第七十六話 ダック侯爵との対談
大理石でできた屋敷を執事の方に案内してもらう。
「父は、悪い人ではないのですがかなり強情です」
「ランドさん、それは大丈夫なのか?」
「私から口添えはするので大丈夫です」
「クラリアさん……」
応接室に案内される。白く塗られた扉を開けると、大柄な男性が立っていた。
「貴様が配信者のユウキか」
「はい。ユウキと申します」
「座れ」
命令口調で貴族っぽい感じがするな。
今までの貴族はグラリア伯爵やビルク伯爵に他の貴族も優しい人が多かったが、ダック侯爵は全然違う。
黒髪をオールバックにした四十代くらいの男性で、体も鍛えている感じがした。
そして圧迫感が凄いんだ。俺たちは自然とゴクリと唾をのむ。
「初めに言う。俺は配信という者が大嫌いだ」
「何故でしょう」
「誰かの人生を画面を通して体験できる。それが面白いのかもしれないが、軟弱なものはそれを指をくわえて見ているだけで、何もしなくなる」
ああ、配信中毒になって、一日中ゴロゴロしながらただ配信や動画を見まくる人っているよな。スマホ中毒というか。
「なるほど、それはそうかもしれませんね」
「だが、貴様はキングヒドラの魔力に飲まれながらも私の息子と娘を救った。それ以外にも様々な食品を流通させておる」
シチランオークやチーズや温泉卵や温泉まんじゅうの事かな。
あれ、ダック侯爵かなり俺の配信を見てるんじゃないか?
「勘違いするな。今までの配信をまとめた切抜きを執事やメイドが見ているだけだ」
うーん。ただのアンチかと思ったけど、ちゃんと内容を見て批判してくる反転アンチというか筋金入りのアンチというか。
「父上、結局批判しながらもユウキさんを認めているんですよね?」
「ふん、ランド、貴様が言うな」
「全く父上は素直じゃありませんわ」
ダック侯爵にランドさんとクラリアさんが茶々を入れる。
ダック侯爵は鼻を鳴らし、顔を背ける。
どうやらツンデレ気質でもあるらしい。
「ダック侯爵は何故、ランドさんとクラリアさんとアナリザ様が奴隷として捕まりそうになったと思いますか?」
「ふん。十中八九、ドナルド公爵の差し金であろうな」
「ドナルド公爵はどういう方なのですか?」
「王国の南の海に面する土地を有していて、稼いでおるのだ。だが、海からの他国との奴隷売買をしていると聞く」
海運事業を抑えているのか。それはかなり大物だな。
「アルクアラウンド帝国とも取引しておる。だが海でエルグランド王国のある大陸を回り道して海運を行っておる。貴様が神聖の森を開拓していると知って焦ってもおるのだ」
「なるほど、アルクアラウンド帝国との通運が私の領地で行われると思っているのですね?」
「ドナルド公爵、あ奴はグラリア伯爵が神聖の森の永住権を認めたときも強情に抗議しておった。結局は既得権益が脅かされて焦っておるのだよ」
うん。それは確かにそうかも。
だからと言って、ドナルド公爵に同情する気持ちは全くないのだが。
「『亡霊』のアングラを使って何かを仕掛けてくるのだろうな。貴様はそれに対抗できるか?」
「手段はお伝え出来ませんが、できるとだけ言っておきましょう」
ダック侯爵は俺をじっと見つめてくる。
五秒、十秒、十五秒。じっとにらみ合う。
正直戦いになったら俺はダック侯爵に勝てないだろう。
何というか強者の貫禄があるのだ。
だが、俺にはキングヒドラとレッドドラゴンの魔力がある。
応接室の中で沈黙が訪れるが……。
「ふっ。多少は鍛えてきたという事か」
ダック侯爵は笑みを見せる。
俺も愛想笑いを見せる。だが内心冷や冷やしていた。
俺は武闘派じゃないんだよ!
応接室のほかの面々もホッと一息つく。
「ドナルド公爵の尻尾は掴んでいるのですか?」
アナリザ様がダック侯爵に聞く。
「そうですな。奴が奴隷売買に関わっているのはわかっておるのだが中々尻尾を出さない」
うーん。俺たちで王都の探索代わりに奴隷売買の商人からドナルド公爵の尻尾を探すのはどうかな?
「ドナルド公爵について私たちからも調べましょうか?」
「ふん。貴様がどう探すのかは知らんが顔が売れすぎているのではないか?」
「そこは配信のコメントを活用するのです」
コメントはネットがない異世界で唯一の集合知になっている。
俺が情報を募れば、結構集まるだろう。
冒険者たちを雇って、怪しいところを調査させるのもいい。
カゲは斥候や隠密行動もできるのでちょうどいい。
「まあいい。今日から貴様たちは我が屋敷でゆっくりしていけ」
「え? 私の事が嫌いなのでしょう?」
「ふん。配信は嫌いだが、貴様は嫌いではない。大甘だが、やるべきことはやる男だと思っている」
意外にも嫌われていなかったな。
「だが、先日の配信でランドが貴様を好いているというのはどういうことだ?」
「父上、私もですわ」
「私の気持ちは変わりません」
あ、やっぱりそこを言われるよな。
俺はしどろもどろになりながら、説明をするがダック侯爵の怒りは収まらなかった。
「貴様、我がダック侯爵家の嫡男を誘惑したのか!」
「いや、誘惑してません!」
「ランドもランドだ! 貴様は男だろう!」
「いえ、私の心は女です。ユウキさんのオーラに一目ぼれしたのです」
ダック侯爵は肩を怒らせて俺を睨む。
「決闘だ!」
「えええ⁉」
何で戦う羽目になるの! 俺はスローライフがしたいんだ!
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