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まとめ♯15

 僕は一心不乱に集中してピアノにかじりついていた。


 時たま、手を休め、ピアノの音が鳴らなくなったタイミングを見計らって、サポート役の人が水分補給のための飲み物が入ったペットボトルを部屋に入り、ピアノのいつも決められた位置に置いてくれる。


 僕はそのペットボトルを感覚で位置を悟り、正確に無駄な動きなく取った。


 「ゴクッゴクッゴクッ」


 ペットボトルの水を半分くらい飲み干した。手で持った時の重みから、大体、残りの量が分かる。




 もう1時間が経った。


 今日のコンサートではショパンのピアノ協奏曲第7番「ピンクの男」を演奏する。


 ショパンが霊界で作曲した最大傑作だ。


 世間では僕の新作演奏会という名分だが、今日はある勝負に出ようと思う。


「ガチャ」


 誰か部屋に入ってきた。


「ノブさん!! そろそろ個人練習は終了の時刻になります。今度はホールでオーケストラと合わせる練習になります」


 いつものサポート役だ。


「はい」


 僕はオケとのピアノ練習に向かった。


 


  


 


 サポート役に誘導案内されて、ピアノの前に座った。


 聞き取りやすい声で会場アナウンスが流れ出した。


「えー、、ここで皆さんにお知らせがあります。。これから演奏されるピアノ協奏曲は死後の世界の天国でピアノの詩人、フレデリックショパンが作曲したものです。ノブさんは特殊な幽体離脱という睡眠中に魂が天国に行く方法でフレデリックショパンに会い、ショパン本人が作曲したピアノ協奏曲を教えてもらいました。その天国でのショパンの新曲を今から演奏いたします」


「ハハハハハ」


 あまりに突拍子もない内容に静かな笑いが起こった。


 コンサート会場に突然の信じられないアナウンスが流れ、観客たちの動揺し、ザワザワする音が聞こえてる。


「ショパンの未発表新曲『ピアノ協奏曲第7番 ピンクの男』です」




 演奏会が始まった。


 ショパンに霊界で直にレッスンしてもらいながら覚えた45分ほどの大作だ。


 ショパンが夜の静かな田んぼに船を浮かべながら、涙を流しながら手紙を書き、その手紙から曲想を生み出したとは言っていたが、、「ピンクの男」って誰のことなのか、どういう意味から名付けたのかは今度、ショパンに会ったら聞いてみよう。




 この「ピンクの男」は、、エチュード10-3を彷彿とさせる箇所がある。


 悲しみに似た静かなゆっくりした舟歌のような旋律から始まり、徐々に激しく怒りと絶望のような早い連打の和音が勢いを増し、やがて頂点に達し、また徐々に静かな諦めにも似た曲調へと回帰する。


 音の繋げ方やドラマ性、音の感情の高まりと迫力、静かさと激しさのコントラスト、、全てが完璧で奇跡的な超傑作。


 ピアノ協奏曲史上最高峰の名曲なのは間違いない。


 ショパンも「僕の一番お気に入りの大好きな曲」と言っていた。




 別れの曲との唯一の違いは諦めにも似た悲しみの旋律に戻ってから、徐々に明るい喜びのような和音になっていき、、まるで別れを告げられたけど、、また一緒にいられることになりました……みたいなクライマックスでは飛び切り今までショパンの作品では聴いたことがない「喜びの大爆発」「大歓喜のハッピーエンド」で曲が終わるということだ。


 別れの曲の超パワーアップバージョンだ。


 45分で人生の全てのドラマが凝縮された音の究極のエッセンス。


 普段は曲に標題をつけないショパンだが、この曲だけは


特別だと言っていた。


 ラフマニノフのピアノ協奏曲2番のメロディーが少しアレンジして入っている。


 ショパンはラフマニノフに影響されたのか……


 ショパンは弾くたびにラフマニノフを身近に感じたいという想いがあるのかもしれない。


 ラフマニノフとは常に繋がっていたいらしい。


 壮大なメロディー、名人芸的ピアニズム、超絶技巧による難易度は僕の知っているショパン作品の中で一番高い。


 ショパンにもこんな難易度の高いピアノ協奏曲史上最高峰の名曲が生み出せるのか。


 ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番より難しい。


 ラフマニノフと常に一緒にいて、、その全てを吸収し、


作品に昇華させた現在のショパンの集大成と言える。


 この作品のオーケストレーションは今までのショパンの作品とは思えないくらい進化している。


 オーケストレーションに優れたラフマニノフの教え方が異次元だったに違いない。 


 ラフマニノフは更にその上をいくピアノ協奏曲を生み出したが……


 ショパンは10年かかってこの作品を完成させた。


 ショパン史上最大の力作だ。


 ショパンはピアノ協奏曲といえど一曲のために10年もかけることは普通ならあり得ない。


 それだけ改良に改良を重ね、、パーフェクトな作品を目指した。


 どれだけの「愛情」がこの曲に込められているか。


 計り知れない。




 僕はこの傑作を霊界から地上世界に広めるためにショパンに頼み、僕の体に憑依してもらい、ショパンが僕の体を使い、楽譜を全て地上世界で書いたのだ。


 憑依のトレーニングは並大抵ではできない難しいものだった。


 ショパンが自分に憑依するなんて信じられなかった。


 




