36話
ちょっと、後半部分に文章を追加しました
計画は全て上手くいった。破壊目標はほぼ全て破壊したし、マーカーも設置した。まともに動ける敵の戦力は生きている魔物だけ。つまり、アンデット以外となる。そして、相手は食料が無く、生き残るには共食いしかない。補給されるならされるで、それならまた違う方法を考えればいい。こっちの本来の作戦は明日なのだから。
「クトゥグア、ノーデンス、ご苦労様」
戻って来た2機にお礼を言って、スリープモードで充電して貰う。後はビームライフルを取り出して、狙撃体勢になりながらゆっくり時間を潰す。そう、定期的に敵陣営に対してビームを放ちながらだ。魔物に命中しなくても、砦自体に被害は出ているので問題無い。
しばらく砲撃を続けていたら、レティシアと交代する時間になったので、俺はそのまま寝る。ベットはレティシアの温もりで温かかった。
何時間経ったかわからないが、レティシアに起こされた。
「敵さんがぎょ~さん来てるで」
「ほほう」
乱れた髪の毛をそのままに起き上がって、外を確認する。敵は砦を出て、大軍でこちらに進んでいる。ゾンビ軍団を盾として前に配置している辺り、えぐいね。
「レティ、見てみて、敵が蟻のようだよ」
「せやな。それでどないすんの?」
「バリスタも壊したし、制空権はアタシ達が手に入れている。となれば、やる事は一つでしょ」
俺は爆弾が詰まった箱を大量に取り出して、レティシアの前に置く。それと同時にフロートボードを取り出す。
「こんな高度でフロートボードって使えんの?」
「むしろ、フロートボードは浮く事に関しては問題無いよ。有るのは下から上に高度を上げる事。この時ばかりは無駄に魔力を消費するけど、下げるのは問題無いからね」
「そっか。それでこれが爆弾って事は空爆せいって事やな」
「その通り! 一斉にばら撒いて絨毯爆撃するんだよ」
「んじゃ、ちょっくら戦闘機みたいな事をしてこよか」
「お~~~」
「「I Can Fly」」
俺とレティシアはフロートボードに乗って、大空へと飛び出す。
空中でスノーボードの様にしながら、時速70キロで敵陣の真上まで直行する。もちろん、索敵は行っている。
「ほな、行こか!!」
「派手に行くよ!!」
箱の蓋を開けて、ばら撒く。レティシアも同様だ。地面に落ちてもまだ爆発しない。ゴブリン達は不思議がっているだろう。その間に次々と敵部隊にばら撒き続ける。
粗方ばら撒いたら、起爆スイッチを入れる準備をする。
そう、特大の爆弾をだ。今までのは小型の連鎖爆破させる為の子機だ。こっちは正真正銘、爆弾だ。
「レティシア、これ放つと爆風が凄いと思うから、しっかりフロートボードを操って、上に登るんだよ」
「了解や」
「じゃ、投げて」
「うちでええの?」
「むしろ、レティの方が威力上がるし。衝撃が強い程威力が上がる素敵仕様だぜ~~~」
「なら、楽しみやな」
レティシアは受け取った爆弾の重力を思いっきり重たくして手を離した。すると、爆弾はもの凄い勢いで落ちていく。レティシアは慌てて体勢を元に戻して、フロートボードの出力を上げる。もちろん、俺もだ。俺はアザトースを呼び出して追加の準備をする。
ほんの少しだけ時間が過ぎると、下で大きな音がした。その瞬間、俺達は上へと吹き飛ばされた。
「いやっふぉ~~~~~~」
「これっ、おもろいなっ!! って、なんかキノコ雲が下に見えるんやけど?」
「そりゃ、量子爆弾ですから」
「いや、それって核兵器やん! 放射能とか大丈夫なんっ!!」
「放射能はカット出来るよ。現在、アザトースが別空間に掃除機の様に吸い取り中」
「カットちゃうやん。まあ、大丈夫ならええんやけど…………ガチャガチャのアイテムで作ったん?」
「いや~考えたんだけどさ、まともにやったらどうやっても体力や魔力切れでアンデットが居なくても、押しつぶされちゃうんだよね。そこまで自力が違いすぎる」
個人で軍に勝つとか、大量破壊兵器とかない限り無理ですから。この世界でなら、レベルが相手よりも上なら出来ると思う。でも、今の俺達は駆け出しですらない。なら、先ずは大幅なレベルアップをするべきだ。
「よって、敵を集めて出て来ざるを得ない状況を作り上げた。御蔭でレベルアップ~~」
