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さどうぶっ! ~転校生の茶道部部長は、初恋の女の子に瓜二つだった件~  作者: アブラゼミ
いっぱいめ「ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」

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第六杯「幼馴染みの生徒会長」

「よくも何度も、私の誘いを何度も袖にしてくれたわね」




 黒ストッキングの足が、土下座する僕の頭をグリグリ踏んづける。


寧音姉ねねねえは、大層お怒りのようだった。




「この学校の生徒会長である私の呼び出しを無視するなんて、何様のつもりなのかしら?」


「スミマセンごめんなさい」


「心がこもってないわ」




 寧音姉のグリグリが強くなる。


下を向いているから顔が見えないけれど、きっといい顔をしているだろう。


寧音姉の体温とストッキングの摩擦で頭が熱くなる。




「寧音姉のお誘いを何度も袖にして申し訳ございませんでした」




生徒会室で僕の頭をストッキングで踏んづけている生徒会長・綾瀬寧音は、家がお隣同士の幼馴染みだ。


幼馴染みなせいか、外では見せない顔を僕にだけは見せてくる。今も生徒会室に他の生徒会役員はいない。




「顔を上げていいわよ」




 しばらくグリグリして満足したのか、寧音姉が足を上げる。


顔を上げるとスカートから覗く肉付きのいい脚が見えた。……今日は白か。


制服についたホコリを払いながら、僕は寧音姉に文句を言う。




「無視したのは悪かったけど、ひどいよ寧音姉。僕の恥ずかしい話を全校に流すなんて……」


「図書室にしか流してないわよ」


「え?」


「さっきの放送は図書室にしか流してないわよ。この時間の木曜の図書室はあなたと子猫ちゃんしかいない。違うかしら?」




 生徒会長の席に腰掛けた寧音姉が、涼しい顔で紅茶を啜る。




「違わないけど……」


「ならいいでしょ? 今日あなたを呼び出したのは他でもないわ」




 寧音姉がキレイな黒髪ロングの髪をサラッと流した。


ふわりと、シャンプーの匂いが薫る。




「我が校の校則は知ってるでしょ? 『すべての生徒は何らかの部活に所属しなければならない』」




 何度も聞かされた話だ。この半年、寧音姉が生徒会長になってからずっとこの話を繰り返されている。




「多様性の時代に何かを強要するのは間違っていると思うんだけど」


「だから週1回の活動の幽霊部員でも構わないから何かの部活に入ればいいのよ。可愛い図書委員の子猫ちゃんもそうしてるでしょ?」


「そりゃそうだけど……」




 輝木さんは週に1回だけ文芸部の部室に顔だけ出している。


それを認めるとなぜか寧音姉が少しムッとした表情で紅茶のカップを置く。どうしたんだ?




