表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦う考古学者と卵の世界  作者: いくさや
間章 学園編 2
100/179

97 マナ

説明回です。

 97


 飛行の魔導具製作がマルスとカナンの作業に入り、俺とリィナは手伝いぐらいしかできなくなってしまった。

 手伝いと言っても工具を渡したり、必要な材料を手配するだけ。

 ほとんど座っているだけの状況だ。


 今もリィナは資材の調達に出ているけど、やる事のなかった俺はマルスからもらったゴーグルを磨いていたんだけど、ふと思いついた。


「ねえ。魔導具ってどんな仕組みなの?」


 魔導具製作とはなんぞや? と問われればほとんどの人が『さあ?』と返すだろう。

 それだけ魔導具の詳細は一般に知られていない。


 魔導具の製法は過去、強大だった獣人族や精霊族、そして、魔族の遺跡から彼らの技法を見つけ出し、竜人族なりに再現したものだ。

 まず遺跡から掘り出した技術が稀少で、それを応用した技術は更に貴重で、そんな技術を体得した職人はもっと少ない。

 それだけに大きな商会が職人を囲い込み、技術が広まらないようにしているからだ。


 俺もノルト神父から教わったのは基礎の基礎。

 魔晶石や屑晶石をエネルギーにした不思議な道具という程度の認識である。

 具体的な話はまったくわからない。


 作業がひと段落していたところだったらしいマルスが顔を上げた。


「そうねえ、技術も元になった種族で形式が違うから説明は難しいわね。たとえば精霊族なんかは元素魔晶石の製作と活用でしょ?」


 おっと、いきなりわからない単語が出たぞ。

 元素魔晶石?

 首を傾げているとカナンが補足してくれた。


「精霊族は、自然の力を、魔晶石に、入れる技術を、持っていたの。それを、色んな道具に、使ってたみたい」

「そのまま使うのもあったみたいだけど、複数の属性を組み合わせたりした物なんかは大変なのよ。相性とかあるから。まあ、当の精霊族にとっては苦手な魔法を補うための道具だったみたいね」


 精霊族の魔法か。

 自然を操る魔法だという話だったな。

 青柳君に教えてもらったゲームのRPGなんかに出てきた、ごく一般的な魔法をイメージすればいいはずだ。

 つまり、火属性の魔法が苦手な精霊族が火の力を持った魔導具を使う、と。


「獣人族は体に作用するのが多いわね」

「うん。薬とか、使ったみたい。しばらく、力持ちになったり、足が速くなったり、痛いのが感じなくなったりするの」


 それはまた恐ろしい。

 副作用とか常習性とかありそうだな。

 究極的には獣身供犠のように、死者の肉体さえ操ってしまうのだろう。


「あれ? じゃあ、それを売ったりはできないの?」


 いや、聞くからに危ないお薬みたいだから気軽に売り買いしちゃダメだと思うけど、確実に売れるだろう。

 けど、カナンは首を振る。


「ダメ。ずっと前に、ほとんど、作り方、なくしちゃったから」


 失伝してしまったのか。

 竜人族が竜卵を持ってから獣人族は激減したらしいからな。

 今の関係に落ち着くまで流民のようになった時代があるからその時に失われてしまったのだろう。


「ちなみに、魔族は?」

「あれは本当にわからないのよねえ」


 マルスが大きなか肩を竦めた。

 カナンもうんうんと頷いている。


「ほとんど正体不明なのよ。どういう理屈で動いているのかさっぱり」

「魔族は、今も、昔も、魔大陸が、本拠地だったから、遺跡も少ないし」

「一応、技術を使った魔導具もあるにはあるけど、ほとんどが遺跡から出た物を流用しただけね」

「魔族と交流があればわかると思うんだけどね。元々、仲が悪いし、閉じこもっちゃてるでしょう?」


 そのため、謎のまま、と。

 サンプルも少ないし、情報源もないとなると厳しいな。

 以前に聞いたティレアさん情報だと、近年、竜大陸に攻め入っているという話だったけど、隠されているそうだから二人も知らないか。

 まあ、そんな状態の魔族と出会っても教えてもらえないだろうなあ。


 魔族の魔法は精霊族のそれとは違う。

 俺は二年間、シャンテの力を見ていたからよくわかる。


 シャンテの力は念動力だ。

 火を起こしたり、水を生み出したりはしない。

 シェロカミン大聖堂を見てもわかる。

 あちらも人形の作成と操作、転移などだった。

 あれは魔法というより超能力と言った方が理解しやすいのではないかと思う。


「だから、あたしたち魔導具職人はそれぞれの特徴を調べて、現代の素材で再現するのがお仕事ね」

「でも、獣人族の遺跡に、精霊族の力が、使われてたりもするから、間違うと、大変」


 シェロカミン大聖堂と同じだろう。

 どちらかがどちらかを支配して、その力を使わせていたとしても不思議ではない。

 エスクリスク聖殿なんかの自動防御なんかも、他種族の臭いがするしな。


 それに加えて、グニラエフ立石群の巨大宝石みたいな、正体不明のオーパーツまで存在するのだからややこしい。

 マルスたち魔導具職人はそれを見極めるところから始めないといけないんだな。


 俺が納得していると、マルスが作業台の上に乗せた鉄板を撫でて笑った。


「その点、これはわかりやすくていいわよね」

「うん。図式を彫って、マナを通せば、使えそう」

「問題も多いけどね。形状とか、素材とか、導線とか、動力核とか。あー、もう。本当はぜーんぶ試したいけど、時間が足りないのよねえ。とりあえず、一番軽くて、マナ保有率のいい精霊銀が無難かしら」