「せやな。それはええねんけど、これからどないすんの? クエストクリアが無いって事はまだダンジョンマスターは生きとんで」
「だから、ここからは潜入ミッションだよ。姿を消して砦に突入し、最奥に居るダンジョンマスターを討つ」
「陽動はいらんの?」
「この爆発で問題はないと思うよ」
「なら、売った喧嘩の決着をつけに行こか」
こっちから侵入しているんだから、売った喧嘩になるのか。
「それじゃ、ミラージュ」
俺とレティシアの姿はフロートボードごと上空で消えた。ただ、お互いがMAP機能で理解できるので問題無い。だから、俺は放射能を吸い終えたアザトースを回収して降下していった。ただ、かなり高度が上がっていたので、降りるのに手間取った。
さて、到達したらスニークミッション開始だ。俺はステンノ&エウリュアレを装備し、刑事物のように進んで行く。スケルトンナイトなどの警備兵も微かに居るけど、こっそり近づいて始末する。スケルトンは無理だけど、オークナイトとかなら、消えたまま近づいて首をかっ切れば良い。スケルトンナイトは浄化だ。そして、ミラージュで何事も無かったように警備させる。気休め程度だけど、問題無いだろう。そして、途中で何か馬鹿でかい反応がフォートレスタワーを目指して飛んで行ったけど気にしない。
そして、侵入して進む事40分。俺達は巨大な扉の前に到着した。そこはちょっと前まで大きな反応が有った場所だ。探知を念入りにしたが、その大きな広間には敵も罠も存在しない。鍵も空いている。だから、俺達は慎重に侵入した。
そこは誇大な空間。高さ50メートルも有り、四方は100メートルも有る。その部屋の奥には豪華な玉座が有るが、今は誰も座って居ない。
俺達は玉座を調べる。何故なら、そこに隠し通路が有るからだ。全て理解している。空間認識は反則だ。とりあえず、罠を解除したら、開いた穴から降りて通路を進む。
奥には反応が2つ。1つは人型。もう1つは小型の存在だ。その2人の表示には人型がDungeon Master、小型のがDungeon Supporterと表示されていた。
俺は、手振りで突入をレティシアに伝える。ダンジョンマスターとそのサポーターしか居ないのは有利だからだ。
レティシアも頷いて、最後の扉の前に立った。
「くそっ、核兵器とか反則だろうがっ!!」
「マスター達の世界は凄いですね」
空間は粒子制御も出来るから、作っちった。外郭とか色々居たけどさ。ガチャガチャにプルトニウムも入ってたし、やるよね。やらない?
でも、ダンジョンの被害って外には伝わらないみたいだよ。他のダンジョンは知らないけど、ここは別空間。
そんな事を考えて居ると、レティシアが裾を引っ張ってきた。どうやら、準備オッケーみたいだ。こっちもOKなのでGOサインを出す。すると、レティシアが扉を蹴り破った。これによって、レティシアに掛けたミラージュが解除された。
「「なっ!?」」
俺はレティシアの後ろを直ぐにジャンプしながら通り抜けて、ダンジョンマスターであるTシャツにジーパン姿の男に向かってステンノ&エウリュアレからの集中砲火を回転しながら撃つ。それと同時にクトゥグア達を召喚して、小型のサポーターを囲ませる。
「がはぁっ!?」
ダンジョンマスターの男は銃弾が命中する衝撃で何度も身体が揺さぶれる。そして、Tシャツは赤く染まり、その身体には穴が多数空いた。そして、瞬時に近づいたレティシアがダンジョンマスターを押し倒して、殴り付ける。俺は瞬時にステンノ&エウリュアレを送還、再召喚してマガジンを補給しながら振り返って、小型のサポーターとダンジョンマスターにステンノとエウリュアレをそれぞれ向けつつ注意をする。
「お見事です。しかし、ヴァンパイアはどうしたのですか? あの塔に貴女達の所在を確認して、向かわせたのですが」
小型のサポーターは両手を上げて抵抗の意思が無い事を示して居た。それより、あの大きな反応はヴァンパイアか。確かに危なかった。喧嘩売らなくて正解だ。こんな隠し球を持ってたのか。
「レティ、呼び出される前に止めを…………」
「その必要は有りません」
「せやな。もう死んどるし…………」
「え?」
今なんて言った?