 ショパンを見ていると自分との才能の差に驚く。


 どんなに頑張ってもショパンを超えるという夢は叶わない。


 だけど、、、


 夢を追えば少なくても途中までは行ける。


 夢を追う途中に見た景色は何も代えられない感動だと


 素直に思える僕がいる。




 45分後……




 弾き終えた。


 割れんばかりの拍手が響き渡った。


 我ながら完璧な演奏だったかも。  




「ワアアアアアアアアーーー!!!」


 コンサートホールが凄まじい絶叫で地響きがした。


 こんな観客の反応は今まで聞いたことがない。


「ショパンはやっぱり偉大だなあ!! これだけのお客さんを感動させるなんて……音楽家の鑑だよ!!!!」


 そして、、それを手伝った僕もね。




 


 翌日、このコンサートは新聞の一面を飾った。


 いつも一緒にいる世界王のアゲハがコンサートで天国のショパンが作曲した地上ではまだ知られていない未発表曲を僕が演奏したと。


 この話は事実でアゲハ自身も死後の世界の霊界のショパンに会ってきたと公言したのだ。


 これは世界中で大ニュースになってしまった。


 世界王の影響力が一番ある人間のアゲハが記者会見で公式に宣言したからだ。




 「ショパンの霊界作品地上拡大作戦」は順調だ。


 だんだん、霊界の存在が有名になってくればいい。


 まだまだ信じてない人がたくさんいる。


 そんな人に声を大にして言いたい。


 「死後の世界は存在する」





「太陽へ」




ショパンとラフマニノフは夕暮れの空の高度8000メートルに体を浮かばせて、、何やら話し合いをしていた。


「なあ、、ショパン。これからどうする??」


「僕はこれからもピアノの傑作を輩出し続けるよ。まだまだ名曲が生み出せる気がするんだ!! ラフマこそどうするの??」


「実はシナメルドに霊界外交大臣として、、しばらく太陽圏霊界に仕事に行かないかって言われてるんだ」

  