「形、背負うのが、いいかな? ベルトでも、大丈夫?」

「使い勝手は考えないといけないわね。大きすぎても邪魔になるから。でも、小さくするのも難しいわ。狭いと図式を描き切れないし、薄い鉄板だと強度が不安になるのよね」

「あと、動力核。換装にする?」

「そうよねえ。やっぱり切り替えは必要になっちゃうわよね」

「うん。燃費、悪いから」

「でも、切り替えの時に少しでもマナが途切れるのは危険じゃないかしら。空を飛んでいる途中だと、慌てて失敗しちゃったら落ちちゃうわ」

「じゃあ、ハンドルで、回すとか、しよっか」

「うーん。それなら安全かしらね。問題は動作不良だけど……」


 魔導具の話がどんどん専門的になっていく。

 なんとなく、二人の言っている事はわかるけど、気になったのは頻繁に出てくる『マナ』という単語だ。


「盛り上がってるところ、ごめん。マナってなに?」


 二人がびっくりした顔で俺を見てきた。

 ありありと信じられないと書かれている。

 え、そんなに変なことを聞いちゃった?


「カルロ君、知らないの?」

「でも、竜砲、使ってたよ」

「そうよねえ。なのに、知らないって変じゃないかしら」

「いや、本当に知らないんだけど……」


 ノルト神父から教わったのは一般常識とか歴史の分野ばかりだからな。

 魔導学科の単語はチンプンカンプンなんだよ。

 俺の表情から冗談ではないとわかったのか、呆れ半分な感じで二人が教えてくれた。


「あのね。マナって言うのは魔晶石とか屑晶石に入っている力の事よ」


 マルスは近くに会った魔晶石を手に取ってみせた。

 水晶のような透明の石は僅かな輝きを内部に宿している。


「この世界のあらゆる場所にマナは流れているわ。そのマナが結晶化したものが魔晶石で、地下の鉱物に蓄積された物が屑晶石って言うの」

「獣人族も、精霊族も、魔族も、マナを使って、力を、使ってるよ」

「へえー。じゃあ、遺跡の動力になっているのもマナ?」


 前々からどんなエネルギーで動いているのか疑問ではあったのだ。


「そうよ。種族によって遺跡の形式はバラバラだけど、それだけは同じはず……って、どうして遺跡学科のカルロ君が知らないのよ」

「いや、俺って歴史とか文化とかの方は興味があるけど、遺跡群そのものはあんまり気にならないというか」


 あいつら、調査するのを邪魔するだけだからなあ。

 攻略しないといけないから分析はするけど、それ以上に価値を見いだせないんだ。

 その辺り二人とは興味の方向性が逆方向を向いている。


「それから、カルロ君? あなたが使った竜砲。あれの動力もマナのはずだからね?」

「竜卵も、マナで、動いているの」


 なるほど。

 それで二人が驚いたのか。

 儂は知識も経験もなく、勘だけで操っていたからなあ。

 魔導学科の二人としては信じられない話だろう。


「実戦派にも程があるわ」

「……すごい、ね」


 頭が痛いとばかりに溜息を吐くマルスと、言葉に困ってとりあえず褒めた感じのカナン。

 まあ、儂の非常識さは今更か。


「竜卵が孵化した時に習わなかったの?」

「………」


 ティレアさんの指導の中には含まれていなかったな。

 あの人も実戦派の人だから、理論はいちいち教えてくれそうにない。


 というか、竜卵についても学習院で勉強しろと言われていた気がするぞ。

 儂がどんどん独学で使いこなしてしまうから、すっかり忘れていた。

 きっと教員の講義の中にあるんだろうな。


「これが落ち着いたら授業の方も受けてみようかな」

「そうした方がよさそうね。ほら、カナン。休憩はこれぐらいにして続きをしちゃいましょう? 今日中に鉄製の試作を実験したいし」

「うん。がんばる」


 そういって二人は作業に戻ってしまった。

 かなり長時間作業を続けているはずで、疲労の色が見え隠れしているけど、二人とも実に楽しそうだ。


 ゴーグルの清掃も終えた俺は、二人の邪魔をするわけも行かないからロープの操作の練習をして作業を見守っていた。

 そうして一時間ぐらい経った時、工房の扉がノックされた。


「マルス様。ミレーヌ様をご案内しました」

「あら? どうぞ、入ってもらってくれる?」


 許可をもらって入ってきたのはミレーヌと、マルス付きのメイドではなく、従者人形のヴィオラだった。

 メイド長なんだからどこに現れてもおかしくはないけどさ。


「なんで、ヴィオラが?」

「私もご主人様にご報告がありましたのでこちらをお訪ねしたところ、昇降機でミレーヌ様とご一緒になりましたので」


 まあ、部屋の主が問題にしていないなら今は保留にしておくか。

 俺はヴィオラの隣でいつもの柔らかな笑みを浮かべているミレーヌに視線を移した。


「それで、ミレーヌ。首尾はどう?」

「そうですわね。良い報告と悪い報告、どちらから聞きたいかしら?」


 これは意味深だな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