35話
レティシアが寝たので俺は外に出る準備をする。先ずはマジックポーションを飲んで魔力を回復させる。完全に回復したら、ノーデンスにある光魔法を掛けて、クトゥグアと同時に起動させながら外に出る。
「風が気持ちいいね」
俺は空の一箇所を少し見詰めた後、直ぐに視線を変えて全力の探知魔法を使う。魔力がほぼすっからかんになるのでまたマジックポーションを飲む。不味いのだが、回復効率は良いので我慢だ。
さて、今度は相手側の砦部分の全容が分かった。
だから、作戦を開始する。
「行け、クトゥグア」
俺はクトゥグアとノーデンスを発進させる。クトゥグアは敵の防衛部隊へ。ノーデンスは秘密だ。
俺は操作に集中していく。
ダンジョンマスター
くそっ、あの化物共め…………ゴブリンメイジ達を投入して放ったバリスタはあの黒い女が受け止めやがるし、軍団で押しつぶそうとしたら、赤い女が塔を立てやがる。
「ここは俺のダンジョンだぞ!! 好き勝手しやがってっ!!」
「最初の罠で殺せなかった時点で、勝率は6割でした。あちらが砦を用意した時点で3割か4割ですね。こちらの航空部隊はゴーストですから」
「五月蝿いっ!!」
幸い、こっちの監視には気づいていないようだが、あんな高い場所まで飛べる魔物は俺の陣営には居ない。かといって、ゾンビを近づけたら聖別結界で溶けてしまう。
「近づいても砲撃が有りますから…………あっ、例の小型浮遊魔導砲が出て来ましたよ」
赤い女が、『行け、クトゥグア』と言うと、小型浮遊魔導砲はこちらの陣営を低空飛行で目指して来た。
「弓隊に迎撃させろ」
「了解です。第1、第3部隊は攻撃してください」
大量の矢がクトゥグアと呼ばれた小型浮遊魔導砲に降り注ぐ。
「命中しません。全部避けられました」
大量の矢は緩急の付けた加速、減速により全て命中していない。前はかなり命中させられたし、動く物を片っ端からレーザーで破壊していた。それによって、エネルギー切れを狙って引かせたのだ。だが、今度は出来ない。何故だ?
「おい、どうなっている」
「前は自動操縦だったのですが、今度のは自身で直接操作していますね。それに、前より性能が上がっています」
「くそっ!! 残っているバリスタの発射準備はどうなっている!!」
「1号機は大破、2号機は装填完了。3、4号機は後30分はかかります。5、6号機は倉庫から出している所です」
「ちっ、前線部隊を厚くしろ。ゾンビ共を盾にするんだ。決して聖別結界には入れるなよ。それと、2号機は狙いを塔に向けさせろ」
「了解」
ゾンビ部隊が前方に出て、盾となる。此奴等はいくらでも代わりがいるから問題無い。
むしろ、小型浮遊魔導砲をその肉で押さえ込んで捕まえる方が良い。
「残り300秒で敵、小型浮遊魔導砲と前線部隊がエンゲージ。射程距離に入りましたが撃ってきません。高エネルギー反応は依然として存在しています」
「何?」
画面を見ると、小型浮遊魔導砲は草原を駆け抜けて、どんどんゾンビ達へと接近していっている。このままではぶつかる。
「馬鹿めっ、そのまま捕らえてくれる」
「敵、小型浮遊魔導砲と前線部隊がエンゲージ。いえ、敵、小型浮遊魔導砲、出力を上げて急上昇していますっ!!」
跳ね上がるように防壁と同じ高さまで上昇した敵の小型浮遊魔導砲。
「敵、小型浮遊魔導砲から高エネルギー反応増大!」
「にゃろっ、奴の目的はバリスタだっ! 2号機、構わんからぶっぱなせ!!」
ワザと低空飛行でこちらの兵力を狙うと見せかけて、本命はバリスタか。監視のモニターを見ると、塔の上で赤い少女がこっちにVサインをしてやがった。
「あんの野郎っ!!」
