれだけで心が踊る。嬉しくて自然と笑みがこぼれてしまう。
異世界でたまと名づけられて、たまとしての人生も悪くないかな、なんて思い始めているのは
「何?ポチ」
きっとあなたがそこにいてくれたから。