「僕も行くよ!!」


「ショパンは裏宇宙の神様であるアイザム・メトロン様と俺たちの開発した『カントリーヌ』をぜひ、、広めることに傾注してほしい」


「でも、ラフマと離れるのは嫌だよ!!」


「また会えるから心配するな。それに、、たまにはお互い距離を置くことで、、久しぶりに再会した時の喜びに打ちひしがれようじゃないか」


「会えなかったら??」


「あり得ないさ!!」


「どんな仕事なのさ」


「太陽圏霊界のトップ『クスミマルタ』は、、太陽に来てから細かいことは話すと言っていたから、、俺にもまだ分からない。シナメルドと一緒に行ってくるよ!!」


「そうか、、別れか。それも一興かもね」


「あの夕空が綺麗だな」


「ラフマがこれから行く太陽の美しさだね。僕はエキスパートピアノを副校長のゲンと切り盛りしていくよ。地球圏霊界最高の音楽学校を今度は太陽系最高にしていこう」


「お前の別れのワルツが聞きたい。演奏してくれ」


「わかったよ。別れを楽しもう。以前のようには泣かないからね」


「泣かれちゃ困るから、、別れのエチュードじゃなくて、ワルツにしたんだよ」


 ショパンはピアノを出現させた。


 真っ白なグランドピアノだ。


 「カントリーヌ」


 ショパンとラフマニノフが二人で開発した。


 ショパンは別れのワルツを弾いた。


「いずれまた再会を喜ぶために、、別れを楽しむような旋律だな」


「出発はいつ??」


「今すぐだ」


「ラフマ。急すぎるよ」


 ショパンはラフマニノフの手を強く握って、、ハグした。


「行ってらっしゃい!!」


 ラフマニノフは夕暮れの太陽に向かい、、そのまま飛んでいった。


 だんだんラフマニノフの姿が小さくなり、、太陽に溶けていった。


 ショパンは別れを楽しめるように作り笑顔でラフマニノフを見送った。






「モーツァルト」





 ショパンはエキスパートピアノ音楽学校の校長室で生徒たちの成績表を作成していた。


「芳樹は学年3位にまで順位を上げたか。いつの日か1位も夢じゃないな……」


生意気な態度がお気に入りの芳樹の成長にワクワクが止まらない。


「プルルルルルルーー!!」


 ショパンの携帯電話が鳴った。


「モーツァルト」からだ。


 ショパンは5秒後、、電話に出た。


「やあ、、モーツァルト。君からの電話はこれで記念すべき1回目だね。どうしたんだい??」


「今、、エキスパートピアノの校長室の扉の前にいるから開けてくれないか??」


「えっ?? いきなり来たの?? まあ、、今はちょうどそこまで忙しくないから……」



 校長室の扉を開けると、、モーツァルトが鼠色のスーツ姿でいつもより真剣な表情で立っていた。


「やあ、、急にどうしたの?? 僕になんの用??」


「実は折り入って相談したいことがあるんだけど……」


「まあ、、コーヒーでも淹れるから座ってて」


 ショパンは自身が開発したコーヒーブレンド「ショパンスペシャル」を淹れた。


「これは僕が開発したコーヒーなんだ」


「ああ、、いい香りだね。頂きます!!」


 モーツァルトは真剣な表情からリラックスした穏やかな表情へと切り替わった。


「すごくいい香りだね。癒されるーーーー!!」


「君の音楽がたくさんの人に与えた癒しには及ばないけどね」


「あのさ、、ショパン。実は、、私たちのフルビットッミュージックとこのエキスパートピアノ音楽学校を一緒に合併しないかって考えたんだけど?? ピアノと管弦楽、、両方学べる学校を作りたいんだけど……」


「……いや、、僕たちはピアノ一本の学校にこだわり続けたいんだ。だから、、その話は断るよ。ごめんね」


「ラフマニノフは?? ゲンは??」


「今はいないよ。ラフマは今、太陽に行っているよ。ゲンは地上世界にいるかな……」


「ピアノの可能性を極限まで広めたいなら、、僕とベートーベンのピアノ音楽の技術や魅力もきっと役に立つんじゃないかな。だから、、エキスパートピアノ音楽学校の教授になりたいんだ。オーケストレーションから一回離れて、、ピアノに全力を捧げてみたいんだ。私もショパンたちのようにピアノに全振りしていきたいんだが……」


「そしたら、、君たちの学校はどうなる?? そこの生徒たちやこれからオーケストレーションを学びたい人たちを見捨てるつもりかい??」


「君たちがピアノに懸ける想いを応援したくなったんだよ。ピアノのためを思うなら、、私とベートーベンもピアノの道を進むほうがいい。ピアノ一本にね。オーケストレーションはもうこれ以上は発展しないくらい進化させることができたから……すべては君たちのためでもあるんだ。ピアノのために」


「自分たちのために生きてください!!」


「ピアノをもっと進化させたくないのかい?? 私とベートーベンがピアノ音楽の進化のために加われば、、さらに素晴らしいピアノの名作が生まれるかもしれないよ??」


「音楽学校の合併はできない。もし、、ピアノの道を究めたいなら、、自分たちでピアノ専門の音楽学校を新しく作ればいいさ。僕たちは常に切磋琢磨するライバルでいてほしいんだ。君たちに……」


「ショパンとラフマニノフとゲンと私とベートーベンの5人でピアノ音楽学校を仲良く運営していけたら、、かなり楽しくなると思ったんだが。やはり、、ダメか……」


「仲良くするというよりは、、お互い、、いい意味でライバル、敵同士になり、、競い合っていく仲でいたいんです。だから、ごめんなさい」


「なら、、君とラフマニノフとゲンの開発したコーヒーを我がフルビットミュージックに迎えて生徒たちみんながコーヒーを飲めるようにしてくれないか??」


「それなら喜んで!!」


「それから、、ジンサも君たちエキスパートピアノの食堂に迎えるつもりなんだろう?? 料理長として。だったら、、私たちの食堂にもジンサの霊界最高の料理を提供してもらえるように手配してもらえないだろうか??」