「既にマスターは…………いえ、元マスターは死亡しています」
「いやいやいや、有り得ないよ! だって、放ったのは牽制の銃撃だよ!オークやアイスグリズリーなら平気で生きてる程度の攻撃だよ!」
「いえ、ただの異世界人を少し強化した程度なのに魔物と比べるのは可哀想ですよ」
「いや、ダンジョンマスターだよね? クラスあるよね?」
「ダンジョンマスターはダンジョンを運営する為の称号です。ダンジョン関連の事しか得られる力は有りません。そして、元マスターのクラスはネクロマンサーの51ですが、基礎のステータスはほぼ一般人と変わりません。スキルもモンスター強化系ですから」
「ほんまや。育成とか成長とか支配とかばっかやで」
「それと、こういっては何ですが…………ダンジョンレベルが1なので、ろくな恩恵を受けておりません。貴女方プレイヤーはダンジョンに使う力の全てを自身の強化に充てています。基礎力からして天と地…………ごほん。かなりの差が有るのです。単体で貴女方プレイヤーと戦おうとするなら、ダンジョンレベルが10以上でないとまともな戦いになりません。そもそも、ダンジョンなんですから、ボスモンスターと戦闘してください。自力でダンジョンマスターが戦うとか、そんなのはプレイヤーからの転向組のみです。なので、ボスモンスターが殺られたら、大人しく死ぬか逃げてください。という事です」
非道い。そして、黒い。しかも、天と地程の差があると言おうとしたよな?
しかし、プレイヤーからの転向とかも有るんだ。
「それで、アンタは詳しいみたいだけど、アタシ達がこんな事になってる原因を知ってるよね?」
「はい。私は貴女方をこの世界に召喚した神の端末ですから」
認めやがった。
「それじゃあ、元の世界に戻る事はできるん?」
「出来ますよ。ダンジョンマスターは50以上のレベルになると、定期的に異世界…………この場合は貴女方の元の世界と交流が取れます。ただ、貴女方は彼と違って死亡していますし、新しい身体であちらに行ったとしても、赤の他人ですし、知人や友人もわからないと思いますが…………」
「ちょっと待ってえな!! この人は元の世界では生きてる扱いなん!」
「はい。彼らは行方不明者ですから。こちらへはそのままの身体でお越しいただいております」
「クレハ、どないしよ?」
「問題ないでしょ。向こうも殺そうとしたし、アタシ達が殺しても大丈夫。それに、この子の言ってる事が本当なら、アタシ達は既にこの世界の住人。あっちの法律なんて言っちゃ悪いけど、関係ないわ」
「ん~~~それもそうやね。むしろ、自分達だけ帰る手段が有るとか許せん。こっちはどんだけ食事に我慢しとると思ってんねん!!」
そっちなんだ…………まあ、レティシアらしいな。
「さて、この子達を下げて貰って良いですか? 私は不死なので殺せまんよ」
「本当? じゃあ、遠慮なく…………撃て」
5条の光線が小型の少女を貫く。しかし、時間が戻るように何事もなかった状態で佇んでいる。
「無駄です。私から攻撃は出来ませんが、貴女方の攻撃も効きません。お分かりいただけたなら、下げてください。今から、貴女方に報酬を差し上げます」
「わかった」
指を鳴らして、ステンノ達も含んで全部送還する。さっきので力量差は分かった。まだ、殺せない。
「せやな」
レティシアもアイゼンを仕舞った。これで聞く準備が整った。
「それでは、改めまして…………ダンジョン攻略おめでとうございます」
「「ありがとう(や)」」
サポーターが無表情で告げてくる。
「では、サポート精霊のフィアが、ダンジョン攻略の特典をお知らせ致します」
フィアと名乗った精霊は手を死体のダンジョンマスターに向けた。すると、ダンジョンマスターが光って消滅し、フィアの手の上辺りの空間に金色のカードと多数のカードが出現した。
