『雨の日、制服の少女を拾った』
四月の終わり。
夜の街には、昼間の熱気を冷ますような細い雨が降っていた。
社会人二年目の青年――相沢恒一は、残業帰りのコンビニ袋を片手に、駅前の歩道を歩いていた。
疲れていた。
会社では上司に怒鳴られ、同期は次々と結果を出していく。
一人暮らしの部屋に帰っても、待っているのは静かな天井だけ。
「……はぁ」
ため息をついた時だった。
街灯の下に、小さくしゃがみ込む少女の姿が見えた。
制服姿。濡れた髪。
年齢は高校生くらいだろうか。
通り過ぎようとして――足が止まった。
「こんな時間に何してる」
少女は顔を上げる。
透き通るような整った顔立ちだった。だが、その目は妙に疲れていた。
「……帰る場所、ないので」
淡々とした声。
危ない。関わるべきじゃない。
頭では分かっていた。
だが、放っておくには雨が冷たすぎた。
「とりあえず、飯だけでも食うか」
少女は少し驚いたように目を瞬かせる。
「……変な人ですね」
「よく言われる」
そうして始まった。
少し不器用な社会人と、行き場を失った少女の奇妙な共同生活が。
――ただし、それだけでは終わらなかった。
翌朝。
インターホンが鳴った。
ドアを開けると、そこには白いワンピース姿の少女が立っていた。
同じアパートの隣人――白雪美月。
学校では“完全無欠の天才美少女”として有名な女子高生だった。
「昨日、女の子を連れて帰っていましたよね?」
柔らかな笑顔。
なのに、なぜか圧がある。
「……説明、してもらえますか?」
背後では、保護した少女が眠そうに顔を出す。
「あ、おはようございます」
空気が凍った。
そして恒一は理解する。
平穏だったはずの日常が、もう戻らないことを――。
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