「それも喜んで!!」











「雨の中で」





「ラフマ……今頃、何してるかな??」


 ラフマニノフがシナメルドと共に太陽に行き、3日が過ぎたころには、、ホームシックのようなラフマシックになってしまっていたショパンだった。


 ショパンは携帯電話を取り出し、、ラフマニノフにメールを送ろうとしたが……


「ダメだ!! 今回は連絡は取り合わないとラフマと約束したはずだ。距離を置くから、、再会した時の喜びが倍増すると。距離を置いたら置いただけ……」


 ショパンは校長室の窓を開け、、空に浮かぶ光輝く太陽を見つめた。


「今頃、、ラフマ、、あそこにいるんだよな……」


 独り言を放ったショパン。




「あれっ?? 雨だ。雨が降ってきた」




 ショパンは一階の校長室の窓から外に飛び出た。


「ポツ、ポツ、ポツポツ、ポツポツポツ……」


 徐々に強くなってきた。




 ラフマを想い、、空を、太陽を見ながら、、雨に打たれているショパン。


 ショパンの目の中に雨が入り、、それで目を閉じた。


 ショパンの目から涙と、涙のような雨の水が流れ落ちる。


「今までいろいろあったね。ラフマ。3日会えないだけでこんなに寂しいなんて。君は本当に僕の太陽そのものだったんだね。離れてみて初めて実感させられるよ……」




「ショパン!! どうした。そんな悲しそうな顔して……」


「芳樹。どうしてここに??」


「落とし物を届けに来たんだよ。これ、、ラフマニノフのハンカチだろ。ショパンが以前、プレゼントした……」


 生意気な生徒、、芳樹が落とし物を届けに校長室まで来ていたらしい。


「あんたがそんな泣いてるなんて初めて見たよ。ラフマニノフに会えなくて辛いのか??」


「いいや、、そんなことはないよ。人の心配してないでさっさとピアノのレッスンに戻りなさい。あと2分後に君らの3Aの教室では、、ゲスト講師のナイバルが教えてくれるんだろ??」


「角田エリスに『教えてくれない??』って彼女に何度も頼んでいるんだけど、、『私はまだまだ未熟なので教えられません。学ぶことならいくらでもありますが』って言われて、、謙虚過ぎてつまらねえなって思ったよ」


「早く教室に行きなさい。それから、、ハンカチ。ありがとな。あと2人抜けば、、首席だね。最初に会ったときに見下してバカにして済まなかったね。こんな逸材になるとは思わなかった……」