「こちら、ダンジョンマスターが所持していたスキルと生き残っている魔物カード…………は締まりませんのでモンスターカードと呼称しますね。改めて、モンスターカード、そして…………ダンジョンを運営する権利が得られるダンジョンマスターカードです」
「ちょっと待って、質問」
「はい、何ですか?」
「アタシ達プレイヤーがプレイヤーを殺した場合はスキルカードが1つ貰えるよね? ダンジョンマスターを殺した場合は理解できるけど、その逆であるダンジョンマスターがアタシ達プレイヤーを倒したらどうなるの?」
「それはうちも聞きたいで」
「それは簡単です。ダンジョンマスターは貴女方プレイヤーのカードを手に入れて、肉体、精神、命を支配できます。つまり、ボスモンスターとして配置可能です。この場合は心を残すのもダンジョンマスターの自由です」
無茶苦茶危険だな、おい。
「といっても、ダンジョンマスターのレベルがプレイヤーのレベルより高かったら、ですが。低い場合はそのままスキルカードに変換されます。こちらは全部ですし、レベルも+1された高い状態になって手に入ります」
「それで、ダンジョン内でプレイヤーがプレイヤーを殺したらどうなるの?」
「プレイヤーが1枚習得した後、そのダンジョンを支配しているダンジョンマスターが総取りになります」
ダンジョンマスターがかなり有利だが、仕方無い。他人を操るか、自分の力で切り開く選択か。
ダンジョンマスターが有利なのはプレイヤーが途中でダンジョンマスターになれるからだな。ダンジョンマスターのプレイヤーがどう考えても恐ろしい。
「じゃあ、そのカードは全部貰えんの?」
「もちろんです。ダンジョンマスターカードは他のスキルカードと交換もできますよ。しますか?」
「ん~~~うちはしてもええねんけど、クレハは?」
「とりあえず却下」
俺が言うと、フィアは楽しそうに少し笑った。明らかに損をさせようとして、こちらを試している。
「ダンジョンマスターになった方が得だけど、ダンジョンは再構築と出せる場所を決められる?」
「もちろん可能です。前のダンジョンマスターが貯めたダンジョンポイント、DPも引き継げます。ただ、今回の戦いで貯めていたDPをヴァンパイアにつぎ込んだ為に有りません。カードの販売も承っておりますので、DPが無い場合は買取致します」
また罠だ。誰が売るか。
「んで、そいつが持ってたのは?」
「まず、クラスカードがネクロマンサー。これに操霊術、アンデット召喚が有ります。スキルカードは魔力操作、召喚隷属、隷属強化、成長強化不死ですね。モンスターカードで生き残っているのがヴァンパイアのみです」
「随分殺したもんやな」
「そうだね~~~。レティ、アタシがダンジョンマスターになっても良い?」
「ええよ。そんでうちがBOSSやね!」
「いや、それは良いのかな?」
「問題有りません。それにプレイヤーのダンジョンマスターは自由に出入り出来ますし、お2人共マスターに出来ますよ」
「それは面倒やしええわ。むしろ、殺されんでもうちのカードって渡す事できんの?」
「出来ます」
「レティ?」
「なら、うちのカードをクレハにあげる。それでクレハに召喚して貰ったら、うちの命とかも全部クレハの物になって、うちはクレハが殺されへん限り死なへんし、もっと楽しく激しい戦いが出来る。外にはちゃんと出れるんやろ?」
命と命令権を全て俺に渡して、自身は死なずに戦い続ける事が出来る。普通の人には呪いでも、戦闘狂のレティシアにとっては祝福か。
「はい」
「なら、決定や」
「わかった」
それから、俺はダンジョンマスターになって、レティシアのカードを貰った。既に召喚状態になるみたいで、隷属強化の恩恵を受けたみたいだ。
そして、俺は手に入れたスキルカードの召喚隷属、隷属強化、成長強化不死を習得。レティシアは魔力操作を覚えた。ネクロマンサーに関しては置いておく。
ヴァンパイアに覚えさせても良いけど、何よりゾンビ達の腐った臭いは嫌だから、使わない事が俺とレティシアの間でほぼ決定している。