「寧音姉、どうかした?」


「どうもしてないわ。それよりあなただけなのよ。何の部活にも入ってない生徒は」




 何かの紙でペシペシと生徒会長の机を叩く寧音姉。その動きに合わせて長い黒髪と大きな胸が揺れる。


高校生とは思えないほど大人っぽい寧音姉は校内の男子の憧れだ。毎週のように告白されているが、すべてお断りしているという。


紅茶の香りだけじゃない甘い香りを漂わせる寧音姉。その色香に絡め取られた人間は、クモの巣にかかった虫のように逃れられない気がした。




「面倒なんだよ。他人と関わるのは」


「そうやって卒業まで、誰かと関わるのを避けるつもり?」


「ああ、そうだよ」




 何度言った言葉を、寧音姉に吐き捨てる。


言葉と共に、口の中いっぱいに苦い味がした。


拳を握り、歯を少し食いしばる。


でないと自分を、抑えられそうになかった。




「まだ彼女の事を引きずってるのかしら?」


「……」




 来ると分かっていても心揺さぶられる一言に、心の臓がうごめく。


中学3年間ずっと好きだった初恋の女の子。


そうだ、その子の事を僕はずっと引きずっている。


僕の事を1秒だけじっと見た寧音姉が、鮮やかな色の舌で自分の唇を舐める。




「私の公約は覚えているわよね? 『すべての生徒が、青春できる学校生活をつくる』よ」


「覚えてるけど……」


「あなたには今日ある部活に体験入部してもらう事が決定したわ。今からここに行ってきなさい」




 寧音姉がある紙を手渡してくる。


旧校舎の見取り図だ。その3階の端っこの部屋に『茶道部』と赤いマジックで書かれ丸がついている。


茶道部。脳内を探っても聞いた覚えのない部活名に困惑を覚える。




「ウチの学校に茶道部なんてあったっけ?」


「できたのよ。この春転校してきた転校生の手でね」


「転校生?」


「あなたと同じ2年生よ。カワイイ、美人だって話題になったらしいのに、ホントにあなたって、他人に興味ないのね」




 寧音姉が呆れたと言わんばかりの顔で言ってくる。


そういえばこの前、輝木さんにそんな話をされたような気がする。


けれど……




「だって関係ないし」




 ウチのクラスには転校生はいないはずだから、他のクラスだろう。


それもカワイイ、美人と話題になったような女子なら尚更僕には関係ない。


僕は何事にもやる気がない平凡な男子生徒Bだ。


そんな男子生徒Bに転校生の美少女と何か起こるなんて、ラノベみたいなイベント起きるはずがない。


しかし気になる事がある。




「その転校生の子、自分で茶道部をつくったの?」


「ええそうよ。茶道部自体は元々あったから復活させたって感じだけど」


「部員は何人?」


「さっきも言ったでしょ。その子1人だけよ。だから今廃部の危機なの」




 寧音姉曰く、部活動を続けるには部員が5人以上必要らしい。


僕は怪訝に思い小首を傾げる。




「なんで? 転校した学校に茶道部を復活させたようなバイタリティのある子なら、部員集めも楽勝だと思うんだけど」


「何人か体験入部に来たらしいけど、全員入部しなかったみたいよ。アレはあの子に問題があるでしょうね」




 寧音姉が大人っぽい顔に憂いの感情を浮かべる。その子の事を気にかけているようだ。


しかしカワイイ、美人と評判だけど問題がある茶道部部長の転校生。


厄介事のニオイがする。




「……イヤなんだけど」


「さっきも言ったけどこれは決定事項よ。あなたには今日茶道部に体験入部に行ってもらうわ。その子にも今日あなたが来ると伝えてあるから」


「ひどい! 横暴だ! 僕は帰らせてもらう!」


「勢いで乗り切ろうとしてもムダよ。それにあなたが来るのを1人部室で待ってる彼女を待ちぼうけにさせるつもり?」


「……」




 踵を返して生徒会室を後にしようとした僕の肩を身を乗り出してムンズと掴み、寧音姉が諭してくる。


そう言われると、可哀想だしそんなひどい事できないんだけど……




「取って食われたりしない?」


「しないでしょ。むしろお茶とお菓子をご馳走してもらえるでしょうね。何やら張り切ってたから」


「そう言われると、心惹かれるけど」




 茶道には興味ないけれど、お茶とお菓子には心惹かれるものがある。




「じゃあ今から旧校舎の3階の隅にある茶道部の部室に行って来なさい」


「……」




 これはもう行かざるをえないようだ。


そんな諦めを察したらしい寧音姉が、僕の肩を軽くポンと叩く。


その顔は、イタズラっぽい笑みを浮かべていた。




「そう悪い話じゃないわ。彼女に会えば、きっと驚くから」


「驚く? どういう意味?」


「それは会ってのお楽しみ」


「お楽しみって……」


「会えば分かるわ。ホラ、早く行ってきなさい」




 寧音姉が大人っぽい笑みを浮かべながら僕の両肩を掴み、回れ右をさせて背中をポンと叩いた。


その顔は、何か企んでる時の寧音姉の顔だった。

綾瀬寧音あやせ・ねね


誕生日 9月9日

身長 168cm

クラス 3年5組

好きな食べ物 お寿司

苦手な食べ物 辛すぎる食べ物

得意科目 全部得意

苦手科目 ない

趣味 裕樹にちょっかいをかける事

特技 何でも得意

最近の悩み 特にない

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