「ラフマニノフに早く帰ってくるように連絡しておくよ!! あんたが俺を褒めて謝るなんて異常事態に違いないからな」


「おっと、、余計なことはしないでくれ」


「それから、、雨に打たれながら相棒を想い、涙を流すショパンは絵になっていたぜ!!」




 芳樹はそういって次の授業へと向かった。




「ラフマ……」


 ショパンはハンカチで涙を拭き、成績表の作成へと戻った。










「ゲンと芳樹の合唱」







 深夜2時まで校長室でピアノ独奏曲を作曲していたショパンは寝ようと備え付けの2段ベッドで横になろうとした。


「よお、、ショパン!!」


 ゲンが急に窓を開けた。


「ゲン!! 今までどこに行っていたんだ!! 1週間もいなくなるなんて。君はれっきとした副校長なんだからね。少しは自覚して僕の仕事を手伝ってくれ!!」


「ラフマがいなくて辛いんだろ?? 俺がシンガーソングライターとして歌を一曲、ライブしてやるから聞いてくれ!! 校庭のグラウンドに出てくれよ」


 ショパンはゲンに背中を押されながら、、誘導され、、窓から校庭に向かった。


 そこにはオーケストラがいた。そして、、中央に一本のマイクが立っていた。




「今から、、俺が寂しがっているショパンのために作曲した新曲を歌うから聞いてほしい」




 ショパンは一つ、、中央に置いてある椅子に腰かけた。


 ゲンはオーケストラの演奏と共に歌い出した。




「離れていても心はそばにいる」




 夜中の2時にピンク色の光輝く文字がショパンの目の前に現れた。




「ピンクか……ラフマの色だな……」




 ゲンは歌い始めて2分後に座って聞いているショパンをピアノまで来させて、、オーケストラの音楽と共に、、即興演奏するようにショパンに提案した。


「ショパン。今のラフマを想う気持ちをピアノ演奏で表現してくれ……ショパンも参加して初めてこの曲は完成するから……5分ほどを目安に弾いてくれ」


「わかった」




 ショパンはラフマニノフが太陽に行ってしまう前に泣くことができなかったので、、今度は思う存分、、涙を流しながら、、ラフマニノフを想い、、ピアノを弾いた。


 自由に今までにない音色を奏でているショパン。


 ゲンはショパンのピアノ独奏させるパートをこの「離れていても心はそばにいる」という曲に盛り込んだ。




 ショパンはピアノ演奏し終えて、、ゲンに席に誘導され、、また座らされた。


 そして、、またゲンが歌い始めた。




「俺の心はいつもお前のそばにいるから……」




 突然、、たくさんの生徒たちがショパンの元に集まってきた。


「君たちは、、3Aの生徒じゃないか。どうしたの?? 帰宅してなかったのか??」


 3Aの生徒たちは、、ゲンに続いて、、一緒に歌い始めた。


「永遠に一緒にいよう。そう決めたじゃないか、決めたじゃないか……」




 オーケストラとゲンと3Aのクラスの合唱も終わり、、辺りが静かになった。


「よお、、ショパン!!」


「芳樹。どうして?? みんなどうしたの??」


「ショパンのために俺がクラスのみんなにゲンと一緒に歌いたいって頼み込んだんだよ」


「芳樹がゲンと組んだってことか……」


「芳樹は僕に頼み込んできたんだよ。ショパンを元気づけたいから新曲を作りましょう。ショパンのためにってね。僕と芳樹が作詞作曲したんだよ」


「ゲン。芳樹。みんな!! ありがとう。本当にありがとう」


「あんたが元気無くしてちゃ、、この学校がつまらないからな。ショパンの性格の悪さが魅力なんだから。俺をバカにしたような感じの。俺はバカにされたから、、ここまで悔しくて成長することができたんだからな」


「芳樹。相変わらず、、少し生意気だね……まっ、、そこが君の魅力なんだけどね」




 






「バーチャルリアリティ実在システム」



「ねえ、、ショパン。しんのすけはこのまま行けば凄腕のピアニストになれるわよね??」


「心配いりませんよ。みさえさん。私の5歳の時より上手ですから」


「目標は角田エリスを超えることです」


「ひろしさん。あなたは角田エリスを舐めすぎです。彼女がどれだけ天才なのかわかっていない!!」


「そんなことありません。ショパンはしんのすけのことがよくわかってない。しんのすけは史上最高の逸材です」




 ポチッ!




 ショパンはバーチャルリアリティ実在システムの電源を落とした。


「やはり、、まだ未熟だなあ。ゲンに教わった日本のアニメをこの霊界に実在させ、、本当に生きているかのように実在させるシステムプログラムはまだ、、未熟だ。人類史上最高の角田エリスを超えるなんてあり得ないことを言ってくるとはね。生意気すぎる」




 ラフマニノフが太陽に行ってから1か月が過ぎた。


 あまりの寂しさにゲンから教えてもらったアニメ「クレ〇ンし〇ちゃ〇」をエキスパートピアノに実在システムを導入して、、住まわせているのだ。




 霊界という場所だから可能なことだ。




 ポチッ!


 


 ショパンはまた実在システムの電源を入れた。




「ちょっと!! ショパン!! あなた、、電源を入れたり切ったりをもう10回以上繰り返しているじゃない。私たちが嫌いになったの?? 実在システムがエラーしたら、、私たちとはお別れなのよ?? 気を付けてよね!!」


「しんのすけ。ショパンのためにお前が作曲したノクターンで彼を落ち着かせてやれ!!」


「父ちゃん!! たまには自分で弾いたらどうなの?? おいらだけにピアノを弾かせてばかり……」


「バカ!! 日曜大工や営業の仕事は得意でも、、ピアノは弾けないんだ。しんのすけ。頼むよ!! ショパンは今、俺たちのせいでイライラしているから、、ノクターンの静けさで精神安定させてやれ」


「しんのすけ君!! 私が最も愛しているノクターンを弾いてくれ。もちろんわかっているよね??」


「うん!! これだぞ!!」


 しんのすけは弾き始めたが、、これはノクターン5番だ。


「確かに、、ノクターン5番は僕の2番目にお気に入りの曲だ。いや、3番目くらいかな。惜しいな。やはり、、実在システムじゃあ、、分かりっこないか!!」


「私の子供を舐めないでよ。ショパンが今まで霊界で一番聞いていた曲は、、ノクターン12番よ!!」


「なっ!! なぜ、、わかった??」


「今、、ショパンのことをアカシックレコードから調べさせてもらったわ。あなたのことは何でも……」




 ポチッ!!




ショパンはまたいつものように電源を切った。




「うーん。このしんのすけ、みさえ、ひろしたちがいれば、、寂しくはない。確かに。でも、、時々、、アカシックレコードから僕のことを調べてきたり、、恐ろしいところもあるな……早く、、ラフマ。。帰ってこないかな……」




