第二杯「図書委員の後輩」
「先輩先輩、何読んでるんですか~?」
部活に熱心な生徒が多いせいで、ほとんど誰もいない放課後の図書室。
そのカウンターで隣に並ぶ1年生の輝木さんが、いつものように声をかけてきた。
新学年になって1ヶ月。
2年1組の図書委員である僕こと大鳥裕樹は、彼女と月・木・金の放課後に、週3で図書委員の仕事をいっしょにしている。
「本屋○賞にノミネートされてた小説。新刊で入ってたけど誰も読んでなくてさ」
「面白いんですか?」
クリっとした目を輝かせながら、輝木さんがこっちを覗き込んでくる。
黄緑がかった目にやや短めのショートボブの金髪。整った顔立ちはまるでアニメから飛び出してきたように可愛らしい女の子だ。
ウチの高校の制服の紺色と白のリボンのセーラー服も、彼女が着るとまるでアイドルの衣装かのように見える。
モテすぎて困ってるというのが本人の話だけど、実際彼女が昼休みに図書委員の仕事を手伝いに行ってる水曜日は利用しに来る男子が多いらしい。僕は放課後(月・木・金)にしか入らないから知らないけど。
「まだ途中までしか読んでないけど、結構面白いよ。輝木さんも気に入るんじゃないかな」
「結衣菜はラノベ専門ですからー。でも先輩がそう言うなら読んでみてあげてもいいかもしれませんねー」
イタズラな笑みを浮かべる輝木さん。その手には少し前にアニメ化もされたラノベがある。
「あ、バ○テス読み始めたんだ」
「はい。これ面白いですよ、テストの点数が召喚獣になって、それでバトルするって作品で……」
「知ってるよ。もう全巻読んでるから」
「デスヨネー」
文芸部に入っていて、ライトノベルを書いているという輝木さんはライトノベルが大好きだ。
初めていっしょに図書委員の仕事をした時はお互いギクシャクしてたけど、僕がカウンターでラノベを読んでたら食いついてきて意気投合し仲良くなって今に至る。
僕もラノベが好きだ。
ラノベに限らず色んな本を読むけれど、やっぱりラノベが一番好きで図書室にあるラノベも、近所の図書館にあるラノベも全巻読んでいる。
「先輩ってラノベ好きなんですよね」
「うん、そうだよ」
「でも家には1作品しかないんですか?」
「まあ図書室と図書館で大体読めるし、お小遣いの問題とか色々あるからね」
「色々?」
「その、挿絵を親とかに見られると気まずいのがあるし」
「あー……分かりますー」
遠い目をして窓の外を見上げる輝木さん。なにやら似たような経験があるらしい。
「ラノベって、そういうものなんですけどあんまり理解されないんですよねー」
「そうなんだよなあ。教室で読んでると『オタク』『キモい』とか女子に陰口たたかれるし」
「分かりますー。結衣菜も『そういうの読まないで』って男子に言われた事ありますしー」
「勝手に決めつけないで欲しいよね」
「勝手に押しつけないで欲しいですよねー」
若干何やら食い違ってる気がするけど、輝木さんと笑い合う。
しばらく笑っていた輝木さんが、何やら探るような目つきをした後僕に問いかけてくる。
「そういえば先輩、知ってます?」
「何を?」
「最近できた茶道部の事ですよ」
「茶道部?」
「部を作った転校生が、めちゃくちゃ美人って噂ですよ」
「そうなんだ」
輝木さんの話を、適当に相づちを打って聞き流す。
輝木さんも僕が興味ない話にはこんな態度だって分かってるからか、それ以上何も言ってこない。
というか、僕が興味を示さないって分かってて話を振ったみたいだ。
「それじゃあ僕は返却された本を戻しに行ってくるから」
「はーい、いってらっしゃーい」
閉室時間20分前になり、僕は立ち上がってカートを押して返却された本を棚に並べに向かう。
放課後に返された本はちょっとしかないけど、昼休みに返された本が多い。昼休みの図書委員が仕事を残していくのはよくある事だ。
でもまあ文句は言わずに本を棚に直す。
誰か来た時のためにカウンターに輝木さんを残らせてるけど、放課後はそんなに来ない。
しばらくして輝木さんが手伝いに来る。
「お疲れさまでしたー」
「うん、お疲れ様」
閉室時間になって見回りをし、鍵を閉めて職員室に返したら図書委員の仕事はおしまい。
まるで最後のページをめくったら、また同じ話の1ページ目が始まる本のような毎日。
そんな日々を、僕はこの学校に入ってから1年ちょっと続けていた。
輝木結衣菜
誕生日 12月25日
身長 154cm
クラス 1年6組
好きな食べ物 ソース系の食べ物(たこ焼とか)
苦手な食べ物 苦い食べ物
得意科目 ない
苦手科目 全部!
趣味 ラノベを読む事・書く事・身体を動かす事
特技 空気を読む事・さりげなくお断りする事
最近の悩み 勉強がむずかしくて授業についていけない




