第5話 エミリーの夢とアメリーの妄想
オレリアの言葉が頭から離れない、ただ殺されるだけ、このままずっとやりたくもない作業をやって、助かるのをただ待つだけ、怖いね怖いねって慰め合う。
それでもいいんじゃないのかな……
「私、ちょっと興味あるかも」
「嘘でしょ、エミリー正気なの?」
「正気よ、私はもっと都会で遊んで、世界中も見て回りたいの」
「まあ、昔から行動力あるとは思っていたけど」
「確かに軍隊に入って戦うなんて怖いって思ってた。けど、こんな窮屈な避難区域で生きているなんて私じゃない、私の夢の為にも戦うわ!」
自分の人生の為に戦う意志を見せる彼女は、エミリーミュロ。
私の友達でおしゃれな生活、セレブと言おうか、海外旅行をバンバン行って、インスタに支配される生活を望んでいる。私とは真逆の存在なのに、何故か今の今まで友達でいる。というか、彼女の友達がごっそり減ったから、消去法で私が選ばれて喋っているだけなのかも知れない。
「彼氏君にも会えるかもしれないかもね」
「そうね、ずっと連絡が無いわ」
「忙しいんだよ、きっと」
「ファトゥマタ、知ってるでしょ? 彼女志願したのよ」
「へぇ、あの子、運動できたからね」
「今朝、腕だけ帰って来たって」
「……」
「私も顔見知り程度、友達の友達の、更に友達くらい離れていたけど」
エミリーは急にガクガクと震え始めた。
彼女は想像してしまったのだ。ファトゥマタの腕だけになった姿、自身が同じ目に合うんじゃないかという不安、それを知った時の両親の顔を。
そんなに怖いなら志願しない方が良いんじゃないの?
そう彼女に言ってやりたい。
「だめだめ、こんなの私じゃない!」
「お、立ち上がった」
「とりあえず、明日から銃の訓練よ」
「そうだね、今のままじゃただのお肉だもんね」
「そんなに太ってないわよ!」
「そういうことじゃないよ」
私達一般市民は半強制的に銃の扱い講習を受けさせられた。厳しく指導されるかと思っていたが、結構やさしく教えてくれる。私は父に教えられることが多いが、たまにオレリアが先生として教えに来る。ガチガチの肉固まりが、私にべったりくっ付いて来る。レズなんじゃないかと思った。きっとそうだ、じゃなきゃ女性の部隊なんて作るわけがない、こいつは自分の帝国を作る気なんだ。そのイケメンフェイスで、毎晩女を抱いているに違いない。
「どうした? 顔が真っ赤だぞ」
「あ、いやその、何でもないです」
妄想が暴走してしまった。
「あの、夜はナニをやっているんですか?」
「な、なんかイントネーションが変だったぞ。まあいい、筋トレだ。」
「だからそんなにカチカチなんですね」
「フフッ、舐められないようにな、マシにはなったが、女性は男に舐められやすい、力が無いのは勿論、生理などによる体調不良もある。まあ、私は生理の症状が軽いから、他の女たちの辛さは知らん、甘えだと思っている」
「は、はあ……、女性の敵ですね」
「本当の敵は身内だった、なんてな」
オレリアの表情が急に暗くなった。
何か嫌な事でもあったのだろうか。
「お前、私の事、レズだと思っているだろ」
「べべっべ、別にレズだなんて!」
「別にいいさ、実際男は好かん、女の方が好きだ」
「まさか、私を狙って! ま、待ってください! 私、その初めては、ちゃんと好きになった男の人が良いです!」
「いや、襲うつもりはないのだが……、というか下ネタの話になると面白いな君は、うっかり自分が処女だってバラしているぞ」
「んなぁ!」
私は自分でも分かるくらい顔が真っ赤になってしまった。
仕方がないじゃない、こんな内気な性格、目立つことをしない、家に居るのが大好きな私が、異性とイチャイチャする機会なんてないのだ。興味はある、ネットで調べたりはしているし、画像や動画でなら見たことはある。
「まあ、そんな良いものじゃないよ」
「え、そうなの」
「最初は痛いし、まあ、私の男性歴が酷いから参考にはならんか」
「悪い男に捕まったのですか?」
「まあ、そんなとこだ」
「そうなんですか」
「もっと、ドラマみたいな体験をしたかったんだがね」
「それって……」
どういう事ですか、って聞こうと思ったらオレリアは「得意の妄想で想像してみろ」と言って逃げてしまった。