 人肌は実在システムだけでは満たせないことを知ったショパンであった。







「それが仲間だよ」







 ラフマニノフがシナメルドと共に太陽圏霊界に仕事に行ってから、、3か月が過ぎた。


 ショパンの元に一通の連絡手紙が届いた。


 そこにはこう書かれていた。


「太陽圏霊界のサンライズ本部に来てほしい。住所は……。そこで太陽圏霊界の最高責任者のクスミマルタとシナメルドと共に待っている!!」



 ショパンはすぐさま副校長のゲンにエキスパートピアノを任せて、、ラフマニノフの待つ太陽圏霊界に旅立った。



太陽圏霊界に着くと、、直径100キロメートル以上の大きなショパンが描かれた肖像画がサンライズ本部に建造されていた。



「なんだ?? なんなんだ、、これは??」



 サンライズ本部にはラフマニノフとシナメルドとクスミマルタが3人並んで待っていた。



「ショパン!!!! 久しぶりだな!!」


「ラフマ!! ラフマーーーー!!」


 ショパンはラフマニノフを抱きしめた。


「会いたかった!!!! 君のありがたさに気づかされた3か月間だった。それより、、あの超巨大な僕の絵は何??」


「私が作らせたんだよ」


 太陽圏霊界のトップであるクスミマルタが口を開いた。


「あなたは……クスミマルタ様ですね。僕のことが嫌いだったっていう。その方が……なんでこんな僕の建造物を作るんですか??」


「ある方からショパンの魅力について教え込まれたんだ。そして、、見事、ショパンアンチからショパンの大ファンになってしまったんだ。君のピアノ協奏曲第7番はかなりの傑作だったな。あのピアノ協奏曲で君のことが大好きになれたんだ!!」


「ある方とは??」


「それは内緒だ!!」


「ショパン。私とラフマニノフがここに仕事に来ていたのは、このショパンの建造物を作るためだったんだよ。今、、太陽はショパン音楽の星となった!!」


「どういうこと?? ラフマ。僕の音楽が太陽のなんだって??」


「つまり、、ショパンは太陽圏霊界最大のスターになったってことだ。これから全宇宙にピアノを普及させるためにまずは、、太陽を制覇した!! よかったな!!」


「そりゃあ、、そりゃあ、、嬉しいよ。でも、、なぜ、、こんなことに??」


「おいおい。ピアノを広めるためにはまずショパンの作品を聞いて好きになってもらわないとダメだろ。それより、、お前の生命データポイントを確認してみろ。今日、、ショパンの太陽圏霊界での給料が追加で振り込まれたから」


「なっ!! 130兆?? なんだ?? なんなんだ??」


「凄いだろ?? ショパン!! お前に見せたいものがある!! ついてこい!!」


 ラフマニノフに従い、、ショパンはサンライズ本部の屋上へとたどり着いた。


 高度13000メートルの太陽の街並みがすべて見渡せる絶景が広がる特等席だ。



「わあ!! すごい!!」


ショパンは驚きのあまり、、体の底からこみあげてくる感動に打ちひしがれてしまった。


 そこには、、ショパンの肖像画が、、ピアノを弾き始め、、太陽圏霊界全体にショパンのピアノ曲が響き渡っていたのだ。



「これは、、ラフマニノフが考案したんだ。ちょうど、、今、夕方だから、、肖像画の中のショパンがピアノを弾きはじめたんだ。ノクターン12番をね。太陽圏霊界の朝、昼、夕方、夜の4つのタイミングで、、一日に4曲のショパンのピアノ曲が演奏されるんだ。朝は活発な元気な曲とかね。昼は穏やかな曲。夕方はまどろむ曲。夜はラフマニノフのピアノ協奏曲を。凄いだろ??」


 クスミマルタが説明した。


「凄過ぎる!! こんな幸せなことがあっていいのか??」



 ショパンは喜びのあまり、、口をギュッと強く結んだ。



「ショパンの音楽が太陽で、、やがて、、すべての星で愛されるように。そのための初めの一歩だ!!」


「みんな、、みんな、、本当にありがとう。僕は今、これ以上ないくらい元気になった!!」


「太陽に響き渡るこのショパンの肖像画からのピアノ曲は、、太陽だけじゃなく、、表宇宙、裏宇宙、いや、全宇宙に聞こえるように設定してある」


「えっ?? あり得ない!! あり得ない!! それはさすがに嘘だろ?? そんなことができるはずがない。全宇宙に僕の音楽が流されるだって??」


「全宇宙の神様が味方してくれたんだ。なぜか気まぐれでな」


「そうなの?? あの方が?? なんでだ?? 誰かに説得されたのかな??」



 






 ゲンは副校長として、、エキスパートピアノの校長室にいた。



 全宇宙の神も一緒に。



「ショパンとラフマニノフは喜んでくれたかな?? 私がお前に頼まれて、、あんな大げさなことしたが……」


「間違いなく喜んでいるさ。ラフマニノフもショパンが幸せなら、、嬉しいだろう」


「ゲン、、お前はまた内緒で今度は全宇宙にショパン音楽を広めるきっかけを作った。どこまであの二人に貢献するつもりなんだ??」


「それは、、エンドレスだよ。終わりなんかない。この僕たち霊の生命のようにね。これからも幸せにし続けるよ。あの二人をね。それが僕の喜びであり使命だ!!」


「だから、、お前の相棒になったんだ。お前の生き様は素晴らしいからな!!」


「全宇宙の神として絶大な権力を持っている。それは、、人の幸せのために使われてほしい。ショパン&ラフマニノフ。あの二人に使われてくれたら、、幸せな人が増えるだろう。ショパンの至宝ともいえるピアノ曲が広まれば、、癒される人が多発して、、幸せは確実に増える。ショパンは全宇宙を幸せにするために、、生まれたんだよ」


