地球はなくなるらしい。
一年後、真空崩壊という現象で滅びることが決定した地球の、中3のお話です。
投稿初めてなので、読みにくかったらすみません。
「地球はなくなるらしい。」楽しんでいただけると嬉しいです。
教室の窓からやわらかい日差しが差し込んでいる。
私は麗らかな春の空を見上げ、目に入った雲に向かってため息をついた。
「皆さんおはようございます。今日から3年4組の担任になりました、西森葉月といいます。まぁ最初ですので、順番に自己紹介を…」
教壇に立った女性教諭が話だす。
他のクラスメイトは、落ち着かない面持ちで教室中をきょろきょろと見回している。
かくいう私もぼーっと外を眺めていた。丸みを帯びた微風が眠気を誘う。
次の瞬間、担任の一言で、浮遊していた意識は引き戻された。
「磐城さん。磐城さん、順番ですよ。」
「あっ…はい。」
そういえば順番に自己紹介って言ってたっけ。自分の出席番号が早いことをすっかり忘れてしまっていた。
私は黒板に書かれている内容を見つめ、しどろもどろになりながら自己紹介を始めた。
「えっと、磐城結衣です。好きな教科は、理科で…えっと、部活動には入ってないです。よろしくお願いします。」
クラスから静かな拍手が起こり、私は席に座る。
やっぱり落ち着かない。私は窓から遠く広がる空を見つめ、遥か遠くにあるであろうものを睨みつけた。
他のクラスメイトも、気だるそうに座りつつ、視線を彷徨わせていた。
そりゃあそうだ。あんなことを言われたのだから、ぼーっとしても仕方ないだろう。
私たちは先週、ある事態に巻き込まれることになった。
それが原因でみんな上の空なわけだが、その事態が何かというと…。
「みなさん知っていると思いますが…。この地球は来年の3月31日、真空崩壊という現象でなくなります。これはデマなどではなく、実際にたくさんの学者が調べて決定したことです。私たちに残された時間は、一年弱となります。いきなりのことで、みなさん動転してると思うのですが…残された時間を有意義に過ごしてください。」
そう、先週臨時ニュースで発表された事実だ。どうやら地球はなくなるらしい。
まだ信じてない人も多いようだが、テレビも新聞もネットニュースもその記事一色だし、きっと本当なんだろうな、と私は思う。
「有意義って言われても…」
「うちらどうせ死ぬしね。」
生徒たちがざわめく声が聞こえる。私自身、最初は信じていなかった。最近はAI技術を用いて、合成動画を作る人もいると聞く。その一つだろうと思っていた。
しかし、それは思い違いだった。
テレビのニュースや駅ビルの大型テレビで放送され、レポーターが深刻な顔で話し合うのをみて、私もようやく事の重大さに気付いた。
ここにいる全員。というか、この世に存在するもの全てが、一年後には消えてしまう。
もちろん、私だって死ぬことが確定している。どんな科学技術があっても、逃れることはできない。
この穏やかな空の向こうで、その真空崩壊という波は、無情にもこちらに迫ってきているらしい。
学校のチャイムが鳴る。
先生が教室から退室し、生徒達がガタガタと音を立てて立ち上がった。
始業式も終えた私たちは、11時半下校となる。
私は筆記用具や学校だよりを鞄に詰め込んでいく。
「結衣ちゃん、一緒に帰ろうよ。」
見上げると、肩にかからないボブカットに前髪を切りそろえた少女が、あどけない笑顔を浮かべて立っていた。
去年から同じクラスの安藤美鈴美鈴だ。
「あ、うん。ちょっと待って。」
私は急いで身支度を済ませると、美鈴ちゃんと教室を出た。
廊下を歩き、階段を一階まで下る。昇降口でローファーに履き替え、学校を後にする。
最初に口を開いたのは美鈴ちゃんだった。
「ねぇ、あのニュースどう思う?結衣ちゃんは信じてるの?」
「…私は、本当なんじゃないかと思ってるけど…」
「そうだよね。」
幼さの残る顔が悲しそうに笑う。「私も」と美鈴ちゃんは付け足した。
「嫌だなぁ。あと一年しか生きられないなんて。」
「そうだね…って、今の会話、日常で絶対聞かないよね。『一年後に死ぬ』とか。」
「ね。SF映画みたいっ」
閑静な住宅街に、私たちの話し声だけが響く。
お互い顔を見つめ合い、どこか可笑しかったのか、美鈴ちゃんはくすくすと笑った。
「なに笑ってんの?なんか面白かった?」
「いや、可笑しくないんだけどー。…だって、結衣ちゃんがあんまりに普通だったから。不安吹っ飛んじゃった。」
「そ、そう?」
「あんまりに普通だったから」で笑うのは、どういう笑いのツボなのかわからないけど…。
「だってさー、一年後に私たち死んじゃうんでしょ?今日のクラスの雰囲気やばかったじゃん。みんなほけーとしちゃってさ。」
「そりゃ、いろいろ考えちゃうでしょ。」
「いや気持ちは分かるのよ。私もそうだったし。なんだけど、そんな中でも結衣ちゃんが全然変わらないからさ、安心したのですよ。」
「それ、褒められてるって受けとっていいのかな?」
「褒めてる褒めてるー」と体をくねくねさせる美鈴ちゃんを見て、私もどこか安心した気がした。
見上げると、空には飛行機雲が浮かんでいる。
しばらく私たちは、立ち止まって空を仰いでいた。
このたまらなく平和な世界が、来年には消える。私たちは一年後に死ぬ。
だからといって、ディストピアになるわけでも、ハルマゲドンが起こるわけでもなく、世界が終わるその日まで、このくだらない日常は、続くのかもしれない…と私は思った。
名前も知らない鳥が、自由気ままに空をかけていった。
はじめまして。氷室八弥といいます。(読み方→ひむろやや)
趣味でのんびりと書き始めましたので、よろしくお願いします。
一年弱で地球が滅ぶという、すぐに終末世界になるわけでもないけど、意外と時間がない世界を生きる中学生のお話、楽しんでいただけたら嬉しいです。
なろうで書くのは初めてなので、うまくできてなかったら本当に恐縮なのですが、少しづつ頑張りますので、温かい目で応援してもらえると、とても嬉しいです。
面白かったところ・読みにくかったところ。あったら教えてください!




