もういくつ寝ると
あと3ヶ月弱で死ぬ中学生のお話です。
「もういくつ寝ると」楽しんでいただけると嬉しいです。
1月11日月曜日。人類滅亡まで残り80日。
立河市立錦中学校は三学期を迎えた。
(なんか、二学期より人数減ってないか…?)
年度が始まった時には30人全員が揃っていたが、今日は半分ほどしか見当たらない。
結構時間ギリギリなので、これで全員だと思うんだが…。
私は自分の席につくと、前に座る美鈴ちゃんに声をかけた。
「ねぇ、今日少なくない?」
「そうなんだよ。もう全員じゃんね。」
今気づいいたが、後ろに座っていた宇佐見さんもいない。
私は鞄からスマホを取り出すと、宇佐見さんにメッセージを送った。
「宇佐見さん学校来てなくない?どうしたの?」
1分も経たずに既読がつく。
そして返ってきた言葉を見て、私は空いた口が塞がらなかった。
『だって面倒くさいじゃーん。もう行かないからー』
その画面を覗き込んだ美鈴ちゃんも呆気にとられた。
この教室の人数が半分ほどに減っているのも、言わずもがなそんな理由だろう。
次の瞬間、担任が教室に入ってきた。
そのあとはホームルームがあったわけだが、二学期から格段に減った人数の中に、風香さんと同じ理由で亡くなった生徒が2人いたという。学年でみれば10人程度にのぼるとのことだ。
確かに、その可能性はあったかもしれない。
夏休み明けよりも、さらに少なくなった人数で手を合わせる。
(また気付けなくてごめん。あと80日待ってね。私も逝くから。)
そう心の中で呟いた。
「あーなんか一日あっという間に終わらないー?こんなのをあと80回繰り返すだけで死ぬのー?」
窓枠に寄っかかりながら美鈴ちゃんが声をあげる。
私は読んでいた文庫から目を離すと、教室のカレンダーと眺めた。
「そうだね、あと80日。有意義って言われても難しい話だよ。何をしたらいいのやら。」
「そこなんだよね。」
受験もないし、あとは卒業するだけだ。
でも何かやり忘れてることがある気がする。身辺整理は終わったし、遺言書いてないとかだろうか。
そもそもそんなもの遺す意味ないよな…。
…というか、本当にあいつは学校来てないな…。
私がそんなことを考えていると、窓の外をぼーっと眺めながら美鈴ちゃんが物騒な歌を口ずさんだ。
「もういーくつ寝ーるーとー、……死天山ー。」
「なに…その物騒な歌。もっと平和的なやつじゃなかったっけ?」
死天山というのは、死んだ後に最初に越えなければならない山のことだ。
死出の山とも言われるそれは、三途の川の前に位置すると言われている。
「だってほら、あといくつ寝たらあの世かなーって。」
「縁起でもないなぁ。」
「ここにいるみーんな、よっぽどのことがない限り命日一緒だよ?縁起も何もないって。」
まぁ確かに。
苦笑いを浮かべ、私はその死天山とやらを思い浮かべた。
「確か、現世で悪い行いをしてると地面が針に変わって痛いんだっけね。」
「そうそう、だから葬儀の時には、草履の裏にお餅を塗ってあげるんだよ。刺さったり滑ったりしないようにね。」
「なんか詳しいね。」
「私もおばあちゃんが3年前に死んじゃったからさ。見てただけだよー。これで私もようやくおばあちゃんに会えるわぁ〜。」
「怖いって。」
生前に徳を積んでいたら登りやすいのかな…。
死が近づいてきたからか、こんなことすら考えてしまう。
「まぁ、残された時間は真面目に生きなきゃね。」
「楽しく生きなきゃでしょ?」
美鈴ちゃんの口角が上がる。
どうせ行く先は同じだ。亡者になるまで、最後の中学生活を楽しむとしよう。
最近ちょっとお話が短くなって申し訳ないです。氷室八弥です。(読み方:ひむろやや)
ちょっと最近思うのですが、どうして死んだばっかなのに険しい山登りやら川渡りやらしないといけないんでしょうね。ちょっと死んだばっかで酷ではないかと。
今後機会があればその手のお話も書こうかなーって思ってますー。お楽しみに〜
ご意見・ご感想、お待ちしてますー