「ラフマニノフは?? ゲンはどうして生まれたんだ??」


「それは本人が決めることだ。生きている意味は誰かに与えられるものじゃない。自分で作り出すものだ。僕はラフマニノフとショパンを幸せにすることが生きる意味だ。あなたは??」


「私は、、ゲンを幸せにすることかな」


「助け合いか。そんな関係性がとても美しいね」


「それが仲間ってもんだよ」










「ペルシュ」








「やっと着いた!! ここが!! ショパンとラフマニノフのいる星か……なんて美しいんだ。今まで様々な星を訪れたが、、これほど美しい場所は見たことがない!!」


 ある一人の男がエキスパートピアノを訪れた。


 エキスパートピアノの入り口の警備員に、、ショパンとラフマニノフに会いたいという旨を伝えた。


 警備員は理事長であるショパンに連絡を取る。


「理事長。あなたとラフマニノフ様に直接、会いたいという方が来ています。校長室まで通しますか??」


「要件を聞いてください!!」


「聞いてみたのですが、、本人に話がしたいのだと言ってしつこいのです。もう、、3時間以上校門の前にいます」


「わかりました。校長室まで来させなさい。直接、会います」



 こうして、、その男は、、校長室にたどり着いた。



 ショパンとラフマニノフとその男の3人が校長室のソファに座り、、コーヒーを飲みながら、、話し合っていた。



「なんの用でしょうか」


「はっきりと言います。どうか、、あなた方二人の弟子にしてください!!」


「えっ?? いきなりですか?? なら、、この我がエキスパートピアノ音楽学校に入学して、、成績優秀者になりなさい。優秀な人じゃないと、、個人レッスンはできません。みんな同じ条件じゃないと、、不公平になってしまいますからね」


 ショパンが丁寧に弟子入りを断った。


「遠い遥か4900億光年先から来ました。そこまであなた方の音楽が響いてきました。そして、、大好きになってしまいました。なので、、私はその音楽に興味を持ちました。ぜひ、、弟子にしてください」


「話を聞いてなかったのか?? いくら遠い場所から来たとしても、、特別扱いはできないんだよ。他の生徒たちに失礼だろ??」


 ラフマニノフはそう言った。


「私はペルシュと言います。まだ、、名乗ってなかったですね。実は、、私は、、裏宇宙の音楽担当大臣をしています。裏宇宙にピアノを広めるお手伝いをしたいのです。ピアノという楽器が裏宇宙に広まるためには、、私が協力しなくてはなりません。弟子入りして、、ショパンとラフマニノフのことをしっかりと観察して、、理解したいのです。裏宇宙の代表神、、アイザム・メトロン様の命令でこの地に来たのです」


「メトロン様の部下か?? いきなり驚いたよ。それなら話は別だね」


「何かショパンの曲を弾いてみろ!!」


 ラフマニノフは校長室のピアノにペルシュを座らせた。


「練習曲25-6を」



 最高難易度の超難曲を、、正確無比だが、、表現力があり、、説得力がある演奏をした。


「見事だ。それだけピアノが弾けたなら、、弟子入りは必要がないだろう」


「私は、、ショパンとラフマニノフが本当に『誠実』かどうか、、裏宇宙にピアノを広めるにあたって、、本当にあなた方のピアノ『カントリーヌ』でいいのかを判断したいのです。そのためには同じ空気を吸い、同じ飯を食い、、一緒に過ごさないといけません。テストのようなものです」


「僕たちが誠実であるかを確かめに来たの??」


「ええ。時間と共に人は変わることがあるってメトロン様が言っていました」


「まだ、、1年も経ってないのに、、人が変わらないか心配だったのかな。アイザム・メトロン様も抜け目ないな」


「直に一緒に過ごして、、ショパンとラフマニノフの人間性を見抜いてほしいと。本当に裏宇宙にピアノを広めるにふさわしいかを見てほしいと言われました」


「じゃあ、、弟子入りを認めよう。裏宇宙にピアノが広まってほしいからな。まだ、、音楽だけが響いている状態だからな。肝心のピアノが広まらないとな」


「まだ、、音楽だけが太陽から我が裏宇宙に流れている状態です。この音楽を興味を持っている人が多数存在しているので、、ピアノの普及が必要になります。これから、、一緒に過ごすことになるので、、よろしくお願いします!!」



 こうして、、ペルシュという新たな仲間??ができたショパンとラフマニノフであった。




 これからペルシュの審査に合格できるのだろうか。


 裏宇宙にショパン&ラフマニノフのブランドピアノ『カントリーヌ』を広めるための冒険が始まってゆく。










「車の中で」







 今日は大好きな相棒のラフマニノフ、、通称「ラフマ」と二人でデートなんだ!!