「女なので野郎では有りませんよ」
「知ってるわっ!!」
そして、バリスタが放たれた。同じく、射線を合わせていた敵の小型浮遊魔導砲からもレーザーが放たれて、矢とレーザーはぶつかり合って、レーザーが貫通した。そして、その穴を広げる様に小型浮遊魔導砲が突撃して来て、矢を切断してバリスタへと接近した。
「敵、小型浮遊魔導砲から高エネルギー反応…………バリスタ2号機、破壊されました」
「急いで防衛部隊を全て回せっ!! 3、4号機を死守しろ! 5、6号機は倉庫に戻せ!!」
「了解」
フィアが急いで連絡を送る。だが、防衛部隊が到達するまでの6分の間に3、4号機は破壊されて燃やされた。しかし、5、6号機には間に合った。
「敵、小型浮遊魔導砲と防衛部隊がエンゲージ。戦闘になります」
「叩き潰せ!」
防衛部隊のスケルトンナイトやオークナイト達が敵の小型浮遊魔導砲を破壊しようと近づく。しかし、小型浮遊魔導砲は炎を集めて、拡散させた一撃を放った。狙いはあくまでもバリスタみたいで、拡散させて命中させようとした。
「守れ!」
俺の命令によって、スケルトンナイトとオークナイトは盾でレーザーを受け止める。流石にボスクラスだけあって、拡散攻撃を盾で防げた。
「敵、小型浮遊魔導砲、再び上昇しました」
「逃げる気かっ!! そんな事させるかっ!! 全軍で攻撃を行えっ!! カタパルトで上空に打ち上げろ!!」
「はい。カタパルト、発射準備…………っ!? 高エネルギー反応、増大っ!!」
「はっ、無駄な事を…………「場所が違います!! 場所は砦内部っ!! 倉庫区画ですっ!!」…………なんだとっ!? あそこには武器や薬品、食料が置いてあるんだぞ!!」間違い有りません!! 映像出します!!」
出された映像には先程まで戦っていた小型浮遊魔導砲とは違う、帯電している小型浮遊魔導砲が存在していた。そして、放たれる多数の雷撃の嵐は装備や食料を破壊し、燃やしていった。
「急いで消火作業に部隊を回せっ!!」
「了解っ!!」
そして、大半の部隊が移動した時、俺は更にミスをしていた事を理解した。
「っ!? 敵、小型浮遊魔導砲1号機が高エネルギーを溜めながら再接近っ!! 狙いはバリスタとカタパルトですっ!! 駄目です、間に合いませんっ、カタパルトとバリスタが破壊されました…………」
監視モニターを見ると、あっかんべーとしていた。その後、口パクで何かを言っている。
「ご・ち・そ・う・さ・ま・ば・か・め。繰り返します。ご・ち・そ・う・さ・ま・ば・か・め」
フィアが口の動きを読んで、喋った後、赤い女は銃をホルスターから瞬時に取り出して、早撃を行って塔を監視していたカメラアイが次々と撃ち抜かれていった。
「あんにゃろぉ~~~~~~~~~っ!!!!」
「敵、小型浮遊魔導砲1号機、2号機とも上空に撤退。消失しました」
「こっちの被害は?」
「食料と医薬品が全滅。武器は辛うじて残っています。しかし、見事に陽動を本命と勘違いさせて、別働隊を仕込んで物資を破壊。更にそちらを囮にして第2、第3目標であるバリスタとカタパルトの破壊ですか…………してやられましたね、マスター」
「わかってるよっ!! くそ、明日だ。全軍で攻めるぞ。こうなったら絶対に奴らからは攻めて来ないだろうからな」
「放置しておけば勝手に死んで、ゾンビにでもなってくれたら聖別結界を広げて纏めて美味しく頂かれるだけですからね」
「再編成を頼む。俺はその聖別結界が効かない奴を召喚する」
「畏まりました」
この借りは絶対に返してやる。絶対にだっ!!
ノーデンスに掛けた魔法は光の屈折を操って透明化する魔法、ミラージュです。