 とても嬉しくて僕とラフマがダブル校長を務めるピアノ音楽学校「エキスパートピアノ」の運営は、、


 副校長のゲンに任せてきた。


 

 さっそく、、車に乗って、、ラフマの運転で、、この地球圏霊界の様々な観光地に行くことに。。



 とはいっても、、車の中では、、ラフマが僕の舟歌ばかり聞くから、、なんか嬉しくてね。。


 ラフマが「舟歌こそショパンのトップオブトップだ!!」と褒めてくれたんだ。




 車の運転で、、僕が眠くなってうたた寝すると、、ラフマが急ブレーキをわざとかけて、、僕を起こすのが、、癖になっているんだ。。


 急ブレーキは後続の車がいないときだけだけどね。。


 安全第一にしてくれているのは助かるけれど。。


「ショパン。。寂しくなるから、、車の中で寝るのはほどほどにしたらどうだ??」


「そんなこといったって、、舟歌ばかり聞いているから、、極上のリラックス効果で、、寝てしまうんじゃないか。もっと、、テンションが上がる曲をかけてくれないから……」


「そんなこといったって俺は、、お前の舟歌が好きなんだから仕方ないだろ?? 眠くならないようにするには、、とにかく何か食べながら話することだ」


「食べ物なんて持ってきてないよ。。どこかで買う??」


 ラフマは空中から、、「イチゴジャム」の瓶を出現させたんだ。


「これは、、僕の大好きなイチゴジャムじゃないか。。ありがとう。。この刺激的な甘さがあれば、、もう眠ることはないと思うよ」


「パンは自分で持っているだろ??」


「えっ?? 持ってないよ??」


「名前がショパンなのに、、パンを持ってきてないだと??」


「そういうおふざけはいいから……とにかくイチゴジャムを食べてみるよ」



 僕は「ラフマニノフの特製イチゴジャム」と書かれ、、ラフマの顔が描かれた、、イチゴジャムの包装紙を丁寧に外して、、ジャムを人差し指と中指でとり、、ゆっくりと口にジャムを入れた。


 あまりの美味しさに、、目を閉じて、、ピチャピチャと音を立てながら、、食べた自分がいた。。


「ピチャピチャと音を立てるのはマナー違反だぞ??」


「ごめん。。つい。。それより、、美味しいね。本当に最高のイチゴジャムだ。ラフマが作ったんだよね??」


「イチゴを種から品種改良して、、栽培して、、イチゴジャムを我が大企業、、アイデアインフィニティで、、売り出すことにしたんだ。。ショパンは舌が肥えていない素人だが、、まあ、、参考程度にはなるだろう」


「こら!! ラフマ!! 素人とはなんだ?? 僕が美味しいって言ったら、、、絶対に売れるはずだよ!! 保証する!!」


「どうやって保証するんだ?? 口だけじゃ信用できない」


「ラフマ。。ひどいよ。僕を信じられないの?? 僕たち相棒でしょ?? バディでしょ??」


「ジャムを食べた時に、、この舟歌とか音楽が頭の中にダイレクトに響いてくるようにできないかな??」


「そうしたら、、なんかもっと売れそうだね??」


「そういう発明をしていこうと思っている。。エキスパートピアノをもっと大きくしていくためには、、俺たちが有名になり、、大金を稼がないといけないからな」


「大企業の創業者兼会長だから、、ラフマは偉大だなあ。。ピアノ協奏曲第2番っていう、、協奏曲の中ではトップオブトップの作品を生み出したし、、本当に凄い」


「史上最高のピアノ音楽作曲家のお前の方が、、作曲家としては優れているからな。。舟歌、バラード4番、幻想ポロネーズとか、、誰も真似できないSSSランクのピアノ曲を書ける才能は、、恐れ多いよ。だが、、オーケストレーションが苦手だから、、俺が指導してやるから、、安心しろ」


「ありがとう。ラフマ。。観光地はどこにする??」


「俺はホタテが好きなんだ。。ホタテ専門店で有名な、、ガシャイルに行こう」


「生ホタテと焼きホタテ、、どっちがより好きなの??」


「両方だ!!」


「選んでよ!!」


「両方だ!! 選べない!!」


「いいや!! 選ばせる!!」



 急に信号で急ブレーキをかけて、、ラフマは僕に反抗して、、生ホタテと焼きホタテ、、どちらが好きかを教えてくれなかったんだ。


 最後までね。。

 






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